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尾去沢鉱山 - Wikipedia

尾去沢鉱山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

尾去沢鉱山(おさりざわこうざん)とは、秋田県鹿角市にあった鉱山である。が採掘された。708年(和銅元年)に銅山が発見されたとの伝説が残されており、1978年(昭和53年)に閉山した。

目次

[編集] 概要

尾去沢鉱山は、鉱物が溶け込んだ熱水が岩盤の割れ目に染み入り、地表近くで冷え固まった鉱脈型鉱床の典型[1]である。中新世グリーンタフ珪質頁岩に、火山岩である安山岩流紋岩デイサイトが貫入している。鉱脈は500条あり、平均走行延長300m、傾斜延長300m、脈幅0.7m、銅の品位は2.4%であった[2][3]坑道を用いる坑内掘りによって採掘が進められ、南北3km、東西2kmの山中に、明治以降だけで700km、江戸以前を含めれば800kmの坑道[4]が、シュリンケージ採鉱法により鉱脈に沿って縦横に掘られた。銅のほか、金、亜鉛が産出された。1889年(明治22年)に岩崎家に経営が移り三菱財閥が開発を行うようになってから閉山までの産出量は、銅30万t、金4.4t、銀155tと推定されている[5]

1978年(昭和53年)に閉山したが、跡地には選鉱場、シックナー(thickener、濁水から固体を凝集沈殿させる非濾過型の分離装置)、大煙突等が残されている。これらの近代鉱山施設の遺構は土木学会選奨土木遺産[6]近代化産業遺産[7]選ばれている。また、一部は、坑内や鉱山施設の見学や砂金取り体験のできるテーマパーク史跡尾去沢鉱山となっている。2007年には日本の地質百選に選定された。

[編集] 略史

708年(和銅元年)に銅山が発見され、産金が東大寺の大仏や、中尊寺で用いられたとの伝説が残る[8]。1598年(慶長3年)に南部藩の北十左衛門が白根金山を発見し[9]、後に民謡『南部牛追唄』で「田舎なれども南部の国は西も東も金の山」と歌われる金山の一つとして開発が行われた[10]。金が枯渇してきた1695年(元禄8年)には銅鉱が発見され、別子銅山、阿仁銅山とならび、日本の主力銅山の一つとなる[11]

1889年(明治22年)に岩崎家、1893年(明治26年)に三菱合資会社の経営することとなり、近代化が図られた。1984年(明治27年)には坑内に電話が敷設され、明治29年(1896年)には水力発電所の建設により住宅を含む全山に電気が通った[12][13]。日本の近代化、戦後復興の礎となった尾去沢鉱山だが、不採算と銅鉱石の枯渇から、1966年(昭和41年)に精錬が中止され、1978年(昭和53年)に閉山した[14]

[編集] 尾去沢銅山事件

江戸末期、財政危機にあった南部藩は御用商人鍵屋村井茂兵衛から多額の借財をなしたが、身分制度からくる当時の慣習から、その証文は藩から商人たる鍵屋茂兵衛に貸し付けた文面に形式上はなっていた。1869年(明治元年)採掘権は南部藩から鍵屋茂兵衛に移されたが、諸藩の外債返済の処理を行っていた明治新政府で大蔵大輔の職にあった長州藩出身の井上馨は、1871年(明治4年)にこの証文を元に返済を求め、その不能をもって大蔵省は尾去沢鉱山を差し押さえ、鍵屋茂兵衛は破産に至った。井上はさらに尾去沢鉱山を競売に付し、同郷人である岡田平蔵にこれを買い取らせた上で、「従四位井上馨所有」という高札を掲げさせ私物化を図った。鍵屋茂兵衛は司法省に一件を訴え出、司法卿であった佐賀藩出身の江藤新平がこれを追求し、井上の逮捕を求めるが長州閥の抵抗でかなわず、井上の大蔵大輔辞職のみに終わった。これを尾去沢銅山事件という[15][16]

[編集] 獅子大権現

江戸時代から伝わる尾去沢鉱山発見の物語が、『大森親山獅子大権現御伝記』の陸中の国鹿角の伝説に残されている。

1481年(文明13年)、尾去村の奥の大森山から、翼の差し渡し十余尋(約20m)にもなり、口から金色の炎を吹き、牛のほえるような声を立てる大鳥が現れ民百姓を恐れさせた。尾去村の人々がこの大鳥を滅ぼしてくれるよう毎夜天に祈ったところ、ある時、大森山の方で鳥の泣き叫び苦しむ声が聞こえ、これ以降はこの怪鳥が飛んでくることはなかった。不思議に思った村人が声のした方を訪ねると、赤沢川が朱色に染まっており、その元には大蛇の頭、牛の脚を持ち、赤白金銀の毛を生やしたかの怪鳥が傷つき死んでいた。腹を裂いてみると、金銀銅鉱色の石だけが充満していた。村長が思うところ、夢に白髪の老人が6度も現れ、新山を開けと告げていたのだが、この山のことであったに違いないと辺りを掘ってみたところ鉱石が発見された。これが尾去沢鉱山の始まりである。

人か神か、だれが怪鳥を倒したのかと訪ねまわったところ、大森山のふもとに獅子の頭のような大石が地中より出ており血がついていたことから、この神石であったものであろうと考え、大森山は獅子の体、連なる山々は獅子の手足であるとして、社を建立し、怪鳥を埋め奉り、大森山獅子大権現とした[17][18][19]

[編集] 尾去沢石

緑色の部分が尾去沢石
緑色の部分が尾去沢石

尾去沢石 (Osarizawaite) とは尾去沢鉱山で発見された新鉱物である。硫酸塩鉱物の二次鉱物であり、明ばん石グループに含められる。化学組成はPbCuAl2(SO4)2(OH)6である。黄緑色をなし、硬度は3 - 4。ビーバー石に類似する。[20][21][22][23]

[編集] 脚注

  1. ^ 史跡尾去沢鉱山の豆知識2008年6月16日閲覧
  2. ^ 『新版地学事典』1996年、平凡社、175ページ、ISBN 4-582-11506-3
  3. ^ 『角川日本地名大辞典 5秋田県』1978年、角川書店、177ページ、ISBN 4-04-001050-7 では470条
  4. ^ 秋田県「バーチャル未来科学館」尾去沢鉱山の歴史と仕事:上級2008年6月16日閲覧
  5. ^ 秋田県「バーチャル未来科学館」尾去沢鉱山の歴史と仕事:中級2008年6月16日閲覧
  6. ^ 2005年認定。
  7. ^ 2007年11月認定。近代化産業遺産群3「東北鉱山」の構成遺産として。
  8. ^ 史跡尾去沢鉱山の歴史2008年6月16日閲覧
  9. ^ 史跡尾去沢鉱山 明治以前の尾去沢鉱山の歴史2008年6月16日閲覧
  10. ^ 空間通信 マインランド 尾去沢2008年6月18日閲覧。『レジャーパークの最新動向2002』(2002年、空間通信)の記事。
  11. ^ 前掲『角川日本地名大辞典』178ページ
  12. ^ 史跡尾去沢鉱山 明治以降の尾去沢鉱山の歴史2008年6月16日閲覧
  13. ^ 秋田県「バーチャル未来科学館」尾去沢鉱山の歴史と仕事:初級2008年6月16日閲覧。ここでは、電話開通は1893年とされる。
  14. ^ 史跡尾去沢鉱山 明治以降の尾去沢鉱山の歴史2008年6月16日閲覧
  15. ^ 南白史録/尾去沢銅山事件2008年6月16日閲覧
  16. ^ 敬天愛人 第18回「明治の汚職事件あれこれ」2008年6月16日閲覧
  17. ^ GLNからこんにちは 尾去沢大森親山獅子大権現御伝記2008年6月16日閲覧
  18. ^ 鹿角市 鹿角のむかしっこ 光る怪鳥2008年6月16日閲覧
  19. ^ 史跡尾去沢鉱山 尾去沢鉱山にまつわる「光る怪鳥」伝説2008年6月16日閲覧
  20. ^ 国際鉱物学会鉱物名一覧 (PDF)2008年6月18日閲覧
  21. ^ 東京大学総合研究博物館2008年6月18日閲覧
  22. ^ mindat.org Osarizawaite2008年6月18日閲覧
  23. ^ Mineralogy Database Osarizawaite2008年6月18日閲覧

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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