先史時代
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先史時代(せんしじだい)とは、歴史における時代区分の1つ。一般的には文献史料がまだ存在しない時代を指す。
[編集] 概要
先史時代は文字の発生と記録を残すことが行われる以前の歴史・時代の区分であるが、文字文化の進展の度合いが地域によりまちまちであるため、特定の年代をさす用語ではない。地域によっても文字の使用と記録の発生した年代はまちまちである。
なお、おそらくは記録を残したのではあろうが、後世にその記録が継承されなかったか、あるいは口語伝承の形で歴史が伝えられ、後世の歴史家が断片的な情報を収集して記録したような文明もあり、先史という区分はしばしば曖昧である。こと文化が断絶し、その継承者が途絶してしまった場合は歴史の記録も失われがちである。
また、文字文化がほとんど発達しなかった地域でも天文学や建築技術など他の分野が高度に発達した例もみられ、必ずしも文字史料の有無で時代を区切るべきでないという考え方もある。いわゆるロストテクノロジー(失われた技術)のように、文明が後退して後世に誤って解釈されたケースもあり、先史という区分を設けての評価には、正確性に疑問が示されることもある。
こういった歴史を記録しなかったか記録が失われた文明は、後世の考古学の分野においても遺物の発掘などによって調査されているが、これらは様々な技術が投入され精査されてはいるものの、推測と調査と新たな物証による確認作業の過程では、過去の学説が否定されるケースも発生している。
有史以降の歴史も、これを記録した側の観測問題にも絡んで曖昧性を含み、一概に残された歴史を正確な記録として解釈するわけにも行かない点で、先史・有史の境界も曖昧である。考古学調査で新たな資料が見出されることも多く、その調査は21世紀に入っても続けられている。