ティル・オイレンシュピーゲル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ティル・オイレンシュピーゲル(Till Eulenspiegel)は、14世紀に北ドイツで存在していたとされる、伝説の奇人(トリックスター)。様々ないたずらで人々を翻弄したが、最期は病死したとされる。リヒャルト・シュトラウスの交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』の題材であり、その作品内では絞首刑にされている。彼の最期の地とされる北ドイツの都市メルン(Moelln)には彼の銅像や博物館が存在している。
かつて人々が口伝えに物語ってきた彼の生涯は、15世紀にドイツで民衆本にまとめられ、出版された。このため、彼の言動はエピソードごとに首尾一貫しておらず、様々な地方・語り手によって伝承されたエピソードの編纂であることがうかがえる。ここで繰り広げられる彼のいたずら話やとんち話は、日本でいうところの一休さんのように非常に有名である。民衆本の中でも、オイレンシュピーゲルが絞首刑を言い渡されるが、とんちを利かせてまんまとこれから逃れる場面がある。
各章の頭の文字がアクロスティックになっており、その中に"ERMAN B"という文字列が見られることなどから、著者はヘルマン・ボーテだと考えられている。[1]
「オイレンシュピーゲル」の名は「フクロウと鏡」という意味なので、上図の民衆本の表紙でもフクロウと鏡を手にした姿で描かれている。が、口承で使われた低地ドイツ語の方言では「ウル・デン・シュパーゲル」と発音され、これは「尻(けつ)を拭け」という意味であり、この名自体が駄洒落になっている。民衆本の中でも、オイレンシュピーゲルが「俺の尻を(拭かなければならないほど汚いか、汚くないか)とっくりと見てみろ」と開き直る場面がある。
[編集] 参考文献
- ^ 阿部謹也訳「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、岩波文庫、1995年、ISBN 4003245512