クイーン・エリザベス級戦艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クイーン・エリザベス級戦艦 | |
---|---|
艦級概観 | |
艦種 | 戦艦 |
艦名 | |
前級 | アイアン・デューク級戦艦 |
次級 | リヴェンジ級戦艦 |
性能諸元 | |
排水量 | 常備:27,500トン 1944年:基準:32,930トン、満載:38,450トン |
全長 | 196.8m、水線長:195.3m |
全幅 | 27.6m、31.7m(1944年) |
吃水 | 8.8m 1944年:9.5m(基準時)、10.5m(満載時) |
機関 | 竣工時: バブコック&ウィルコックス製重油石炭混焼缶24基 (ウォースパイトはアドミラリティ製重油石炭混焼缶24基) パーソンズ式オールギヤードタービン4基4軸推進 75,000hp 石炭100トン/重油650トン 1944年: アドミラリティ製重油専焼三胴缶8基 パーソンズ式オールギヤードタービン4基4軸推進 80,000hp 重油3,570トン |
最大速力 | 25ノット 1944年:23ノット |
航続距離 | 10ノット/4,500海里 1944年:12ノット/7,400海里 |
乗員 | 925~951名 1944年:1,124名 |
兵装 | 竣工時: 38.1cm(42口径)連装砲4基 15.2cm(45口径)単装砲16基 7.6cm(45口径)単装高角砲6基 53.3cm水中魚雷発射管4基 1944年 38.1cm(42口径)連装砲4基 Mrk'1&3 11.4cm(45口径)連装高角砲10基 2ポンド八連装ポンポン砲4基 エリコン20mm機銃連装20基+同単装14基 53.3cm水中魚雷発射管4基 |
装甲 | 舷側:330mm 甲板:76mm(1944年:127mm) 主砲塔: 330mm(前盾)、-mm(側盾)、-mm(後盾)、-mm(天蓋) バーベット部:254mm 司令塔:102mm(1944年) |
艦載機 |
クイーン・エリザベス級戦艦 (Queen Elizabeth class Battleship) は、イギリス海軍の戦艦5隻の艦級。
目次 |
[編集] 経緯
[編集] コンセプト
超弩級戦艦「オライオン級」でドイツ海軍に差をつけたイギリス海軍が次なる布石として、既存の超弩級戦艦を火力で上回る強力な戦艦を配備することによってドイツ海軍への圧倒的優位を確立することを主眼において設計された。本級が建造されたときには、日米の戦艦の主砲で14インチ(36.5cm)砲を採用しており、ドイツもマッケンゼン級で口径35cmを計画していることから、それらを凌駕するものとして1インチ上の優位を目指して「15インチ(38.1cm)Mark.1」が選択された。当然、設計段階では未曾有の巨砲であり、設計時には現物などなかった。しかし大砲が完成してから船体を設計する既存の方法を踏襲すれば戦争に間に合わない。そこに、当時の海軍大臣ウィンストン・チャーチルの強力なる後押しにより、主砲が未成状態で砲塔や船体の設計を始めるという弩級戦艦時代以後では前例のない方法で建造が進められ、搭載されることになったのである。
大口径に伴い、前級のアイアン・デューク級のように船体中心部に一直線上に砲塔五基を並べると艦体の大型化を招いてしまう上に建造費が嵩んでしまうので望ましくない。そこで、中央部の三番砲塔をやめ、前部二基・後部二基の計四基の配置に改めた。重量削減のために行ったのだが、三番砲塔の為に空けていた空間を機関区の増大に充てたために出力の向上という思わぬ利点があった。機関配置の効率化に加えて新開発の重油専焼缶を大部分に採用したことも高速化に必要であった。
重油は石炭よりも遥かに燃焼効率がよく、同じトン数ならば40%も長く走ることができた。また、補給も水兵が石炭屑で真っ黒になりながら何度も手押し車で岸壁と石炭庫を往復しなくても燃料パイプを岸壁かタンカーに繋ぎ、バルブを一捻りすれば後は満タンになるのを待つだけであった。また、今まではボイラーへ機関兵が火炙りになりながらも腕が千切れるまでスコップで石炭を放り込む手間をバルブの一捻りで済むのである。これも海軍大臣チャーチルの功績であった。(これだけの利点があるにもかかわらず英国海軍は、後述の「リヴェンジ級」で再び石炭重油混焼缶の比率を上げたのである)
しかし「速力こそ最大の防御」というミスリードが英国海軍に浸透していた時代のためか、防御は対15インチ完全防御とは言えず、対13.5インチ防御の域を出なかった。これは後々にまで本級の戦闘に響いた。しかし当時の仮想敵に対して垂直防御装甲330mmは必要にして十分な厚みであり、竣工当時では最強の戦艦であった。
これらの工夫により本級は戦艦でありながら高速力と巡洋艦並の航続性能も兼ね揃えた主力艦として後の高速戦艦のはしりとなった。
[編集] 戦歴
本級は戦時中に建造される主力艦ということもあり当初は4隻だけの計画であったが、英領マレーからの献金により「マレーヤ」が追加建造され計5隻となった。本級5隻は第一次大戦中に竣工し直ちに第5戦艦隊を編成してグランド・フリートに配属され、ユトランド沖海戦では、戦艦でありながら巡洋戦艦並の俊足を活かして英国巡洋戦艦部隊の危機にかけつけ、ドイツ巡洋戦艦部隊に一矢を報いている。以降はグランド・フリートの中核としてワシントン海軍軍縮条約後も保有が続けられた。
1926年から1927年にかけて第1次近代化改装を行った。1937年5月20日のスピッド・ヘッド沖で行われたジョージ6世戴冠記念観艦式に地中海艦隊のパウンド大将旗艦として本国艦隊旗艦のネルソン等とともに参列し天皇名代秩父宮雍仁親王夫妻を招待した。参加艦艇は同年8月にポーツマス工廠で姉妹艦ウォースパイトに準じた第2次近代化改装に着手。
第二次世界大戦においては、1940年12月にロサイス工廠で工事完了後地中海艦隊に編入。1941年12月19日、アレクサンドリア港内に停泊中、クイーン・エリザベスは姉妹艦ヴァリアントとともにイタリア潜水艦シーレから発進した人間魚雷「ピグ」SLC-223の攻撃を受けて港湾内部で大破着底、1943年6月にようやく修理が完了して戦線に復帰した。1948年に除籍後、同年3月19日に売却。7月7日にダルムールに回航され解体処分された。
[編集] 同型艦
- 「クイーン・エリザベス Queen Elizabeth (エリザベス1世)」 1915年1月15日竣工
- 「ウォースパイト Warspite (戦争を軽蔑する者、戦場のキツツキ)」 1915年3月19日竣工
- 「バーラム Barham (トラファルガー海戦時の海相)」 1915年10月19日竣工
- 「ヴァリアント Valiant (勇敢な)」 1916年2月19日竣工
- 「マレーヤ Malaya (英領マレー)」 1916年2月19日竣工
[編集] 関連項目
クイーン・エリザベス級戦艦 |
---|
クイーン・エリザベス | ウォースパイト | ヴァリアント | バーラム | マレーヤ |
前級:アイアン・デューク級 次級:リヴェンジ級 |
イギリス海軍戦艦一覧 | イギリス海軍艦艇一覧 |