モーリス・ルブラン
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モーリス・ルブラン(Maurice Leblanc, 1864年11月11日 - 1941年11月6日) は、フランスの小説家。紳士的な振る舞いの泥棒にして探偵「アルセーヌ・ルパン(Arsène Lupin)の生みの親として良く知られる(和訳版では「ルパン」の表記が一般的だが、よりフランス語の発音に近い「リュパン」という表記のものも存在する)。ルブランの「ルパン」は、しばしばイギリスの作家コナン・ドイルの生んだ「シャーロック・ホームズ」と対比される。
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ルブランはフランス・ノルマンディー地方の都市ルーアンで生まれた。数ヵ国で学び、ロースクールを落第後、パリに居を構えて純文学系の心理小説を書きはじめた。ルブランのこの時期の小説はフローベールやモーパッサンらに影響され、文壇でこそ上々の評判を獲得したが、商業的には不成功に終わる。
転機はルブラン40代のときに訪れる。友人の編集者ピエール・ラフィットに依頼されて嫌々書いた「ルパン逮捕される」が大評判を博したのだ。以来、ルブランは次々とルパンものを書き続けることになる。明らかにコナン・ドイルの一連のホームズ作品の影響を受け、またそれに対する反動として描かれた、いたずら好きで魅惑的なルパンは驚くべき成功を収め、ルブランは名声と富を得た。1907年までにルパン小説は短編としての形式を脱し、評判と売り上げが上々であったため、結果的にルブランはその後、作家としての経歴と情熱のほとんどをルパンシリーズへ注ぎ込む事になった。
コナン・ドイルはホームズシリーズの成功に対してむしろ困惑し、生活を妨害されているようでさえあったという。またドイル自身も、自分が犯罪小説で成功することを、より「尊敬に値する」文学的情熱から遠ざけるものと見ていた、ともいわれている。
それと同様、ルブランももともと純文学・心理小説作家を志していた事もあり、犯罪小説、探偵小説であるルパンシリーズで名声を博する事に心を痛めていたといわれる。ドイルがホームズをライヘンバッハの滝に落としたのと同様、ルブランもルパンを1度自殺させている(「813」)。また、「ルパンが私の影なのではなく、私がルパンの影なのだ」という言葉などにもその苦悩の跡が見られる。が、晩年になってその自分の経歴も受け入れられるようになったと思われ、「ルパンとの出会いは事故のようなものだった。しかし、それは幸運な事故だったのかも知れない。」との言葉も残している。
ルブランは文学への貢献(直接の理由は“国民的英雄・ルパン”の創造)によってレジオンドヌール勲章を授与され、1941年にペルピニャンで亡くなった。 亡くなる数週間前に、「ルパンが私の周りに出没して何かと邪魔をする」という趣旨の被害届を警察署に出し、そのため警察官が二十四時間態勢で警備し、最期の日々の平穏を守った。
クロード・モネの絵で有名な大西洋岸の町エトルタには彼の住居を基にしたモーリス・ルブラン記念館、通称「アルセーヌ・ルパンの隠れ家」がある。[1]またモネの絵の題材にもなった有名なエトルタの岸壁はその頂上に登ると崖の内部に潜れるようになっており、奇巌城で出てきた暗号がそのまま金属プレートで掲示されている。
[編集] 作品
[編集] ルパンシリーズ
アルセーヌ・ルパンを参照。
[編集] その他の小説
- "Les Trois Yeux"(1920年)
- 『三つの眼』
- "Le Formidable Événement"(1921年)
- 『驚天動地』
- 『ノー・マンズ・ランド』
- "Le Cercle rouge"(1922年)
- 『赤い輪』
- "Dorothée, Danseuse de Corde"(1923年)
- 『女探偵ドロテ』
- 『綱渡りのドロテ』
- "La Vie extravagante de Balthazar"(1925年)
- 『バルタザールの風変わりな毎日』
- 『バルタザールのとっぴな生活』
- "Le Prince de Jéricho"(1930年)
- 『ジェリコ公爵』
- "De minuit à sept heures"(1932年)
- 『真夜中から七時まで』
- "Le Chapelet rouge"(1934年)
- 『赤い数珠』
[編集] 余談
モーリス・ルブランの妹ジョルジェット・ルブランは、女優・歌手として活躍し、一時期モーリス・メーテルリンクの愛人にもなった。メーテルリンクの戯曲「ペレアスとメリザンド」をオペラ化したドビュッシー作曲の同名作品の初演の際、彼女の起用を巡って原作者と作曲家の両名が不和になったことが知られている。
[編集] 外部リンク
- 伝記。 書誌学(フランス語)
- ルブラン モーリス:作家別作品リスト(青空文庫)
[編集] 関連項目
- アルセーヌ・ルパン (「ルパン」シリーズの一覧)