古代祐三
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古代 祐三(こしろ ゆうぞう、1967年12月12日 - )は主にコンピューターゲームの音楽を手がける作曲家、ゲームプロデューサー。ゲーム製作会社株式会社エインシャント代表取締役社長。東京都日野市出身、日本大学櫻丘高等学校卒。
代表作に『イース』、『イースII』、『ソーサリアン』、『アクトレイザー』、『湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNEシリーズ』、『世界樹の迷宮シリーズ』他。
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[編集] 来歴
3歳でピアノ、5歳でバイオリンを学ぶ。8歳頃からピアニストである母の友人の久石譲に師事し、久石の下でインプロヴィゼーション(即興演奏)、ソルフェージュ(聴音)等の基礎的な音楽訓練を受ける。
高校生時代にマイコンBASICマガジンの出版社である電波新聞社にゲームミュージックプログラムを持ち込み、これがきっかけで同誌音楽担当となり、「YK-2」名義でゲームミュージックのパソコン向けプログラムを多数発表する。 また同名義にて、即売会での頒布を中心とした「100円ディスクシリーズ」(ONION SOFTWARE)にて、多数の優れた楽曲を発表すると共に、ゲームプログラミングの手腕も発揮した。この創作活動を通して知り合ったプログラマーが作成したFM音源ドライバに多大な影響を受け、その後自らもFM音源ドライバを自作する事となる。
高校卒業の翌年である1986年に日本ファルコムへ入社。採用試験の際持ち込んだデモテープの楽曲が『ザナドゥ・シナリオ2』で使用されると共に、ゲーム全体のうち約半数の楽曲を担当する。アルバイトとしての採用であったにも関わらず、入社後ロマンシア(オープニング曲)、ドラスレファミリー等、当時の話題作を担当した後、同社の代表作「イース」のオリジナル版であるPC-8801mkIISRシリーズ版のほぼ全楽曲を古代が一人で担当した。FM音源の性能を巧みに生かしたハイレベルな楽曲は、当時のゲーム業界に大きな話題と衝撃を与えた。現在でもイースのオリジナルサントラCDを名盤として挙げるゲーム作曲家は非常に多い。ゲームミュージックの進化の過程において、イースが一つのターニングポイントになったと同時に、古代の名を広く知らしめる一作となった。
また、ソーサリアンでは自身が開発したFM音源ドライバ"MUCOM88"を導入するなどし、メインコンポーザーとして約40曲あまりを担当。ファルコムサウンドチームの中心人物として、また当時のゲーム業界におけるサウンドコンポーザーとして圧倒的な知名度と存在感で活躍したが、「イースII」への参加を最後に、約2年の在籍期間をもってファルコムを退社しフリーランスに転じた。
フリーになって初の発表作である「ザ・スキーム」ではいち早くサウンドボードII(YM2608)に対応し、他のゲームサウンドとは一線を画する重厚なサウンドで人気を集めた(ゲームそのものよりサウンドトラックの方が売れたとすら言われる)。 ファルコム在籍時代~フリーに転身した頃の古代サウンドの大きな特徴は、PC-8801mkIISRシリーズの音源であるヤマハYM2203を駆使したサウンドメイクにある。ファルコム時代を代表する作品でみせたキャッチーでアグレッシブな楽曲は、ゲームファンの間で絶大な支持を得た。その音楽性は独特のベースライン(クリシェの多用)から「古代節」(または「ズンタタ節」「ズンダラ節」)とも呼ばれた。それと同時に古代節に魅了されたゲーム業界の多くのミュージッククリエイターの中に多数のフォロワーを生み出し、その後の"ゲームミュージック"の方向性を決定付けた。
先述のザ・スキームやミスティー・ブルー(ENIX)等でFM音源でのゲーム音楽のありかたを提示した後は、PCゲームからコンシューマに活動の場を移す。当時まだ発表されて間もないスーパーファミコン用ソフトアクトレイザー(ENIX)にて、自身初となるオーケストラ調の楽曲を発表。スーパーファミコン本体の発売前から楽曲製作に取り組み、「音源チップの特性を考慮した曲作り」が出来る、いわゆるエンジニアとしての側面も併せ持つ古代ならではのリアルな金管・木管楽器の音色を実現した。ゲーム評論家の山下章いわく、『まるでカートリッジの中にオーケストラがいるかのよう』に感じさせる程のクオリティで、業界内外から大きな注目を集めた。ファイナルファンタジーシリーズの作曲者として著名な植松伸夫が『アクトレイザーの楽曲は業界内で一つの"事件"だった』と現在でも語る様に、それまでのゲーム音楽と全く別次元の作品を提示した事により、アクトレイザーと同時期に開発されていたスクウェア社のファイナルファンタジーIVサウンド開発チームは、アクトレイザーの音色を聞いた事でショックを受け、開発終盤にも関わらず音源ドライバや音色を作り直す事態になったエピソードは植松氏のコメント等により広く語り伝えられている。
このように古代は先進のゲームミュージックコンポーザーとして業界に大きな影響を与え続けており、また自身の音楽スタイルも保守的にならず常に柔軟に変え、ベア・ナックルシリーズでは当時ゲーム業界では珍しかったハウス・テクノ等のダンスミュージックを取り入れるなど、自身の興味を引く新しい要素を常に作品に盛り込んだ。従来のファルコム時代のような王道路線の古代サウンドを期待するファンからは少なからず異論も出たが、積極的に新しいゲーム音楽を模索する古代のスタイルはやがて様々な形で結実され、ナムコ×カプコンではキャッチーで洗練された歌物を作り、また2007年には自身が昔からファンであったコナミ社の悪魔城ドラキュラシリーズとのコラボレーション等の試みにより、「ゲームミュージック界のカリスマ」として現在も注目され続けている。
2008年現在、ネットワークMMORPG『ドラゴンボールオンライン』(Windows PC/バンダイナムコゲームス/2008年サービス開始予定)の音楽担当である事が発表されている。
なお、ゲームキャラクターデザイナー及びグラフィックデザイナーの古代彩乃は実妹であり、『イース』や『アクトレイザー』等の多くの作品で兄妹揃って作品製作に参加している。
[編集] 作品
以下は主に楽曲を提供した作品のリストであり、他の作曲者が担当した曲を含む作品もある。
[編集] 日本ファルコム時代の作品
- 1986年 ザナドゥ・シナリオ2
- 1986年 ロマンシア(オープニングのみ)
- 1987年 ザナドゥ(MSX版のみ)
- 1987年 ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー
- 1987年 イース
- 1987年 ソーサリアン
- 1988年 イースII
[編集] フリーになってからの作品
- ザ・スキーム(ボーステック、PC-8801mkIISR版)
- The Return of ISHTAR(ナムコ、MSX2版)
- ザ・スーパー・忍(セガ、メガドライブ版)
- ボスコニアン(電波新聞社、X68000版)
- ノーライフキング(映画、ゲーム音楽シーン)
- アクトレイザー(エニックス / クインテット、スーパーファミコン版)
- ミスティ・ブルー(エニックス、PC-8801mkIISR版)
- 高橋名人の大冒険島(ハドソン、スーパーファミコン版)
- シャープ第一回X68000芸術祭のテーマ
- アルガーナ(M.N.M.ソフトウェア、X1版)
- スライス(M.N.M.ソフトウェア、X68000版)
- スター・ウォーズ アタック・オン・ザ・デス・スター(M.N.M.ソフトウェア、X68000版、楽曲アレンジのみ)
- ベア・ナックル(セガ、メガドライブ版)
- ベア・ナックル2・死闘への鎮魂歌(セガ / エインシャント、メガドライブ版)
- ベア・ナックル3・鉄拳聖典(セガ、メガドライブ版)
- 卍PSY幽記(プライムシステム開発 / 手塚プロ、PC-9801VM/UV版)
- アイ・オブ・ザ・ビホルダー(カプコン、PC-9801VM/UV版)
- アイ・オブ・ザ・ビホルダー(ポニーキャニオン、メガCD版)
- ソニック・ザ・ヘッジホッグ(セガ / エインシャント、ゲームギア版)
- The・GG・忍(セガ、ゲームギア版)
- スラップ・ファイトMD(テンゲン / M.N.M.ソフトウェア、メガドライブ版)
- LOVE GAME'S わいわいテニス(Tears市川ソフト開発、プレイステーション版)
- ストーリー・オブ・トア(セガ / エインシャント、メガドライブ版)
- トア~精霊王紀伝(セガ / エインシャント、セガサターン版)
- バトルバ(ビクター / エインシャント、セガサターン版)
- ゾーク・ワン (翔泳社、セガサターン版、プレイステーション版)
- カルドセプト(大宮ソフト、セガサターン版)
- シェンムー・第一章・横須賀(セガ、ドリームキャスト版)
- 激闘!カーバトラーGO!!(ビクター / エインシャント、ゲームボーイアドバンス版)
- 湾岸ミッドナイト(ナムコ、アーケード版)
- 湾岸ミッドナイト(元気、プレイステーション2版)
- 湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE(ナムコ、アーケード版)
- 湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE 2(ナムコ、アーケード版)
- 湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE 3(バンダイナムコゲームス、アーケード版)
- ドカポン・ザ・ワールド(アスミック・エース、プレイステーション2版)
- カイジュウの島(セガ / エインシャント、ニンテンドーゲームキューブ版)
- NAMCO x CAPCOM (ナムコ / モノリスソフト、プレイステーション2版)
- Dance Dance Revolution STRIKE(コナミ、プレイステーション2)
- うえきの法則・倒すぜロベルト十団!! (バンダイ、プレイステーション2)
- ロストレグナム -魔窟の皇帝- (アーテイン / 娯匠、プレイステーション・ポータブル版)
- 悪魔城ドラキュラ ギャラリー オブ ラビリンス (コナミデジタルエンタテインメント、ニンテンドーDS版)
- 世界樹の迷宮 (アトラス、ニンテンドーDS版)
- 世界樹の迷宮II 諸王の聖杯 (アトラス、ニンテンドーDS版)
- 大乱闘スマッシュブラザーズX (任天堂、Wii版)一部編曲
[編集] 外部リンク
- 株式会社エインシャント(オフィシャル)
- インタビュー(クリエイターズファイル)
- 世界樹の迷宮II・動画インタビュー(11分52秒頃から)(impressTV)
- 世界樹の迷宮IIの楽曲製作秘話を中心に、自身の作曲家としての来歴についてもコメント