ミドリ十字
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株式会社ミドリ十字(―じゅうじ、Green Cross Corporation)は、かつて存在した日本の医薬品メーカー。
[編集] 概要
関東軍防疫給水部731部隊で活躍した内藤良一(元陸軍大佐)によって、1950年11月に民間血液銀行日本ブラッドバンクとして設立された。創立メンバーや役員に731部隊関係者が多いことでも有名。のちに薬害エイズ事件を引き起こした業界トップ企業としても知られ、また薬害肝炎の原因となったフィブリノゲン製剤の主要製造企業としても知られてもいる。
元厚生省薬務局長だった松下廉蔵らを迎えることにより、急成長を遂げた。1964年、株式会社ミドリ十字に商号を変更。人工血液製剤製造業界のトップ企業となる。1967年、赤痢予防薬の人体実験を陸上自衛隊員を使って行い、1089人中、577人に急性食中毒を起こさせた。また、人口血液製剤の承認を求める際に旧厚生省に提出したデータに改竄の跡があり、その調査の過程で瀕死の女性患者に人工血液を未承認のまま投与する人体実験をしていたことが明らかになった。
内藤良一の死後、松下廉蔵(厚生省薬務局長からミドリ十字社長)など多数の厚生省出身の天下り官僚らにより経営の実権は握られることとなった。企業献金も主に社労族議員であった橋本龍太郎をはじめとした与党議員や、共産党、社会党など野党議員にまでのぼり、政・財・官の癒着構造が、当時血友病患者らによってエイズ感染の危険性を指摘され始めたにもかかわらず、非加熱製剤の使用を許容させ、また当時は加熱製剤自体が新商品であった要因も加わり、ミドリ十字をはじめ、化学及血清療法研究所、バクスタージャパン(日本トラベノール)、日本臓器製薬、カッタージャパン(→バイエル薬品→バイエル社)など主だった企業による薬害エイズ事件が引き起こされることとなった。
なお薬害エイズ事件など一連の問題で経営が悪化し、1998年に吉富製薬に合併され(事実上救済合併)、法人格は消滅した。度重なる合併の結果、現在は田辺三菱製薬となっている。