鹿島臨海鉄道大洗鹿島線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
大洗鹿島線(おおあらいかしません)は、茨城県水戸市の水戸駅から鹿嶋市の鹿島サッカースタジアム駅に至る鹿島臨海鉄道が運営する鉄道路線。日本鉄道建設公団建設線(北鹿島線)を引き継ぎ、開業した路線である。
目次 |
[編集] 路線データ
[編集] 歴史
改正鉄道敷設法別表第39号「茨城県水戸ヨリ鉾田ヲ経テ鹿島ニ至ル鉄道」である。
国鉄再建法施行時には鉄建公団により建設中で、開業後の輸送密度が4000人以上見込めるとして工事が続行されたが、当時の日本国有鉄道は第三セクターでの運営を希望した。これを承け茨城県では、1984年、鹿島臨海鉄道による引き受けを決定し、翌1985年に開業した。当初は特急列車を運行する計画があったため、単線ながら高規格な設計になっている。踏切は、水戸駅近辺の常磐線と並行する部分にJRが設置している2箇所以外には存在しない。
なお、電化を前提に施設は建設されているが、第三セクター鉄道での運営が決定した段階で維持管理・運用経費を算定した結果、非電化ディーゼル運転と変更された。仮に電化するとした場合、大洗鹿島線に限っても水戸~大洋間は茨城県石岡市柿岡にある気象庁地磁気観測所から近いため、安価に直流電化することは不可能である。また交流電化とした場合でも、鹿島神宮~北鹿島間の国鉄鹿島線は既に直流電化されているため、製造コストの高い交流直流両用車両を使用するか、あるいは地上交直切り替え設備を整備することが必要となる。通常の電化よりコストが嵩むため、電化は行われていない。
- 1985年(昭和60年)3月14日 水戸~北鹿島(現在の鹿島サッカースタジアム)間(53.0km)開業。
- 1989年(平成元年)11月1日 全線で貨物営業開始。
- 1990年(平成2年)11月18日 長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅新設。
- 1994年(平成6年)3月12日 北鹿島駅を鹿島サッカースタジアム駅に改称。サッカー試合開催日の一部列車のみ旅客営業開始。
- 1996年(平成8年)3月16日 貨物列車設定廃止。
- 2004年(平成16年)12月1日 大洗鹿島線COMBAT(バリス式列車検知形閉塞装置)導入プロジェクト立ち上げ
- 2005年(平成17年)10月12日 常澄 - 大洗間でCOMBATの表示機能運用開始。
[編集] 運転
路線上の終点の鹿島サッカースタジアム駅が、カシマサッカースタジアムでの試合開催日の一部列車のみの営業(注)であり、また鹿島サッカースタジアム駅を通る列車は全て鹿島臨海鉄道所有の気動車で、JR鹿島線鹿島神宮駅まで一区間乗り入れる。
列車としては、毎時1本の水戸~鹿島神宮間を走行する列車のほか、水戸~大洗間・水戸~新鉾田間の区間列車も設定されている。
また、2001年4月1日から一部の列車でワンマン運転を実施している。
- (注) 鹿島サッカースタジアム駅は、1994年に貨物駅であった北鹿島駅を旅客化・改称したもので、大洗鹿島線開業時から全ての列車が通過扱い(一部、列車交換のための運転停車のみ)である。
2002年のサッカー・ワールドカップ開催時に東京方面からJR東日本の電車を鹿島サッカースタジアム駅まで運転する輸送計画が立てられたが(鹿島サッカースタジアム駅までの鹿島線は直流1500V電化されており、EF65形が定期列車で入線する)、前年に起きた兵庫県明石市の歩道橋圧死事故を教訓に、警備上の問題から見送られる事となった。
その後、2006年7月15日の2006JOMOオールスターサッカーに際して、初めてJR東日本の旅客車両が鹿島サッカースタジアム駅まで営業運行(臨時列車)された。
[編集] 利用状況
[編集] 輸送実績
大洗鹿島線の近年の輸送実績を下表に記す。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
年 度 | 輸送実績(乗車人員):万人/年度 | 輸送密度 人/km・1日 |
特 記 事 項 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
通 勤 定 期 |
通 学 定 期 |
定期外 | 合 計 | |||
1985年(昭和60年) | 10.1 | 11.9 | 14.8 | 36.8 | 1,924 | 開業 |
1986年(昭和61年) | 22.0 | 85.1 | 115.7 | 222.8 | 2,190 | |
1987年(昭和62年) | 26.7 | 104.0 | 120.9 | 251.6 | 2,443 | |
1988年(昭和63年) | 28.7 | 119.4 | 130.9 | 279.0 | 2,718 | |
1989年(平成元年) | 28.9 | 132.7 | 143.2 | 304.8 | 2,939 | |
1990年(平成2年) | 31.4 | 148.6 | 154.6 | 334.6 | 3,158 | 長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅新設 |
1991年(平成3年) | 35.5 | 156.0 | 160.6 | 352.1 | 3,226 | |
1992年(平成4年) | 38.4 | 164.4 | 156.0 | 358.8 | 3,310 | |
1993年(平成5年) | 37.5 | 163.9 | 156.9 | 358.3 | 3,378 | 鹿島サッカースタジアム駅旅客営業開始 |
1994年(平成6年) | 36.7 | 163.3 | 153.3 | 353.3 | 3,345 | |
1995年(平成7年) | 38.8 | 158.7 | 151.6 | 349.1 | 3,272 | |
1996年(平成8年) | 39.0 | 154.7 | 146.4 | 340.1 | 3,130 | |
1997年(平成9年) | 36.5 | 144.2 | 136.2 | 316.9 | 2,873 | |
1998年(平成10年) | 38.0 | 142.4 | 129.9 | 310.3 | 2,779 | |
1999年(平成11年) | 36.2 | 140.2 | 122.7 | 299.1 | 2,627 | |
2000年(平成12年) | 37.1 | 135.6 | 117.9 | 290.6 | 2,527 | |
2001年(平成13年) | 34.7 | 130.3 | 115.5 | 280.5 | 2,474 | |
2002年(平成14年) | 32.5 | 126.4 | 113.5 | 272.4 | 2,453 | |
2003年(平成15年) | 32.4 | 125.4 | 100.5 | 258.3 | 2,310 | |
2004年(平成16年) | 31.7 | 121.8 | 96.6 | 250.1 | 2,230 | |
2005年(平成17年) | ||||||
2006年(平成18年) | ||||||
2007年(平成19年) |
[編集] 収入実績
大洗鹿島線の近年の収入実績を下表に記す。表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、最高値を赤色で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色で表記している。
年 度 | 旅客運賃収入:千円/年度 | 運輸雑収 千円/年度 |
総合計 千円/年度 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
通勤定期 | 通学定期 | 定 期 外 | 手小荷物 | 合 計 | |||
1985年(昭和60年) | ←←←← | ||||||
1986年(昭和61年) | ←←←← | ||||||
1987年(昭和62年) | 58,279 | 177,154 | 497,403 | 0 | 732,836 | 68,608 | 801,444 |
1988年(昭和63年) | |||||||
1989年(平成元年) | |||||||
1990年(平成2年) | |||||||
1991年(平成3年) | |||||||
1992年(平成4年) | |||||||
1993年(平成5年) | |||||||
1994年(平成6年) | |||||||
1995年(平成7年) | 96,814 | 299,961 | 691,542 | 0 | 1,088,317 | 131,730 | 1,220,047 |
1996年(平成8年) | |||||||
1997年(平成9年) | |||||||
1998年(平成10年) | |||||||
1999年(平成11年) | 92,837 | 268,431 | 534,997 | 0 | 896,265 | 120,225 | 1,016,490 |
2000年(平成12年) | |||||||
2001年(平成13年) | |||||||
2002年(平成14年) | |||||||
2003年(平成15年) | |||||||
2004年(平成16年) | 80,776 | 236,148 | 437,003 | 0 | 753,927 | 48,090 | 802,017 |
2005年(平成17年) | |||||||
2006年(平成18年) | |||||||
2007年(平成19年) |
[編集] 駅一覧
- 鹿島サッカースタジアム~鹿島神宮間は自社路線ではないが、便宜上併記している。
路線名 | 駅名 | 駅間キロ | 累計キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|
鹿島臨海鉄道大洗鹿島線 | 水戸駅 | - | 0.0 | 東日本旅客鉄道:常磐線・水郡線 | 茨城県 | 水戸市 |
東水戸駅 | 3.8 | 3.8 | ||||
常澄駅 | 4.5 | 8.3 | ||||
大洗駅* | 3.3 | 11.6 | 東茨城郡大洗町 | |||
涸沼駅 | 6.4 | 18.0 | 鉾田市 | |||
鹿島旭駅 | 4.8 | 22.8 | ||||
徳宿駅 | 3.9 | 26.7 | ||||
新鉾田駅* | 4.3 | 31.0 | ||||
北浦湖畔駅 | 3.9 | 34.9 | ||||
大洋駅 | 4.1 | 39.0 | ||||
鹿島灘駅 | 4.1 | 43.1 | 鹿嶋市 | |||
鹿島大野駅 | 3.0 | 46.1 | ||||
長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅 | 2.3 | 48.4 | ||||
荒野台駅 | 1.7 | 50.1 | ||||
(臨)鹿島サッカースタジアム駅 | 2.9 | 53.0 | 鹿島臨港線(貨物線) | |||
JR鹿島線 | ||||||
鹿島神宮駅 | 3.2 | - | 東日本旅客鉄道:鹿島線佐原方面 |
- *は社員配置駅。JR東日本と同型のPOS端末が設置されている。
- 鹿島サッカースタジアム駅は貨物駅としては常設。
- 鹿島サッカースタジアム駅を通る実際の旅客列車は、JR鹿島線鹿島神宮駅まで運転され、鹿島神宮駅が佐原方面との乗換駅となる。