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フォーミュラ・ニッポン - Wikipedia

フォーミュラ・ニッポン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

Lola B351(2005年 井出選手の車両)
Lola B351(2005年 井出選手の車両)
Lola FN06(B06/51)(2007年 クルム選手の車両)
Lola FN06(B06/51)(2007年 クルム選手の車両)

フォーミュラ・ニッポンFormula Nippon)は、自動車レースの1カテゴリー。正式名称は全日本選手権フォーミュラ・ニッポン(JAF略称はJAF-F3000、レース格式は国際)。フォーミュラカー(オープンホイール)を使用した四輪レースであり、日本独自のカテゴリーである。レース専門誌やファンの間では「Fポン」・「FN」と略されることが多い。“日本一速い男決定戦”とも呼ばれる日本最速のレースである。

目次

[編集] 概要

1996年に日本レースプロモーション(JRP)を運営母体とし、日本自動車連盟(JAF)公認の下、全日本F3000選手権を引き継ぐ形でスタートした。 当時、海外のF3000がレギュレーション変更によりワンメイク化されたのに対し、国内レース関係者はこれを良しとせず、発足当初は従来のF3000レギュレーションを継続、1999年より新しい国際F3000の安全基準のみを取り入れ、車両規則は独自のレギュレーションを規定した。

シリーズの運営母体であるJRPはフジテレビが大株主であり、設立以来フジテレビから社長が派遣されシリーズ運営を行ってきたが、2004年7月に大規模な役員の入れ替えが行われ、ツインリンクもてぎ取締役の野口幸生が社長、元F1ドライバーの中嶋悟が会長にそれぞれ就任した。

[編集] マシン

発足当初は旧全日本F3000を受け継ぐ形で、レイナードローラ童夢・Gフォース(現:パノス)などがシャシーを供給していたが、JRPがフォーミュラ・ニッポン専用マシンの供給を打診したところ、ローラ・レイナード・Gフォースの3メーカーが専用シャシーの供給を開始した。しかし、ローラとGフォースの戦闘力不足もあってレイナードの実質ワンメイク状態へと年を経るごとに変化した。
ところが2002年にレイナードが倒産したため、2003年からローラのワンメイクとなっている。なお2006年は3年に一度のシャシー更新年に当たり、引き続きローラ製の新型シャシー ローラ「FN06(B06/51)」が使われることになった。この「FN06」は、前年度まで使用されていた「B351」の正常進化形であり、モノコックについては変更部が認められないものの、新エンジンの搭載に伴う出力の増大と低重心化に対応して各ユニットを再設計している。
またこれまで変速にはシーケンシャルシフトが採用されていたが、「FN06」のステアリングが極端に重いことや、よりハイレベルな攻防を可能にするため2009年に予定されていたパドルシフト(ザイテック製)の導入を2008年に前倒しすることが決定している。
TOYOTA RV8J(2006年仕様)
TOYOTA RV8J(2006年仕様)
旧全日本F3000と同様に3,000cc V型8気筒(9,000rpmでリミッターが作動)がそのまま用いられ、無限(現:M-TEC)のMF308コスワースDFV(一時期ACも使用された)、ジャッドのKVなどが当初は使用されたが、コスワースとジャッドは2年足らずで淘汰されてしまった。その結果、1999年~2005年までは無限・MF308の事実上ワンメイクとなっていた。
しかし、その無限・MF308も供給を続ける事が困難になってきたため、2006年からトヨタホンダが、インディ・レーシング・リーグ(IRL)用のエンジンをベースとした専用のエンジンを設計(3,000cc V8は変わらず、リミッターの設定は10,300rpmに引き上げられた)及び供給することとなった。
2006年から2008年のエンジン使用勢力図は、日産系のIMPUL等がトヨタエンジンを選択したり、トヨタ系の新規参入チーム(TOM'SINGING 等)が増えた事もあって、トヨタエンジンを使用するチームが多数派を占めている。なお、各チームは3年間同一メーカーのエンジンを搭載することに決められている。成績面においては、2007年シーズン序盤までは特に燃費面でトヨタエンジンの優位が目立ち、結果として上位の成績をトヨタユーザーが独占する状態になっていたが、シーズン中盤からはホンダエンジンを搭載するNAKAJIMA RACINGの巻き返しが見られた。またJRPは以前から、両社が供給するエンジンに明らかな性能差が確認された場合に性能調整措置を導入する可能性を示唆している。
初年度はブリヂストン横浜ゴムが供給していたが、レース費用低減を図るためワンメイクとすることとなった。コンペティションの結果、1997年よりブリヂストンが独占供給を行っている。尚、現在はレギュレーションでタイヤメーカーは1メーカーのみと定められている。
土曜日の予選から日曜日決勝までに一人のドライバーが使えるタイヤはドライ、ウェット各4セットずつと定められている。ドライタイヤにはスタンダードコンパウンドとソフトコンパウンドの2種類があり、もてぎ以外ではスタンダードが供給される。なお、2007年シーズン途中に2008年スペックのタイヤが前倒しで供給され、耐久性、グリップともに向上したタイヤが用いられることとなった。ウェットタイヤは1パターンのみであるが「ステルスパターン」と呼ばれる溝により、磨耗が進むと路面との接地面積が増え、インターミディエイト的な使用も可能となる。

ハードがワンメイク状態の上に、レースが開催されるサーキットが限定されているため、本来であれば車両の性能差は出にくいはずであるが、シャシーの空力特性のスイートスポットが狭い等の理由から、現時点ではハードウェアの差が大きく、特定チームが成績の上で一歩抜きん出ている。

[編集] 2009~2011 JRP中期計画

JRPは、2007年8月26日に「2009~2011 JRP中期計画報告会」を開催し、2009年以降の基本方針および新規導入車両を発表した。これはシリーズのさらなる活性化を目指して、新たな取り組みを開始するものである。

基本方針
  • 世界から目標とされるシリーズの構築
  • ファンの満足度アップとなる、最も面白いレースの提供
  • 新シャシー、新エンジンの導入
  • 新規レースの調査・研究(市街地レース、オーバルレース)
  • ハイブリッド、水素、バイオエタノールなどの環境に配慮したエンジンの研究
  • 大会数は最大で国内10戦・海外1戦とし、パシフィックエリア開催を目指す
09シャシーのデザインSwift Engineering, Inc
09シャシーのデザイン
Swift Engineering, Inc
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09シャシーのデザイン
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09シャシーのデザインSwift Engineering, Inc
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09シャシーのデザインSwift Engineering, Inc
09シャシーのデザイン
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車両(スウィフト・エンジニアリング社製)
  • 日本独自のカテゴリーとして、今までにない斬新なデザインの追及(先進性と変化)
  • よりスリリングなレース展開が可能な車両
  • 最低3年間使用可能な安全性と耐久性の確保
シャシー新旧比較
新型車両 現行車両 備考
車両最大幅 2,000mm 1,800mm 車両中心線からタイヤ外側まで実測で1,000mm以内
車体最大幅 1,600mm 1,450mm ウイングを除く、ボディワークの最大幅
フロントウイング幅 1,900mm 1,450mm
リヤウイング幅 1,150mm 1,000mm
車両重量 670kg 660kg ドライバー搭乗時
燃料タンク容量 115リットル 135リットル 車体サイドに設ける給油口から給油可能な最大値
ミッション パドルシフト シーケンシャル 2008年よりパドルシフトは前倒しで採用
ブレーキ カーボン スチール
フロントタイヤ 265/55R13 235/55R13
リヤタイヤ 325/45R13 340/620R13
エンジン
  • 目標出力600hp以上
  • 3.4リッター、V型8気筒
  • 最低重量120kg
  • 3レースで使用できるエンジンは1基とする
エンジン新旧比較
新型エンジン 現行エンジン 備考
排気量 3,400cc 3,000cc
出力 600/hp+α 550/hp
気筒数 V型8気筒 V型8気筒 バンク角90°
吸気 自然吸気 自然吸気
重量 120kg 127kg エアボックス、エアフィルター込み
回転数制限 10,300rpm 10,300rpm
回転数制限方式 ECU ECU

上記の2009年シャシー及びエンジンのスペックを見る限り、ハード面での大幅なパフォーマンスアップが期待される。また、エンジンに関しては2009年からのSUPER GTのGT500クラスと基本設計は同じものを使用する。

[編集] レース形態

2000年からレース途中のタイヤ4輪交換を義務付ける事で、レース中のエンターテイメント性を高め、チームとドライバーにはレース戦略の構築を求めるようになった。2003年からローラのワンメイクになるにあたり、レース距離は変えずに「再給油」を導入したが、レース途中で再給油せずにレースを走りきってしまう場合があったため、2004年からレース距離をそれまでの200kmから伸ばし、さらに2005年からはF1とほぼ同じ「300km」とした。これにより無給油でレースを走りきれないようになったはずだったが、実際には無給油で走りきってしまうチームが続出した。また、ピット作業の人数を制限したこと、後にタイヤ4輪交換の義務を無くしたことで、前後いずれかのみ、または左右いずれかのみの2本を交換する事でピットインの時間を短くする戦略も生まれた。

2004年にはマレーシアセパンサーキット)で初の海外戦を行ったが、現地のオーガナイズに問題が多く、通常国際格式で行われるはずのレースがなぜか準国際格式で行われたほか、レースの賞金の支払を巡るトラブルも発生した。2005年もセパンでのレース開催を予定していたが、現地オーガナイザーとの交渉が決裂し開催は中止されている。2000~2002年にはスカラシップとしてアジアのドライバーをシリーズに招き入れるなどの制度を実施していたが、その試みは3回のみで中断している。

2007年にはレース距離を最短230kmから最長300kmまで幅を持たせたり、ピットインの義務づけをなくしたりとレースにバラエティをもたせる試みがなされた。また第3戦ツインリンクもてぎではスペシャルステージ制の予選が行われた。

2008年からは従来の1レース制に加え2レース制の導入が決定している。2レース制は第5戦鈴鹿サーキットと第6戦ツインリンクもてぎ、そして第7戦富士スピードウェイで予定されている。なお2レース目のグリッドは第1レースの上位8台がリバースグリッド、9位以下は第1レースの着順のままとなる。また2レース制の導入によりポイントシステムが変更された。予選システムに関しても従来の45分間×2セッションの予選やスペシャルステージ制に加えて、F1でも採用されているノックアウト方式の予選が導入されることになっている。

[編集] 運営に関する論議

これまでの全日本F2及びF3000は、中嶋悟・鈴木亜久里片山右京といった日本人だけでなく、エディ・アーバインハインツ=ハラルド・フレンツェンなど多数のF1ドライバーを輩出したカテゴリーであり、ヨーロッパ(=FIA)との地理的な関係や、複数のシャシーメーカーとタイヤメーカー(ブリヂストン、横浜ゴム、ダンロップなど)が使用されるなど、規格は欧州的でも日本独自の世界観があったため、1996年からの新F3000レギュレーション移行に難色を示す参加チームが続出したことが「フォーミュラ・ニッポン構想」の発端である。

しかし、日本独自のレギュレーションと興行の必要性についてはおおよその一致が見られたものの、細部については激烈な議論が交わされており、後々までその遺恨が尾を引いている。

  • 旧F3000レギュレーションを尊重し、各チームのマネジメント力、エンジニア力の競争を重視する。そうしないと「競争性」が失われるか、コスト上昇の一途をたどるばかりである。また、若いドライバーの育成はモータースポーツ文化の醸成のためには必要であり、これを支援する。(ノバエンジニアリング森脇基恭など)
  • この際、各チームがそれぞれのコンストラクト力を競う形にし(その方がマネジメント力、エンジニア力も培われる)、クルマの競争を前面に出す。「日本のクルマ」が競わないから、モータースポーツ文化が根付かない。(童夢・林みのるなど)

といった主張がみられ、概ね前者が主流となり、後に童夢はシリーズから撤退した。

また、「ドライバーやバトルは高レベル」と評されるものの、興行としては現在に至るまで苦戦続きである。

フジテレビは「フォーミュラ・ニッポン構想」を支援し、特に「スタードライバーの創出」に力を注いだ。特に初年度は、当時大きな期待を寄せられていた高木虎之介のチャンピオン獲得を大いに煽っていたきらいがあり、「偏向報道」のレッテルを貼られた。ドライバー育成重視については「ドライバーを育成しても、残留して同レースを盛り上げることをしないわけだから(特に初期はF1やチャンプカー・IRL等へのステップアップを奨励していた)、ドライバーばかりに目を向けての運営には無理がある」との批判がある。

近年では、当カテゴリーを経由してF1にステップアップする者が激減し、また、佐藤琢磨中嶋一貴らのように海外に活動拠点を移し、トップフォーミュラを目指す若手ドライバーが続出していること(実際トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム(TDP)のように、自動車メーカー自身が海外へのドライバー派遣を積極的に推し進めている)、さらにSUPER GTの興隆が著しいことなどから、日本レース界においてのトップカテゴリーの評価が揺らいでいる。効果的な運営の見直しに迫られている。

[編集] スポンサー

発足時より「シリーズパートナー」と呼ばれる企業がスポンサーとなってシリーズを支援している。当初6社でスタートしたが年々減少し2007年に2社となった。2008年からトヨタが加わることになった。
2005年からは、新たに「シリーズサポーター」と称する企業が支援に加わっている。

1997年のシリーズ後半(第6~10戦)に、ソニー・コンピュータエンタテインメント冠スポンサーとなり、名称も「全日本選手権プレイステーション フォーミュラ・ニッポン」となった。シリーズが発足して以降、冠スポンサーが付いたのはこの時のみである。

シリーズパートナー
シリーズサポーター
  • 奥の松酒造(2005年~2007年)- 同社のスパークリング日本酒「奥の松 純米大吟醸FN」が、2000年~2007年まで表彰式のシャンパンファイトに使用された。
  • オートバックス(2006年~ )
  • 人気酒造(2008年)- 2008年から同社のスパークリング日本酒「人気一 スパークリング純米大吟醸」が表彰式に採用された。
冠スポンサー
  • ソニー・コンピュータエンタテインメント「プレイステーション」(1997年 第6~10戦)

[編集] テレビ中継

JRPの親会社であるフジテレビが放映権を持ち、1996年のシリーズ発足から2005年までフジテレビ系列で全戦について決勝当日の深夜に録画中継が行われていた。しかし、視聴率の低迷からフジテレビとJRPは、地上波での全戦録画中継を2005年限りで打ち切ることで合意。代わりにモータースポーツに関する総合情報番組として『モタ・スポ!』を開始し、その中でフォーミュラ・ニッポンに関する情報を取り扱うこととなった。

CS放送スカイパーフェクTV!e2 by スカパー!)やケーブルテレビでは、J SPORTSによる決勝の生中継が行われている。2005年まではフジテレビの地上波テレビ中継用の実況音声が用いられていたほか予選も中継されていたが、フジテレビの地上波中継打ち切りに伴い、2006年からはサーキットの場内FM放送「Pit-FM」などの実況音声を用いる形に変更され、予選の中継も廃止された。この他、フジテレビ739では2004年から2008年3月まで専門情報番組『フォーミュラ・ニッポンTV』、BSフジでは2007年から『Fナビ!』が放送されている。
2007年からは現地映像をJ SPORTSのスタジオで受け、実況・解説を付けるスタイルをとっている。そのため解説者が中継のない土曜日の予選を現地で観戦した場合、日曜日はサーキットを離れてスタジオに入ることになる。

[編集] イメージソング

芸能プロモートの一環としても活用され、様々なグループやアーティストの楽曲がシリーズ毎のイメージソング(もしくはテーマソング)としてテレビ中継などで使用されたり、サーキットでミニライブが行われた。ただ、そういった活用のされ方に批判的な意見もあった。童夢の林みのるは「いつからお姉ちゃんたちを売り出すための場になってしまったのか」と嘆いたという。2005年以降、イメージソング及びテーマソングは制定されていない。

  • 大和撫子スーパースター/B'dash(1996年)
  • DANSICK/BRANDIE(1997年)
  • Hi/B'z(1998年)
  • YOU MAY DREAM/GLAY(1999年)
  • せつなさよりも遠くへ/SIAM SHADE(2000年)
  • You'll be the champion/TUBE(2001年~2003年)
  • Wheel of fortune/T.M.Revolution(2004年)

[編集] 歴代チャンピオン

チャンピオン 国籍
1996年 ラルフ・シューマッハ ドイツ
1997年 ペドロ・デ・ラ・ロサ スペイン
1998年 本山哲 日本
1999年 トム・コロネル オランダ
2000年 高木虎之介 日本
2001年 本山哲 日本
2002年 ラルフ・ファーマン アイルランド
2003年 本山哲 日本
2004年 リチャード・ライアン 北アイルランドの旗 北アイルランド
2005年 本山哲 日本
2006年 ブノワ・トレルイエ フランス
2007年 松田次生 日本

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

フォーミュラ・ニッポン

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