SIMカード
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SIMカード(シムカード、Subscriber Identity Module Card)とは、GSMやW-CDMAなどの方式の携帯電話で使われている電話番号を特定するための固有のID番号が記録されたICカード。
W-CDMAなどの第三世代(3G)携帯電話用のSIMカードは機能が拡張されており、UIMカードないしUSIMカードと言うが、基本的に互換性があるため、特に区別せずにSIMカードと呼ぶことが多い。
ボーダフォン(Vodafone)のロゴはこのSIMカードの形状がモチーフである。
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[編集] 概要
SIMカードは、他の一般的なICカードと同じく、クレジットカードサイズで提供される。これは、昔の自動車電話などのSIMカードソケットだったことの名残である。現在は小型化され、ICチップの部分だけを切り離して使うようになっている。
SIMカードには、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)と呼ばれる固有の番号が付与されており、これと電話番号を結びつけることにより通信を可能とする。SIMカードを抜き差しすることで、電話番号を他の携帯電話機に移したり、ひとつの携帯電話端末で複数の電話番号を切替えて使用したりすることができる。 但し、SIMカードは頻繁に抜き差しすることを想定したものではなく、抜き差しの前に確実にSIMカードの電源を切るために、電話端末の電源をオフにする必要がある。そのため、多くの電話端末では、電池を取り外さないとSIMカードの抜き差しができないような構造になっている。
国内で入手できるSIMカードは通常キャリア(通信会社)からの貸与であり、解約の際には返却しなければならない。 ただし、プリペイドSIMカードの場合は、最終使用時から一定期間(半年程度が多い)の後に失効して発信も着信も出来なくなるため、解約手続きは不要である。
一部の機種では例外もあるが、SIMカードが挿入されていない携帯電話端末は"Insert SIM"などと表示された画面になり、発着信はもとより電話帳の閲覧やワンセグテレビの視聴、カメラ撮影など一切の機能が使えないのが一般的である。そのため携帯電話のカタログや公式サイトなどでは、『携帯電話を解約もしくは、機種変更後は、「ワンセグ」テレビを視聴することができません。』と説明されている。
[編集] 規格
ISO/IEC 7816規格の接触型ICカードである。プラグインは、外形寸法が幅15mm×奥行き25mm×厚み0.76mm程度で容量は64kバイト程度。実用化されている最大容量は2005年時点で128Mバイトまでである。2008年までに1Gバイトへと大容量化する方針のメーカーもある。小容量のカードでは契約者の個人情報や電話帳を50件ほど保存できるのみだが、大容量のカードではコンテンツ情報などを保存する事もできる。
[編集] NFC
3GPPリリース7にて、非接触型ICカード機能を内蔵した、NFC-SIMカードまたはNFC-USIMカードへの拡張規格が決まった。SIMカードにNFC (Near Field Communication; 近距離無線通信) 機能を内蔵する事により、携帯電話端末本体に内蔵する事無く、非接触型決済機能などを付加できる。
[編集] 日本の事情
日本では、2GではSIMカードを使う方式の代表であるGSMがサービスされていないため使われていなかったが、NTTドコモの自動車電話機の一部機種では「DoCoMoアプリケーションカード」と呼ばれる、クレジットカードと同サイズのICカードを利用していた。これは日本独自のものでPDC(mova)方式であった。3GではW-CDMAを採用したNTTドコモのFOMAやソフトバンクモバイルのSoftBank 3Gのサービスインにより、UIMカードが使われるようになった。FOMAではFOMAカード、SoftBank 3Gでは、USIMカードと呼ばれている。データ通信サービスで新規参入したイー・モバイルも、W-CDMA方式のためUIMカード (EM chip) を採用している。 だが、日本の携帯電話は海外と違い機種それぞれ1キャリア限定のものであり、機種も限定され、パソコンなどのように容易な機種の交換はすすめられていないため、海外の機種と比べ、取り出しにくく、SIMカードとの接触部分が比較的弱いため、壊れやすいことがある。
また、auも国際ローミングの強化(グローバルエキスパート)を目的として遅ればせながらCDMA 1X WINのFelicaチップ搭載電話機に於いて、R-UIMカード(au ICカード)を導入し、日本の3G携帯電話はすべてUIMカードを採用することとなった。
ただし、海外の多くの国ではプリペイドSIMカードが販売されており、プリペイドユーザの比率の高さにつながっているのに対して、日本ではソフトバンクモバイルの「プリモバイル」とイー・モバイルの「EMチャージ」を提供するに留まっている。ただし、EMチャージはデータ通信に特化したサービスであるため、音声通話が利用できない。
また、日本の3G携帯電話では、ダウンロードしたコンテンツに対してIMSIやIMEI(International Mobile Equipment Identity、電話機の固有番号)による保護がかけられていることが多く、ダウンロードに使用したものと異なるUIMカードを挿した場合、通話・通信はできても、ダウンロード済みのコンテンツの利用ができない場合がある。UIMカードを紛失・破損・不具合・盗難などにより再発行した場合も同様の可能性がある。
なお、ウィルコムもW-SIM(ウィルコムシム)と称する独自仕様のモジュールを採用しているが、これは契約情報だけでなく通信機能を内蔵したモジュールであり、SIMカードとの互換性はない。2005年、PHS用SIMカードとしてPIMカードが規格化され、2008年2月に日本国内での初のPIMカード採用端末が発売予定。
更に、フィンランドのように、SIMカードを単に電話用IDとしてではなく、'Citizen Certificate'を入れ、電子身分証明書として使用する動き[1]もある。日本では、NTTドコモのFirstPassというサービスで、利用者が電子証明書の発行を受けてこれをFOMAカードに格納し、SSLクライアント認証や電子署名に利用できる。
日本で、海外の携帯電話通信会社のSIMカードを販売している会社も存在する。
[編集] SIMロックについて
日本では、キャリアが携帯電話機メーカーから機種を買い取って販売すると言う、キャリア主導型の体系である。キャリアはインセンティブ(販売奨励金)を出して代理店に端末を安く販売させる場合があり、その場合に端末の設定により他のキャリアのSIMカードを差しても使用することが出来ないようにすることが多い。これはSIMロックと呼ばれている。逆にSIMロックがされていないことを「SIMロックフリー」、あるいは俗に「SIMフリー」という。
日本でもFOMAやSoftBank 3G、CDMA 1x WINの端末にもSIMロックがかけられており、現状ではNTTドコモから購入した端末にソフトバンクのSIMカードを入れて使用したり、ソフトバンクから購入した端末をFOMA契約で使用することは出来ない。
NTTドコモ、ソフトバンクどちらでも利用できるSIMロックフリー端末は、日本国内で正規に販売されているものとしては、2007年12月現在ではノキアから発売されているNokia 6630とNokia E61、およびHTCから発売されているHTC Advantage X7501とHTC P3600、の4機種しかない。
総務省では、インセンティブ問題と並行してこのSIMロックの制限解除にも乗り出す予定であり、2007年夏までに制限解除が可能かどうかを見極める[2]。ただし、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクモバイルの携帯キャリア3社とも制限解除には否定的で、SIMロック解除には抵抗している。
日本国内で解除された場合、海外と同じように一つの機種を複数のキャリアで使用できるようになったり、キャリアを乗り換えるときも同じ端末を共用できるようになると考えられる。
ただし、au の CDMA 1X WIN と FOMA・SoftBank 3G は通信方式が違う(前者はCDMA2000、後者はW-CDMA)ため、仮にロックが解除されても相互使用はできない。
[編集] レベル2 SIMロック
SIMロックには、普通レベルのSIMロックと、「ワーストSIMロック(レベル2 SIMロック)」などと呼ばれる[要出典]さらに制限の強いSIMロックがある。
このSIMロックは端末内に特定のSIMカードを登録して他のSIMカードを受け付けないようにする機能がある。例えば、家族全員同じキャリアだったとしても、「親兄弟のお下がりをもらって自分のSIMカードを入れ替えて使用する」といったことができない。
国によっては、このSIMロックを規制している国もある[3]が、日本では全く規制がない。
このレベルのSIMロックを採用しているのは、日本ではauだけとなっている。いったんau ICカードを挿した端末に別のau ICカードを挿して使うには、auショップで有料の手続きが必要となる。
この強固なSIMロックはセキュリティの向上にはある程度貢献するが、そもそもSIMフリーの端末に対しては効果がないこと、カードを入れ替えるだけで機種変更可能というSIMカード本来のメリットを潰してしまうことにもなる。また、本来ユーザーに所有権がある携帯電話端末の所有権をも制限する制度と言わざるを得なく、ユーザーからの批判をかっている。これらの批判に対しauは、「紛失時のセキュリティーを守るため」と主張しているが、SIMカードのセキュリティー保護のためにPINコードによるロックなどの仕組みがあるため、auの主張は妥当とは言い難い。
また、音声通信に新規参入するイー・モバイルについても先行予約申込書の条文に「他の人のEM chipを利用できなくするセキュリティが施されている」旨が記載されていた。
これに対してFOMAやSoftBank 3Gでは、カードを入れるだけでお下がりの端末をそのまま利用できる。
[編集] 世界で一般的なSIMカードの使用
空港・電話会社・コンビニエンスストアなど、日本でも一部販売店で、他国キャリアのプリペイドSIMカードを購入し、SIMロックされていない自分の端末に入れて使用できる。通常、購入に際してはパスポート等の身分証明書が必要。その端末はその国の電話番号になる。
- 地元のキャリアのSIMを利用した場合は、通話は地元キャリア経由。
- A国に滞在中、A国のB氏に電話する場合:端末→B氏の国内通話
- A国に滞在中、日本のC氏に電話する場合:端末→日本→C氏の国際通話
- 日本で売っている国際ローミングSIM利用の場合、すべての通話は日本経由。
- A国に滞在中、A国のB氏に電話する場合:端末→日本→A国→B氏の折返し国際通話
- A国に滞在中、日本のC氏に電話する場合:端末→日本→C氏の国際通話
- A国のSIMカードを日本に持込む場合、通話は日本経由
A国のSIMカードを日本に持込んでA国の電話番号で発着信することも、キャリアによっては可能である。前者の場合と特に区別する場合はローミングインと言う。ただしGSMだけに対応した端末を持込んでも使用は出来ず、W-CDMA対応の端末を持ち込むか借りる必要がある。
- A国の中の国内通話はその国のキャリアのSIMカードを選択した方が安い。しかし国際通話料金は、その国のキャリアの国際通話料金と、国内キャリアのローミング国際通話料金と、どちらが安いかの比較になる。
- 国際ローミング利用の場合、A国で日本から着信した場合にも着信側に課金されることが多い。日本側からは国内通話に見えても、実際は国際通話料金が発生していてそれを課金する必要があるため。