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大阪空港訴訟 - Wikipedia

大阪空港訴訟

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

最高裁判所判例
事件名: 大阪国際空港夜間飛行禁止等請求上告事件
事件番号:昭和51年(オ)第1395号
1981年(昭和56年)12月16日
判例集: 民集35巻10号1368頁
裁判要旨
  1. 人格権または環境権に基づく民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止を求める訴は、不適法である。
  2. 航空機の離着陸により周辺住民に騒音等による甚大な影響を与えている空港につき、右被害の発生を防止するのに十分な措置を講じないままに空港を維持・管理してきたことが、国家賠償法二条にいう「瑕疵」に当るとされた事例。
  3. 航空機騒音の影響による被害の認定にあたり、検証実施の際に受けた印象、原告らの陳述書やアンケート調査等にかなり高い証拠価値を認め、原告に画一的に慰謝料を認めても、採証法則や経験則に違背するものではない。
  4. B滑走路供用開始後に至つてジェット機の大型化と大量就航をみて騒音が激化したとの事情の下において、B滑走路供用後に転居してきた原告について、住民の側が特に公害問題を利用しようとするごとき意図をもつて接近したと認められる場合でない限り危険の接近の理論を適用しないという原審の判断は誤りで、航空機騒音の存在についての認識を有しながらそれによる被害を容認して居住したものであるから、原告の入居後に実際に被った被害の程度が入居の際原告がその存在を認識した騒音から推測される被害の程度を超えるものであったとか、入居後に騒音の程度が格段に増大したとかいうような特段の事情が認められない限り、その被害は原告において受忍すべきものというべく、右被害を理由として慰藉料の請求をすることは許されない。
  5. 空港の供用に伴って発生する騒音等に対する将来の損害賠償請求権は、将来の給付の訴を提起することのできる請求権としての適格性を有しない。
大法廷
裁判長:服部高顯
陪席裁判官:団藤重光 環昌一 栗本一夫 藤崎萬里 本山亨 中村治朗 横井大三 木下忠良 伊藤正己 宮崎梧一 寺田治郎 谷口正孝
意見
多数意見:服部高顯 栗本一夫 中村治朗 谷口正孝(以上4名全ての論点について)伊藤正己(1.2.3.5.について) 栗本一夫 藤崎萬里 本山亨 横井大三(以上4名1.4.5.について) 中村治朗 木下忠良(以上2名2.3.5.について) 環昌一(2.5について) 団藤重光(2.3.について) 
意見:環昌一(3.について)
反対意見:団藤重光(1.4.5.について) 環昌一 中村治朗 木下忠良(以上3名1.4.について)伊藤正己(4.について)栗本一夫 藤崎萬里 本山亨 横井大三(以上4名2.3.について)
参照法条
国家賠償法2条1項、民法709条など

大阪空港訴訟(おおさかくうこうそしょう)とは、大阪国際空港の付近住民がその騒音等に悩まされたため、空港の夜間利用差し止め等を求めた民事訴訟最高裁判所昭和56年12月16日判決

目次

[編集] 概要

国営空港たる大阪国際空港の騒音公害の被害に遭った住民が、国を相手取り、

  1. 夜間空港使用の差し止め
  2. 過去の損害賠償
  3. 将来の損害賠償

を求めて提訴。

一審(大阪地方裁判所)では1の一部及び2を認めた。二審(大阪高等裁判所)では原告敗訴部分を破棄し、請求を全面的に認容した。国が上告

[編集] 最高裁判所判決

  1. 差止請求は原判決破棄、却下。
  2. 過去の損害賠償は上告棄却(請求認容)。
  3. 将来の損害賠償は原判決破棄(請求棄却)。
  • 国営空港には国の航空行政権が及ぶため、民事訴訟の対象にならない。
  • 過去の損害は特別の犠牲により成り立つものであり、国家賠償法第2条の適用が認められる。
  • しかし、将来の損害については程度の確定が困難であり、請求は認められない。

[編集] 論点別裁判官の判断

  • 差止請求について(10-4)
    • 少数意見:団藤重光、環昌一、中村治郎、木下忠良
  • 国家賠償法2条1項の適用の可否、陳述書による被害認定の可否、空港の設置に関する利益衡量(10-4)
    • 少数意見:栗本一夫、藤崎萬里、本山亨、横井大三
  • 危険への接近理論の適用範囲(9-5)
    • 少数意見:団藤重光、環昌一、中村治郎、木下忠良、伊藤正己
  • 将来の損害賠償の可否(13-1)
    • 少数意見:団藤重光

[編集] 判決への批判

「航空行政権」という文言を出して民事訴訟による救済が不適当であるとした判旨には批判が強い。阿部泰隆は本判決を権利救済を阻害する先例を作った裁判などとして厳しく批判し、「最高の名に値する裁判所であろうか」と嘆じた(阿部後掲)。

[編集] その後

1994年の関西空港の開港により大阪空港をどうするか、国や地元市などで議論があったが、国の空港行政の方針で同空港は引き続き利用されることとなった。1980年、空港廃止の調停が原告と成立。1989年、当時の伊丹市長も大阪(伊丹)空港の存続を認める見解を発表した。

[編集] 判例評釈

  • 阿部泰隆「民事訴訟と行政訴訟─大阪国際空港事件」『民事訴訟法判例百選I』8頁(有斐閣、1998年)
  • 原田尚彦「空港公害と被害者救済」『行政判例百選II』336頁(有斐閣、1999年)
  • 戸波江二「空港の騒音公害と人格権─大阪空港公害訴訟」『憲法判例百選I』58頁(有斐閣、2000年)

[編集] 外部リンク


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