モン・ヴァントゥ
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モン・ヴァントゥ (Mont Ventoux) は、フランス南部、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏にある山。標高1909m。「プロヴァンスの巨人」という異名を持つ。vent はフランス語で「風」を意味し、その名の通りに山頂部は風が強く、ミストラルの季節ともなると45m/sを越す突風が吹き荒れ、山頂へ至る道路が閉鎖されることも間々ある。
この山はアルプスにもピレネーにも属さず、リュベロン山地の西方に立つ独立峰である。ちょうど西側山麓の丘陵地帯にはダンテル・ド・モンミライユがある。山頂部は木立どころか潅木すらなく、むき出しの石灰岩が転がる荒涼とした景観が広がる。これは数世紀前から造船のために木が切り出されてきた結果である。この不毛のピークは、遠方から望むと一年中雪を抱いているかのように錯覚させる。ローヌ渓谷を睥睨する孤立した姿はこの地域一帯を威圧し、晴天時には何マイルも彼方から観望を可能にする。山頂からの眺望は期待違わず素晴らしい。
[編集] ツール・ド・フランス
自転車ロードレースの最高峰「ツール・ド・フランス」では、この山は最高難度の山岳ステージの舞台として知られ、幾多の伝説に彩られてきた。1951年に初めてルートに登場してから現在までに12回を数え、頂上へ至る20kmの道のりの平均斜度は 7.6% もある。ツールにおいて幾多のドラマを生み出してきたこのステージは、世界中のレース・ファンを魅了している。
1967年7月13日、イギリス人の著名なレーサー、トム・シンプソンが、服用していたアンフェタミンとアルコール、そして熱中症の複合作用によりレース中に死亡した。これがモン・ヴァントゥに悪評を招きよせ、今日にいたるまで「死の山」、「魔の山」と形容される所以である。山頂直下にはシンプソンの記念碑が建立されており、自転車ファンの聖地となっている。1970年には、かのエディ・メルクス(ロードレース史上に冠絶する戦績を誇る、万人が認める最強選手)が、この峠を含むステージの優勝は取ったもののリタイヤ寸前にまで追い込まれている。彼はゴール後に酸素吸入を必要とするほどのダメージを受けていたが、その後のステージでも総合首位を守り、結局は総合優勝を勝ち取った。