レーザー推進
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レーザー推進( - すいしん)とは、そのエネルギー源として外部からのレーザーまたはメーザーによるエネルギー供給を用いる、宇宙船の推進方法。また、同様の発想で、外部からの荷電粒子等のビームを用いるビーム推進というアイデアもある。
宇宙船本体にエネルギー源を搭載しないため、船の軽量化や、燃料の量に依存しない飛行も可能となる。だが、実用化には大出力レーザーの開発や、精度の高いポインティング技術が必要となる。
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[編集] レーザー推進の種類
レーザー等によって宇宙船を推進させる方法として、以下のような方式が提唱されている。また、その他にレーザー等によって電力を供給し、電気推進で推進する案なども考えられている。
[編集] 熱による推進
レーザー/メーザーによって推進剤、または周囲の大気を加熱して、その膨張を利用する方式。レーザーロケットと呼ばれることもある。このタイプの宇宙船としてはライトクラフトが挙げられ、このタイプの推進方法自体をライトクラフトと呼ぶこともある。
- CWレーザー推進
- 連続発振型 (Continuous Wave) のレーザーを用いる方式。
- RPレーザー推進
- パルス発振型 (Repetitively Pulse) のレーザーを用いる方式。
- 水膜方式
- 上記各種レーザー推進の対象となる物体を濡らしておくことで、対象物表面で水蒸気爆発を起こし推進力を大幅に増強する手法。日本人の発明による。
[編集] 光圧による推進
太陽帆(ソーラーセイル)にレーザーを照射し、その光圧により推進する方式。同様の発想で磁気帆(マグネティックセイル)に荷電粒子ビームを照射するという案もあり、こちらはマグビームと呼ばれる。
[編集] 恒星間飛行への利用
十分に収束率の高いレーザーを発生させることができれば、恒星船の動力源として利用できる可能性もある。ただし目的地の星系にレーザー送信施設がない場合、どうやって減速するかという問題が生じる。
物理学者でSF作家でもあるロバート・L・フォワードは、目的地に近づくとソーラーセイルの外周部を宇宙船から切り離し、外周部セイルで反射したレーザーを逆方向から内周部セイルに当てて減速するというアイデアを提唱している。
[編集] フィクションに登場するレーザー推進宇宙船
[編集] SF小説
- ラリー・ニーヴン / ジェリー・パーネル『神の目の小さな塵』The Mote in God's Eye - レーザーで推進する光帆を持つ異星人の宇宙船を描写している。
- ロバート・L・フォワード『ロシュワールド』The Flight of the Dragonfly - レーザー推進の光帆による恒星間移動がテーマ。
- 野尻抱介『太陽の簒奪者』 - 異星人が太陽系へナノマシンを送り込み、減速用レーザー送信施設を建設させる。
- 笹本祐一『ブループラネット』 - 終盤にて、帆を張った小型探査機群をレーザー推進で太陽系外惑星へ向けて送り出すシーンが描写されている。
[編集] 漫画・アニメ
- 星野之宣『2001夜物語』 - 終末を迎えるベテルギウス系の惑星上に独特の進化を遂げた植物が、生体組織によりレーザーを発してレーザー光帆推進により宇宙へ播種する。
- オーディーン 光子帆船スターライト - 主推進機関は別にあるが、補助としてレーザー帆走も可能。
- 機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY - ペガサス級「アルビオン」は、核融合の他、外部からのレーザーで推進剤を加熱、加速することもできる。月面からの離脱時に使用。
- 機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER - 深宇宙探査機「スターゲイザー」は、太陽風を「ヴォワチュール・リュミエール」と呼ばれるソーラーセイルに受けることで推進力としているが、必要に応じて母船からのレーザー「プロパルジョン・ビーム」を受けて推進することが出来る。
- MOONLIGHT MILE - 厳密には技術そのものは確立されていない。デブリの海に取り残された中破戦艦「ハッセルホフ」の推進ノズルにむけてレスキュー艦「ミネルバ」のGDLレーザー砲を長時間放射する事で押し出すために使われた。
[編集] 関連項目
- ロケット
- ロケットエンジンの推進剤
- 電気推進
- 太陽帆
- マグネティックセイル
- 原子力推進
- レーザー飛行機