刺青の男 (アルバム)
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刺青の男 | ||
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ローリング・ストーンズ の アルバム | ||
リリース | 1981年8月24日 | |
録音 | 1972年11月 - 1981年6月 | |
ジャンル | ロック | |
時間 | 44分23秒 | |
レーベル | Rolling Stones/Virgin | |
プロデュース | グリマー・ツインズ | |
専門評論家によるレビュー | ||
ローリング・ストーンズ 年表 | ||
サッキング・イン・ザ・70's (1981年) |
刺青の男 (1981年) |
スティル・ライフ (1982年) |
『刺青の男』(いれずみのおとこ)(Tattoo You)は、1981年にリリースされたローリング・ストーンズのアルバム。本作は実際には過去の作品の寄せ集めであったにもかかわらず、リリースされると商業的に大きな成功を納め、ストーンズの傑作の一つと見なされる。
『刺青の男』に収録された新曲は「ネイバース」と「ヘヴン」の二曲のみ(1981年4月から6月にかけて録音された)であり、残りは10年前からのアウトテイク、ベーシックトラックのみの曲から再構成された。
「トップス」「友を待つ」の両曲は1972年後半の『山羊の頭のスープ』セッション(両曲のギターはロン・ウッドではなくミック・テイラーが演奏しており、テイラーはその後アルバムのロイヤルティのシェアを受け取った)からのものであった。なお、「友を待つ」には、ジャズの巨匠ソニー・ロリンズも参加。「奴隷」「ウォリード・アバウト・ユー」は1975年の『ブラック・アンド・ブルー』セッション(ビリー・プレストンがキーボード、ギターはウェイン・パーキンス)からである。前述の曲はすべて1979年の『エモーショナル・レスキュー』セッションおよび1981年の本作セッションでオーバーダビングおよびミキシングと編集が行われた。「スタート・ミー・アップ」(元は『ブラック・アンド・ブルーで録音されたレゲエ・ナンバーの「ネヴァー・ストップ」)「ハング・ファイヤー」「リトルT&A」「黒いリムジン」「泣いても無駄」はすべて『エモーショナル・レスキュー』セッションで採用されなかったナンバーである。「スタート・ミー・アップ」は録音当時ボツとなったが、それはキース・リチャーズが前に聞いた別の曲からリフを採用したものと考えたためである(その曲は後に『ブリッジズ・トゥ・バビロン』に収録された「エニィバディ・シーン・マイ・ベイビー」と判明した)。
さらに、「友を待つ」は実際には『スティッキー・フィンガーズ』セッションの初期に録音されたが、アラン・クレインおよびアブコ・レコードへのロイヤリティ支払いを回避するため、『山羊の頭のスープ』セッションで録音されたことにしたという主張がある。
「ヘヴン」はストーンズの曲の中でも変わったラインナップで演奏された。ドラムスがチャーリー・ワッツ、ビル・ワイマンがシンセサイザーとベース、ミック・ジャガーとビル・ワイマンがギターを演奏し、キース・リチャーズとロン・ウッドは参加しなかった。本曲はワイマンがギターを演奏した唯一のストーンズ・ナンバーである。
種々のアイテムを寄せ集めたアルバムだったにもかかわらず、『刺青の男』はロックン・ロール・サイドとバラード・サイドの統一感が取れたアルバムに仕上がった。
シングル「スタート・ミー・アップ」は『刺青の男』リリースのちょうど一週前、1981年8月にリリースされ、大きな反響を得た。その反響は『刺青の男』をチャートのトップに持ち上げるのに十分な物であった。「スタート・ミー・アップ」はストーンズの代表曲の一つとなり、ライヴでも定番の曲となった。『刺青の男』はアメリカで9週間連続1位となり、イギリスでは2位に到達した。その完成度の高さから、リスナー達の反応は好評であり、前作『エモーショナル・レスキュー』を越える作品と絶賛された。「友を待つ」「ハング・ファイヤー」も同様にアメリカでトップ20ヒットとなった。
アルバム・タイトルは当初『刺青 Tattoo.』と言う単純な物であった。ミック・ジャガーは現在も、なぜ「'You'」がつけられたかの手がかりさえ持っていないとする。
1994年に本作はヴァージン・レコードによってリマスターの上再発売された。2002年には「ローリング・ストーン」誌のグレーティスト・アルバム500で211位に選出された。
[編集] 収録曲
- スタート・ミー・アップ - Start Me Up 3:32
- ハング・ファイヤー - Hang Fire 2:21
- 奴隷 - Slave 6:33
- リトルT&A - Little T&A 3:23
- 黒いリムジン - Black Limousine (Mick Jagger/Keith Richards/ Ron Wood) 3:31
- ネイバーズ - Neighbours 3:31
- ウォリード・アバウト・ユー - Worried About You 5:17
- トップス - Tops 3:45
- ヘブン - Heaven 4:22
- 泣いても無駄 - No Use In Crying (Mick Jagger/Keith Richards/Ron Wood) 3:25
- 友を待つ - Waiting On A Friend 4:34
- 1. 2. 4. 5. 10.は1979年の『エモーショナル・レスキュー』セッションから、3. 7.は1975年の『ブラック・アンド・ブルー』セッションから、8. 11.は1972年の『山羊の頭のスープ』セッションから。
[編集] ワールド・ツアー
本作リリース後、北米ツアーが1981年9月25日のフィラデルフィア、ジョン・F・ケネディ・スタディアム公演から始まる。ツアー前のウォームアップ・ギグはマサチューセッツ州ウースターの小クラブ、サー・モーガン・ケイヴで「ブルー・マンディ・アンド・ザ・コックローチズ」の偽名で行われた。北米ツアーは12月19日のバージニア州ハンプトン・ローズのハンプトン・コロシアム公演で終了する。オープニングはデューク・エリントンの「A列車で行こう」、エンディングにはジミ・ヘンドリックスの「星条旗」が流された。本作からは「スタート・ミー・アップ」「ハング・ファイアー」「リトルT&A」「黒いリムジン」「ネイバース」「友を待つ」、前作『エモーショナル・レスキュー』から「レット・ミー・ゴー」「氷のように」が演奏された。また、オールディーズ・カヴァーとしてエディ・コクランの「トゥエンティ・フライト・ロック」、スモーキー・ロビンソンの「ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー」が演奏された。本ツアーの様子は収録され、ハル・アシュビーの監督で『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』として公開された。翌年にはヨーロッパ・ツアーを開始する。スポンサーはTDK。ツアーは5月26日、スコットランド、アバディーンのキャピトル・シアター公演から始まり、7月25日のリーズ、ラウンドヘイ・パーク公演で終了した。セットリストは前年の北米ツアーと大きく変わらなかったが、本ツアーではジェリー・リー・ルイスの「シャンティリー・レース」が演奏された。