IPS方式
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IPS方式とは In Plane Switching の略で液晶ディスプレイの一形式。通常、TFTアクティブマトリックス液晶表示装置として使われる。日立製作所が1996年に最初に製品化した。現在では日立製作所関連会社の日立ディスプレイズやIPSアルファテクノロジ以外のLG-Philips LCDなど多くの会社も製品化している。
通常のTFTがガラス基板に挟まれた液晶の厚み方向に電界を加えるのに対し、IPS方式では基板の面方向に電界を加える(厚みに対し横方向なので横電界とも呼ぶ)。液晶分子はガラス基板と平行な面内で回転する。他の多くの液晶表示方式と同様に複屈折の変化で光をスイッチングする。
標準的なTN方式と異なり電界が存在しない状態(電圧をかけていない状態)で光を遮蔽する(原理的には偏光フィルタの向きによってどちらでも可能ではあるが、電界をかけていない状態で黒になるように構成するのが自然である)。
通常のTFT液晶パネルと異なり、IPS方式のものは対向基板(TFTが形成されていない方の基板)側には電極が無い。表示ムラができないようにするためと必要な電圧を低く抑えるために、通常画素電極が櫛歯状に形成されている(通常のTFT液晶パネルではベタ電極)。ただし、それでも駆動電圧は液晶の厚み方向に電圧を印可する他の液晶モードと比較すると大きい。
[編集] 特徴
視野角が広い上に色度変移が少ないため、高級なテレビモニタやDTP用のモニタに採用される他、ドットピッチの狭い物も開発され(最近ではワイドVGAという800×480ピクセルの3インチ程度のものまで存在する)、これらは携帯電話のディスプレイとしても採用されている。
IPS方式の液晶は、バックライトの影響もあるが、明暗比はそれほど高くはなく、液晶を構成する素材の関係でTN方式と配列が違うため、白色光を透過した場合若干色温度が低下する傾向がある。このため、専用の回路でこれを補正することが行われている。