アドーニス
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アドニス(ギリシャ語:Άδωνις、ラテン文字表記:Adonis)は、ギリシア神話に登場する、美と愛の女神アプロディテに愛された美少年。フェニキアの王キニュラスとその王女のミュラの息子。
キニュラスの家系は代々、アプロディテを信仰していた。しかし、王女ミュラはとても美しく、一族の誰かが「ミュラは女神アプロディテよりも美しい」と言ってしまった。これを聞いたアプロディテは激怒し、ミュラが実の父であるキニュラスに恋するように仕向けた。父親を愛してしまい、思い悩んだミュラは、自分の乳母に気持ちを打ち明けた。 彼女を哀れんだ乳母は、祭りの夜に二人を引き合わせた。顔を隠した女性が、まさか自分の娘だとは知らないキニュラスは、彼女と一夜を共にした。しかし、その後、明かりの下で彼女の顔を見たキニュラスは、それが自分の娘のミュラだと知ってしまう。怒った彼は、ミュラを殺そうとした。しかし、彼女は逃げのび、アラビアまで逃げていった。 彼女を哀れに思った神々は、ミュラをミルラ(没薬)の木に変えた。やがて、その木に猪がぶつかり、木は裂け、その中からアドニスが生まれた。そのアドニスに、アプロディテが恋をした。やがてアプロディテは赤ん坊のアドニスを箱の中に入れると、冥府の王ハデスの妻で、冥府の女王のペルセポネの所に預けた。彼女はペルセポネに、けっして箱の中を見るなと注意しておいた。しかし、ペルセポネは好奇心に負け、箱を開けてしまった。すると、その中には美しい男の赤ん坊のアドニスがいた。彼を見たペルセポネも、アドニスに恋してしまう。こうして、アドニスはしばらくペルセポネが養育することになった。
アドニスが少年に成長し、アプロディテが迎えにやって来た。しかし、ペルセポネはアドニスを渡したくなくなっていた。2人の女神は争いになり、ついに天界の裁判所に審判を委ねることにした。その結果、1年の3分の1はアドニスはアプロディテと過ごし、3分の1はペルセポネと過ごし、残りの3分の1はアドニス自身の自由にさせるということとなった。 しかし、アドニスは自分の自由になる期間も、アプロディテと共に過ごすことを望んだ。ペルセポネは、アドニスのこの態度に、大いに不満だった。 アドニスは狩りが好きで、毎日狩りに熱中していた。アプロディテは狩りは危険だから止めるようにといつも言っていたが、アドニスはこれを聞き入れなかった。アドニスが自分よりもアプロディテを選んだことが気に入らなかったペルセポネは、アプロディテの恋人である軍神アレスに、「あなたの恋人は、あなたを差し置いて、たかが人間に夢中になっている」と告げ口をした。これに腹を立てたアレスは、アドニスが狩りをしている最中、猪に化けて彼を殺してしまった。 アプロディテはアドニスの死を、大変に悲しんだ。やがてアドニスの流した血から、アネモネの花が咲いた。
アドニスという名はセム語起源で、旧約聖書のアドナイ(ヤハウェの呼び名「主」)と関係があるとされる。また「アドニス」の語は「美少年」の代名詞としても使われる。