無顎類
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?無顎口上綱 Agnatha | ||||||||||||
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ヤツメウナギ |
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無顎類(むがくるい Agnatha)とは、脊索動物門脊椎動物亜門無顎口上綱に含まれる動物の総称。今日生存しているものはどれもヤツメウナギ、ヌタウナギ、ホソヌタウナギ(旧和名:メクラウナギ)などの、ウナギ状の体型をした魚のような動物群だが、魚上綱に含まれる魚類ではない。脊椎動物のうち、顎を獲得する前に分岐した系統群をひとくくりにした概念であるため、無顎類が単系統な分類群であるかどうかは疑問がもたれている。円口類とも呼ばれる。
2007年2月1日、日本魚類学会は旧来の標準和名である「メクラウナギ」などを差別的なものとして、改名したと発表した。新旧の標準和名については後述の分類を参照。
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[編集] 特徴
比較的寒冷な地域の河川、湖沼、海中と、暖かい地域の深い海に分布する。真の顎を持たず、口は、頭部末端に開いた単純な孔のようになっている。また、むなびれ、はらびれのような対になった鰭を持たない。体表は粘膜で覆われている。鰓蓋が無く、口または外鼻孔から取り入れた水を、体側に並んだ鰓孔から排出して呼吸する。顎や真の歯は無いが、鋭い歯状突起を持っていて、生きた魚、死にかけた魚などを捕食する。無顎類は、ヌタウナギ綱(旧和名:メクラウナギ綱)と頭甲綱(ヤツメウナギ類)に分けられるが、両者の体構造や生態は大きく異なっており、脊椎動物の進化史の初期に分岐した縁の遠いグループと考えられている。
[編集] ヌタウナギ綱
ヌタウナギ綱(旧和名:メクラウナギ綱)Myxini は、大陸棚から深海にかけての冷たい海中に生息している。化石記録に乏しく、形態進化の過程は不明である。体型はウナギ状で、皮膚は粘膜に覆われている。目は皮膚に埋没して外見からは確認できない種が多いが、目を覆う皮膚は色素に乏しく白みがかって見える。4~6対のひげをもつ。口の周りに歯を持たないが、舌の上に歯状突起があり、死にかけた魚や死体、生きた獲物ではゴカイのような多毛類を食べている。
底曳き網漁業で大量に網に入ってくることがあり、網の中の魚を食害して商品価値を落とすうえに、海水を吸って著しく膨潤し、ゼラチン状に固まる大量の粘液を分泌して漁具や甲板をそこなうため、嫌われている。
地域によっては食用にするが、漁獲されても食用にしない地域も多い。新潟県においては「浜焼き穴子」という名前でヌタウナギの加工品が作られ、燻製や干物も生産されている。しかし、一大消費地は韓国であり、古くから庶民の滋養食として用いられてきた。具体的には藁を燃やして丸焼きにしたり、匂い付けに松葉を敷いて網焼きにする。また、ぶつ切りにして葱やコチュジャンで炒めたり、焼肉風に焼いて食べることもある。釜山などでは専門の料理店も存在する。また、ヌタウナギの革は加工して財布などの皮革工芸品にされる。
日本で漁獲されるヌタウナギはその大半が韓国に輸出されている。最近では日本の排他的経済水域で韓国漁船の犯行とみられる密漁や違法操業事件も発生している。
繁殖力はそれほど強くないようで、食用や皮革用に集中的に漁獲すると資源が急速に枯渇してしまった事例が多く知られている。
[編集] 頭甲綱(ヤツメウナギ類)
頭甲綱(ヤツメウナギ類)Cephalaspidomorphi は、両半球の比較的冷たい海と陸水に生息している。古生代には皮骨の発達したいわゆる甲冑魚の1グループとして繁栄した分類群の子孫である。目は大きく、目の後ろに7対の鰓孔が目立つ。口の周囲に鋭い歯が並び、他の魚に口を押し付けて吸盤状の口の周りの肉で密着し、歯を皮膚に食い込ませ、体液を吸う。
海に生息し産卵のために川に遡上する種と、一生を河川ですごす種とがある。親は産卵後死ぬ。卵から孵った幼生は親と全く異なる姿をしており、アンモシーテス幼生と呼ばれる。アンモシーテスは、緩やかな流れできれいな砂が堆積した川床に穴を掘り、ほとんどそこから出ない。目は皮膚に埋没し、口に吸盤や歯は無く、流れてくるデトリタスを濾しとって食べている。その形や性質がナメクジウオに似ている。数年間にわたって幼生期をおくった後、変態して成体と同じ形の幼体、あるいは成体となる。このため、河川環境の悪化に非常に脆弱である(特にスナヤツメの生存状況は水質基準のバロメータになる事がある)。変態後、何も食べずにすぐに成体となって繁殖に入る河川残留型の種と、海や湖に下って魚類を襲って大きく成長してから河川に遡上し繁殖に入る降海型の種があり、日本では前者の代表種としてスナヤツメ、後者の代表種としてカワヤツメがよく知られる。
降海型の種は日本やフランスなどでは食用とされる。海でサケマス類やカレイ類を襲い、漁業に被害を与えることもある。アメリカの五大湖では非意図的に移入されたウミヤツメが海に下らずに湖内でマスに大きな食害を与えていることが大きな問題となった。
[編集] 進化
脊椎動物の進化において、無顎類は重要な位置を占める。最古の無顎類の化石は、カンブリア紀後期の地層から発見されている。あまり遊泳力がない、皮骨で覆われたオタマジャクシのような姿をしていた。つづくオルドヴィス紀に多様化が進み、シルル紀、デボン紀になると、体側は丈夫な骨質のよろいのような皮骨で覆われ、鰭状の器官や奇妙な突起を発達させた。ほとんどの種はデボン紀末期に絶滅した。これら絶滅した無顎類のうち、どの系統が現生の無顎類の祖先だったかは十分に解明されているとは言えないが、化石が多く知られる皮骨の発達したグループにヌタウナギ綱の祖先は含まれていなかったと推測されている。また、コノドント動物は長くその正体が分からなかったが、現在ではこの類であり、ホソヌタウナギに近い系統とも言われている。小型のプランクトン的生活の動物で、世界中の海に生息し、古生代末まで生き延びた。
一般的な魚類、魚上綱に含まれる顎がある魚の祖先も、シルル紀後期かオルドビス紀に無顎類の系統群のひとつから進化したといわれている。
[編集] 分類
現生のもののうち、日本産のみを示す。
- 無顎口上綱 Agnatha
- ヌタウナギ綱(旧和名:メクラウナギ綱) Myxini
- ヌタウナギ目(旧和名:メクラウナギ目) Myxiniformes
- ヌタウナギ科(旧和名:メクラウナギ科) Myxinidae
- ホソヌタウナギ(旧和名:メクラウナギ) Mixine garmani
- クロヌタウナギ(旧和名:クロメクラウナギ) Paramyxine atami
- ヌタウナギ Eptatretus burgeri
- ムラサキヌタウナギ E. okinoseanus
- ヌタウナギ科(旧和名:メクラウナギ科) Myxinidae
- ヌタウナギ目(旧和名:メクラウナギ目) Myxiniformes
- 頭甲綱 Cephalaspidomorphi
- ヌタウナギ綱(旧和名:メクラウナギ綱) Myxini
[編集] 参考文献
- 岩井保監修 K.E.バニスター編 『動物大百科』第13巻 魚類 平凡社、1987。
- 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海 編 『改訂版日本の淡水魚.』 山と渓谷社、2001。
- 金子隆一 『イラスト図解 謎と不思議の生物史』 同文書房、1996。
- 中坊徹次編『日本産魚類検索-全種の同定-』 東海大学出版会、1993。
- 上野輝彌・沖山宗雄編 『現代の魚類学』 朝倉書店、1988。