簡易郵便局
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簡易郵便局(かんいゆうびんきょく)とは、郵政民営化以前に郵便局の窓口事務をから地方公共団体や組合、個人等に委託している郵便局のことである。一部取り扱いが出来ない業務があった。また、一般の郵便局とは開設時間や休止日が異なる受託者も多く存在した。
2007年(平成19年)9月までは、日本郵政公社(以下、公社という。)が委託元となっていた。多くの簡易郵便局は、郵政民営化実施後、郵便窓口業務際委託業者、ゆうちょ銀行代理業者、かんぽ生命保険募集代理店へ転換したが、業務内容や設置方法等が大規模に変わった。
目次 |
[編集] 設置
[編集] 委託基準
日本郵政公社が、郵便局の窓口事務を委託したほうが運営上適切(経費節減・リストラ)であると認めたときであり、利用者数や山間部、損益の有無は関係ない。
- 百貨店などに設置されているような大都市型簡易郵便局(シティポスト)も存在した。
- 末期には、取扱量の極端に少ない特定郵便局を廃止し、その跡に簡易郵便局を新設する例があった。この場合、特定郵便局長は任を解かれ、退職し、その簡易郵便局の受託者となることが多い。逆に、取扱量が大きい簡易郵便局の受託を解除し、その跡や付近に特定郵便局を新設して、その元受託者を局長に任用する場合もあった。
[編集] 受託者資格
受託できるのは以下の者に限られた。
- 組合員に出資させない漁業協同組合・農業協同組合(非出資組合)であっても、受託することができた。
- 民間等(国以外)によって運営される。国立大学や国立病院内に設置される簡易局の受託者は国(各省庁)や独立行政法人、国立大学法人、公立大学法人等ではなかった。
- 学校や病院内にある簡易局の場合、法律上、学校法人や医療法人が受託者となることができないため、名目上、代表者や簡易郵便局業務を扱う職員名義での個人受託という形をとることが多かった。
- 地方公共団体が受託している場合でも、個人に実質的な再委託(業務代行者)がされている場合もあった。
[編集] 委託契約
公社が、総務大臣認可基準にしたがって締結した。
[編集] 委託業務範囲
郵政窓口事務の委託に関する法律施行規則(昭和24年7月14郵政省令第7号)第2条により以下の通りであるが、公社は、業務の運営上支障があると認めるとき事務の全部若しくは一部を委託しないことができることとされていた。
[編集] 郵便
- 内容証明郵便物を除く郵便物の引受け。
- 外国来郵便物で関税又は内国消費税及び貨物割を課されたものを除く郵便物の交付
- 郵便切手類の販売に関する事務
- お年玉付郵便葉書の金品の支払又は交付
[編集] 郵便貯金
団体取扱い、財形貯蓄を除く
- 通常郵便貯金
- CTMによるオンラインでの積立郵便貯金の取扱、
- 定額郵便貯金及び定期郵便貯金並びに預金者に対する貸付
- 国際ボランティア貯金
[編集] 郵便為替
- 普通為替
- 電信為替
- 定額小為替
[編集] 郵便振替
- 郵便振替
- 災害ボランティア口座
[編集] 簡易生命保険
- 契約の申込受理
- 保険料の受入れ
- 保険金及び年金の支払
- 貸付金の支払及び弁済
- 契約者配当金の支払
[編集] 印紙
- 印紙の売りさばき
[編集] 政府関係
[編集] その他
- 宝くじの売りさばき及び当せん金品の支払又は交付
- 郵便貯金及び預金等の受払事務の委託及び受託に関する法律 (平成十年法律第七十八号)第四条第一項 の規定により同法第二条第一項 の金融機関から委託された金銭の受入れ又は払渡し等に関する事務
[編集] 委託事務従事者
受託事務に従事する者は、みなし公務員とされた。
[編集] 組合委託の利用
農業協同組合・漁業協同組合・消費生活協同組合の事業・施設等の利用は、本来、組合員・准組合員に限定されるが、受託者は組合員以外にも公平に利用させる義務があるので、組合員以外も当然、利用できた。
[編集] 郵便切手・印紙の販売
郵便切手・印紙の販売については、郵便切手類販売所等に関する法律(昭和24年法律第91号)による郵便切手類販売者とみなされた。
切手類の販売に関しては、コンビニ等の売捌所と同じ扱いであり、受託者が公社から買い受けた物を販売する。一定期間分を後日支払うというような売り掛けではなく、また貯金の扱いも2件で数十円ということから受託者の負担が大きいという指摘があった。
[編集] 設置の公表
改廃その他の情報は、その簡易郵便局局頭に掲示される他、公社のWEBサイト上に公表されていた。
[編集] 特徴
- 「郵便局」と称しているが、性質的には「民間による郵政の代理店」である(ここでいう民間とは、国以外という意味であり、地方自治体なども含む)。
- 大都市のショッピングモール内にあるシティポストのように簡易局が設置されることもある。したがって、必ずしも過疎地だけにあるというわけではない。
- 要員は局長を含めて2名以上配置となっている。なおショッピングセンター内にある簡易局などでは郵政窓口経験者などのOB・OGを採用している場合もある。
- 過疎地の小規模な局では状況により局内に1人しかいなかったり、担当者が外出していて一時的に窓口が閉まったりすることもある。
- かつてはオンライン化されていない局もあった。2005年(平成17年)4月1日を以て東の川簡易郵便局(奈良県)が廃止・的場簡易郵便局(山形県)が一時閉鎖されたため、現在は郵便貯金を扱う全ての簡易局にCTM(窓口係員が操作する貯金・保険の端末機。カウンター・ターミナル・マシンの略)が配備されている。
- 逆に、貯金・簡易保険業務を扱わない局にはCTMは無いため、通常CTMで発行する普通為替証書を昔ながらの手作業で発行する。
- 農協が受託している場合、農協貯金との兼ね合いから郵便貯金を扱っていないことが多い。昭和50年代後半から平成1桁年代の郵貯オンライン化の過程で貯金業務を廃止してしまった簡易局が多い。またいったんCTMを設置しながら後で撤去した局もある。
- 学校や病院内にある簡易局の場合、その学校・病院の都合や、受託者本人の都合、地域行事等により臨時休業する場合もある。大東文化大学内簡易郵便局、東京電機大学内簡易郵便局は、大学が休暇に入る度に一時閉鎖される。
- 白馬山頂簡易郵便局のように、自動車道の通っていない山小屋に簡易郵便局が委託されている例もある。毎日麓と山頂を歩いて往復する人によって、郵便物は収集されていた。
[編集] 郵政民営化と簡易郵便局
郵政民営化により、簡易郵便局は次のように変わった。
[編集] 根拠法の改正
根拠法は『郵便窓口業務の委託に関する法律』に改題される。これは郵便事業株式会社から郵便局株式会社への郵便窓口業務及び印紙の売りさばきに関する業務の委託並びにその再委託に関するものになり、郵便局について定めるものとなる。郵便貯金・簡易保険等事務については本法から削除された。
[編集] 郵便窓口業務の委託方法
郵便局株式会社が、郵便事業株式会社から法律上委託させられる業務を、郵便窓口業務再委託業者に委託する方法となる。
[編集] 委託範囲
同法第2条により再委託される窓口業務は次の範囲である。
- 郵便物の引受け
- 郵便物の交付
- 郵便切手類販売所等に関する法律第1条に規定する郵便切手類の販売
- 前3号に掲げる業務に付随する業務
ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の規定は無く、小包郵便物は郵便法の同時改正により郵便物ではないので郵便に該当せず、民間の貨物運送事業扱いとなる。
[編集] 地方公共団体・組合の根拠法との関係
同法第3条第2項により、地方公共団体は、この法律の定めるところに従い、郵便局株式会社の再委託により委託業務を行うことができる。
第3項で、組合は、当該組合に関する法律の規定にかかわらず、この法律の定めるところに従い、委託事務を行うことができる。
第9条ににより、受託者が組合である場合に限り、上記の委託業務範囲内において、当該組合に関する法令の規定にかかわらず、組合員以外の者に対しても、公平に役務を提供しなければならない義務を負うが、地方公共団体並びに組合以外の受託者はその義務を負わない。
だが、後述以外の場合は郵便業務しか行なうことができない。
[編集] 委託事務取扱の基準
民営化前同法第10条第1項は、『受託者は、公共の利益のため、誠実に自ら委託事務を行わなければならない。』とのあったが、これは削除された。法律上は、受託者は特定の者の利益になるように業務を行い、業務を民法の委任程度の誠実さでおこなってよく、特に自ら委託業務行なう必要がなく、派遣労働者や他の事業体に丸投げしてしまってもよいこととなる。
[編集] 再委託契約
郵便局株式会社は、総務大臣の認可を受けて定める基準に従って、郵便局株式会社の指定する場所において再委託業務を行う契約を締結しなければならない義務を負うことになる。
郵便局株式会社は、委託業務を行う必要がある場合において、その業務の運営上適切であると認めるときは、この法律の定めるところに従い再委託するすることができる。
[編集] みなし公務員
みなし公務員規定が削除される。
[編集] 経過措置
郵政民営化により、直接法的根拠のある受託は郵便(小包郵便物を除く)のみとなり、受託者が組合であって、受託を続けている間に限り、承継計画に当該簡易郵便局の業務としてゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の業務を取扱うことが入っている場合は、経過措置としてそれらの業務を行なうこことができこととなり、地方公共団体、個人、組合以外の法人等が受託する場合には、特例として民営化時に各種資格を取得したものとみなされるにとどまり、受託者本人の死亡、従事者が変更する場合の措置はない。
民営化後に新設・変更の場合は、組合以外の簡易郵便局は、その受託者や従事者が銀行代理店、保険募集員等の適用法令の基準に合致するように自分で登録や資格の取得、局舎の新築・改築等をしなくてはならず、到底、「簡易な郵便局」と言える範囲を逸脱しており、郵政民営化以前の従来の簡易郵便局制度は消滅したという状況である。
各業務の処分は次の通りである。
[編集] ゆうちょ銀行関係
- 郵便貯金・郵便振替・郵便為替に関する業務は、郵便局株式会社とゆうちょ銀行の協議で決まるものであり、必ず再委託されるものではない。
- 郵便窓口業務の委託に関する法律(昭和24年6月15日法律第213号)附則(平成17年10月21日法律第102号)第68条・第69条により郵便貯金事業の国債に関する事業については、日本郵政株式会社の定める承継計画に、承継後にその簡易郵便局に業務を行わせることが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、ゆうちょ銀行を所属証券会社とした証券仲介業として登録をしたものとみなされる。その業務を行う受託者の役員・使用人は、承継計画に、承継後にその簡易郵便局で国債専門の証券外務員(国債証券等募集員)として従事することが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、外務員登録原簿に登録をしたものとみなされる。
- 同法附則第72条郵便貯金事業の確定拠出年金に関する事業については、郵政民営化の承継計画に、承継後にその簡易郵便局に業務を行わせることが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、確定拠出年金運営管理施設として登録したものとみなされる。
[編集] かんぽ生命保険関係
同法附則第70・71条により、簡易保険事業の募集に関する事業については、承継計画に、承継後にその簡易郵便局に業務を行わせることが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、かんぽ生命保険を所属保険会社とした特定保険募集人として登録をしたものとみなされ、その業務を行う受託者の役員・使用人は、承継計画に、承継後にその簡易郵便局で生命保険募集員として従事することが入っている場合に限り、特例として現行法令の基準等にかかわらず、かんぽ生命保険を所属保険会社として生命保険募集員に登録をしたものとみなされ、保険業法第281条に定める手数料を納めなければならない。
[編集] 受託者関係
同法附則第74条により、受託者が組合である場合に限り、その組合が郵便窓口業務等受託者である間は、経過措置として当該組合に関する法律の規定にかかわらず、次に掲げる業務を行うことができる。ただし、5~7は前述の特例により銀行代理店、生命保険募集員、証券仲介業の各登録を受けたものと承継計画によりみなされる場合に限られる。この場合は、同法第9条の規定が適用され、受託者が組合である場合においては、組合は、当該組合に関する法令の規定にかかわらず、組合員以外の者に対しても、公平に役務を提供しなければならないこととされ、組合員以外も原則利用可能である。
- 郵便貯金・簡易生命保険管理機構が管理する旧郵便貯金管理業務の委託を受けたゆうちょ銀行の業務の委託を受けた郵便局株式会社から委託されたの郵便貯金管理業務
- 郵便貯金・簡易生命保険管理機構が管理する旧簡易保険管理業務の委託を受けたかんぽ生命保険の業務の委託を受けた郵便局株式会社から委託されたの簡易保険管理業務
- 郵便事業株式会社から委託を受けた郵便局株式会社から委託を受けた貨物(小包郵便物)で、郵便窓口業務の委託等に関する法律施行規則附則第2条※1の範囲内の引受業務。
- 郵便局株式会社から再委託を受けたゆうちょ銀行の代理店の業務
- ゆうちょ銀行の国債販売仲介業務
- かんぽ生命保険の保険募集業務
- 確定拠出年金の運用関連業務
- 前各号に掲げるもののほか、政令で定める業務
※1
- 最大
- 大きさ 長さ、幅及び厚さの合計170cm
- 重量 30kg
- 最小
- 円筒形又はこれに類する形状のもの
- 長さ 14cm
- 直径若しくは短径又はこれらに類する部分 3cm
- 前号に規定する形状のもの以外のもの
- 長さ 14cm
- 幅 9cm
- 前2号の形状を満たさないものは、厚紙又は耐力のある紙若しくは布で作成した長さ12cm、幅6cm以上のあて名札を付けたもの
[編集] 特定の者や組合員以外が利用できない場合
上記のように、同法委託範囲内であれば員外利用が可能であるが、方法や契約方法によっては不可能となりかねない場合がある。この公平利用規定は、規定に基づきその範囲内で委託した業務に限られ、組合が直接各社と契約して範囲外の業務をする場合には適用されないため注意が必要である。生協以外の組合であれば、員外利用制度や准組合員制度を利用することもできなくはないが、営業地域内の通勤者、住民や法人等に限定されている上、その組合の方針によっては全面・部分的な利用規制、残高制限等を行なう場合もある。
参考例
- 農協・漁協の信用事業としての設置のATMで、組合の信用事業との業務提携されたゆうちょ銀行・かんぽ生命保険の残高照会を含む利用。
- 組合の信用事業(JAバンク、JFマリンバンク)での両替、公共料金、税金等の取扱。
- 三菱東京UFJ銀行の合併に伴う移行処置のような措置や制度ができた場合、ゆうちょ銀行の貯金口座等への預入、払戻、払込、振替等を、その農協・漁協の信用事業での預金口座を経由して取扱う方法。
- 小包郵便物の取扱範囲を超える貨物引受を、郵便事業株式会社が新規取扱を可能とした場合に締結した契約した範囲の貨物の引受などの場合。
- ゆうちょ銀行が同法附則の委託範囲外の投資信託、変額保険等の商品の代理業務を受託者と直接契約した場合。
- かんぽ生命保険が、保険募集以外の業務を新規に代理をさせた場合。
- 地方公共団体が、その地方公共団体の管轄内の住民に限定して取扱う場合。
- 地方公共団体及び組合以外の受託者が、ある特定の宗教や政治・思想の信者・支持者・関係者に限定して業務をする場合。
[編集] 地方公共団体関係
受託者が地方公共団体の場合には、先述のように特例措置で運営可能であるが、今後、受託業務従事職員が変わる場合には、自力で職員が必要な資格を取得しなければならない。
特に、法律上、業務の公益性に関する規定は削除されたので、公益性の高い業務という大義名分を失うこととなり、補助金や施設の無償貸与などの便宜を図ることが困難となることが予想さる。