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救世主 - Wikipedia

救世主

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

救世主(きゅうせいしゅ)とは、苦境にある集団を救うはたらきをした人、もしくは、はたらきをすべき人のこと。宗教的には人類の救い主を指すことが多く、主にキリスト教ではイエス・キリスト仏教では釈迦弥勒菩薩をさす。

目次

[編集] 救世主思想の発祥

救世主とは古代ユダヤの民間思想で、ヘブライ語マスィアッハ(ラテン語でメシア、英語でメサイア)の意訳。

世界のどの民族にも、困難な時代には英雄登場と、英雄による社会救済を待望する気持ちが人々に高まるが、 この期待が宗教的にまで高まり、救済する範囲も一民族のみならず世界まで拡大したものが、救世主であると定義して良いであろう。

ユダヤ教の背景を全く持たない日本人にも、ユダヤ発祥である救世主という概念が理解可能な理由はこの民族共通の願望である。しかしヘブライ語マスィアッハは元来、このような民族共通の願望とはかなり異なる意味を持つ。この語の原義は「油塗られた者」である。半砂漠の国ユダヤでは、皮膚の乾燥や日焼けの防止に油(オリーブ油)を体に塗るが、これがたいへん気持ち良いので、王の戴冠式には高級な油をその頭に注ぐ儀式があった。隣接する砂漠国アラブには今でも、母親が赤ん坊の体中に油を塗りながら王様の歌を歌う習慣がある。このような習慣により、「油塗られた者」とは「王」を意味する婉曲表現である。この語には、次のような歴史的背景があって、紀元前後のユダヤでは民衆の非常に強い期待が込められた。

紀元前1000年頃ダビデ王はユダヤ人の国イスラエルを建国し、その子孫が代々イスラエルを治めたが、ユダヤ人は紀元前500年頃のバビロン捕囚で国を失い、数十年後にユダヤに帰国してからは王制をとらず、神殿祭司中心の政治体制をとったので、ユダヤがローマ帝国属国となりイエス・キリストの産まれる直前の紀元前1世紀のユダヤには、王は存在せず、ダビデ王の子孫がどこに居るか分からなくなっていた。

支配者であるローマ兵の尊大な振る舞い、また、本来であれば王不在のユダヤ人たちの指導者となるべき祭司たちが、自らの保身のためにローマ人たちに媚びへつらっていること(ローマ皇帝ティベリウスの即位に際し、ティベリヤと称する街を作った、等々)などへの不満が民衆に不安と不満を与え、やがて「ダビデ王の子孫が現れ、ユダヤ民衆を率いてローマ帝国を滅ぼし、かつての栄光をふたたびもたらしてくれる」という信仰が民衆に広まった。この「ダビデ王の子孫」が「油塗られた者」即ち救世主である。

[編集] 終末思想

「油塗られた者」という語には、ユダヤ教から派生した次のような終末思想も込められた。

ユダヤ教の聖典である聖書(キリスト教徒が『旧約聖書』と呼んでいる本)は紀元前300年頃にほぼ現在のような形に編纂された。その最初の書は、世界が神によってどのように創られたか書かれた「創世記」である。創世記によるとこの世の初めに神は地上に降りてきて6日間で天、地、光、、人間に至るまでの全てを創造した。

世界の初めについて創世記を書き上げた後ユダヤ人たちは、では世界の終わりはどのようであるかと空想し始めた。その結果「終末思想」と呼ばれるおそろしい考えに至ってしまった。

世界の終わりの日、神は再び地上に降りて来る。そして世界を破壊し尽くす。生きている人間は全て殺し、地上の物は焼き尽くし、山も海も破壊する。 その後、この世で産まれたことのある人間は全員神の前で生き返る。そして神による裁判"最後の審判"を受け、一部の人間だけが救われ、残りは永遠の火で焼かれる。

この世界の終わりの日に先立ち、反キリスト(=偽預言者『ヨハネの黙示録』)が破滅を導くべく登場するが、救世主は彼らを打ち倒さなくてはならない。破滅の後、神は世界を根本から創り直し、救われた人間はそこで永遠の命を得る。この救世こそ、人々の渇望されていたものだったのである。(千年王国

[編集] 救世主(になりたがる)思想

実際当時のユダヤでは、誰がダビデ王の血筋を引いているか行方不明だったので、逆に誰でもダビデ王の子孫を名乗り救世主として行動する機会が平等にあった。

ユダヤ教終末思想によると、この世の終わりで神によって救われるのは、モーセの十戒「殺すな、盗むな、、」を一生忠実に守った人間だけだった。また聖書には「混ぜるな」(葡萄酒に水を混ぜて薄めると雑菌が入って質が落ちる等から由来する生活の知恵)と書いてあるので、ユダヤ人と外国人との混血者は世界の終わりで救われないと信じられていた。

ユダヤ人は当時からコスモポリタンだったので、混血は実際たくさん居たし、一生に一度ぐらい十戒を破ってしまった人もたくさん居た。このような人たちはユダヤ教によると終末の日に決して救われない。困って考え抜いた彼らは発想の転換を行った。これで生まれたのが「救世主思想」という思想である。

ユダヤ教によると終末の日に本来救われない者たちは、救世主として行動することを考えた。救世主として行動してローマ帝国を倒し、そのまま世界を終末へと導き、神の再来を招くのである。地上に降りてきた神は、地上を破壊する手伝いをしてくれた御褒美として彼らを特別に天国へ入れてくれるに違いない、彼らはそう考えた。[要出典]

「救世主」という語にはこのような意味も込められた。つまり人類を皆殺しにし、世界を破壊し尽くすことで天国に入ろうとの考えである。[要出典]

よって救世主とは、苦境にある貧しい人々を「救う」と言うより、「楽にするためにとどめを刺す」人物、または自分の野心を達成するための燃料として消費する人物と言うことができる。

しかしながら、別の視点によれば、ゾロアスター教の終末思想からも影響されたといわれ、そこでは特に、弱者利用や、抹殺による安楽死的な行為をすすんで行う思想に重点を置く見方というものは特に見当たらず、それよりもむしろ、(諸説あるようだが)大局的にいえば、世界は善の神アフラ・マズダーと悪の神アンラ・マンユとの戦いであるが、後に善の神の勢力が勝利し平和と豊かさが訪れるといったことをうたっている。

他に、上記でのユダヤ終末思想に関しては、積極的に破滅に向かわせる様が描かれているが、人間の手により計画的、段階的に引き起こされる事象ではなく、神の超人間的、超自然的で直接的な介入によりユダヤ民族への敵対者へ瞬時に制裁が加えられるという選民思想が存在する。

また、紀元後3~6世紀頃、活発に発展したといわれるカッバラー(カバラ)思想の中にも世界や歴史そのものの中に分裂し形成してしまった神的な上方世界と悪的な下方世界を統一しようとする働きの存在(所謂、そのような目に見えない力の働きの存在)といった考えがあるが、弱者や苦境者への無配慮的関与や全ての人類の世界的絶滅などの様な終末論誘導などは特に存在していない。

本来、旧約聖書を基礎としたユダヤ思想では、自国家再建や復興、また律法乃至神との契約の遵守、神と人間との正しき関係の維持等を強く要求し、旧約聖書中登場する預言者達の言葉もこうした事を正確に実行するようにと、また、しなければならないと神から授かった言葉を用いて同民族に忠告や伝達を行っていることを基本とし、人類の意図的な全面崩壊の思想は特に重視されていないようである。

終末思想はユダヤ国家に対する敵、敵軍、圧制者、迫害を行う周辺国(その他異邦人)などの滅びにより実現されるユダヤ民族の勝利や栄光、正義、またその後に到来するといわれるユダヤ国家の繁栄、平和を意味するところが基本であり、イスラエルヤハウェ神による恒久的支配によって他の国や民族に支配されない国家を待望するところに重点が置かれている。この点からも全世界の破壊への尽力を中心とした思想は特にみられない。

専ら、終末思想というと聖書中に現れる「終わりの時」が連想されるが、この「終わりの時」といった言葉にも、もともとは世界崩壊や人類絶滅、弱者へのあまり良くない意味での関わりといった思想よりもむしろ、敵国からの厳しい支配や迫害、またそうした苦しい時代からの解放、勝利を指し、更にそれら解放や勝利によるユダヤ国家の歴史的新時代、ユダヤ民族の信奉する唯一神の支配により訪れる平和な時代、またはそうした時代が始まるといった考え、意味が強く含まれている。

但し、上記のようなユダヤ教の基本的な思想を経て、現在に至るまでのユダヤ関連の考えや歴史の中においてメシアニズムやシオニズムが起立し、混在してきた背景が存在することも否めない部分はある。

以上のように、見る視点の相違により、様々な見方が散見される。

[編集] 日本語での意味と聖書世界での意味の差

救世主思想は紀元前後から二千年間近くユダヤ教、そこから派生したキリスト教、イスラム教に広く知られている思想である。彼らが救世主と言う時、ユダヤ教で発生した本来の意味で使われることが多い。つまり日本語における「救世主」(世を救う指導者)という意味とはまるで異なる意味でこの語を使う(聖書の歴史を持たない日本人はこの差に気を付けるべきである)。

またユダヤ人、キリスト教徒、イスラム教徒の中でも、あまり歴史を知らず物を深く考えない庶民には、日本人と同じように救世主と言うと、拝みさえすれば助けてくれる親切な偉い人としか考えていない人も多い。このような認識の幅にも注意すべきである。

[編集] 救世主が生まれる背景

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[編集] 現代の救世主の用法

新興宗教では、往々にして開祖にして教祖、その宗教団体の長である指導者が、自らを救世主と自称することが多い。

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[編集] 歴史上救世主とされた人物

[編集] 救世主を自称した人物

  • シャバタイ・ツヴィ:17世紀の人物。自分こそが約束されたメシアだと幾度か宣言し、ユダヤ人たちは熱狂した。トルコの役人たちに逮捕され送還され、大きな運動になることを恐れた当局者は彼をイスラム教徒に改宗させた。
  • 黄国柱:(黄国周)1930年代「頭もイエス・キリストの髪、血もイエス・キリストの血、心もイエス・キリストの心で、完全にイエス・キリストに変わった」と主張。集団で移動し、見物客が集まった。
  • 金聖道:(1882年1944年、金成道)1930年代、既婚のクリスチャン女性だったが、元山の白南柱(白南周)と合同し、平安北道鉄山で神秘主義を広め、12弟子を置いて自らを「新しい主」とさせ、この名によって祈祷させたという。
  • 金百文:(1917年1990年)「再臨のキリストメシア)」と主張。白南柱および金聖道に師事した後に独立し、坡州に「イスラエル修道院」を設け、朝鮮戦争後ソウルに移った後は「清水教会」を率いた。1945年に25歳の文鮮明が弟子入りした。
  • 朴泰善:(1917年~?)1955年韓国イエス教伝道館 を創設し代表となり 自分こそが再臨のキリストであると主張。
  • 大川隆法:地球人類の魂を創造したるエル・カンターレであり、釈尊の再誕であると主張。
  • デビット・コレッシュ:1993年4月19日に、テキサス州ウエイコで、信者約80人が「集団自殺」した「ブランチ・ダビディアン」の教祖。自分は「救世主」であると主張した。「私は神の精子を持っている」と豪語した。
  • 麻原彰晃:仏陀の再臨であり、最終解脱者であると主張。1991年に『キリスト宣言』という本を出して、自分だけが世界を救済することのできる「救世主・キリスト」であると宣言した。
  • 鄭明析:元統一教会員・勝共講師の韓国人。モーニングスター(MS、JMS、「摂理」)の教祖。統一教会の原理講論に非常に似た教義を説き、自らが再臨主であると主張。ある女性信徒との姦淫事件を起こし、訴訟をおこされ海外逃亡した。
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[編集] 救世主をテーマにした作品

サブタイトルは「世紀末救世主伝説」。核戦争後の荒廃した社会を描く。
機械に支配された未来世界で人類を救おうとする救世主を描く。
異世界での過酷な戦いの中、救世主として活躍する少年を描く。
主人公が荒廃した世界の救世主として祭り上げられる。
根の世界『アヴァター』へと召還された主人公が、<救世主クラス>と呼ばれる救世主の候補生達と繰り広げる戦いと恋愛を描く。


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