魔物ハンター妖子
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『魔物ハンター妖子』(まものハンターようこ)は1990年~1995年にかけて発売されたOVA作品および漫画、テレビゲームである。原案:六月十三、キャラクター原案:宮尾岳
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[編集] 概要
古より妖魔と戦い続ける魔狩人・魔物ハンターの第108代目となってしまった女子高生、真野妖子の恋と戦いを描く物語。80年代以降の美少女作品の一ジャンルとして定着していた「剣を持って戦うヒロイン」の流れを汲みつつも、ビキニアーマーに象徴される洋風・ファンタジー路線に偏重していた既存の作品とは一線を画す、チャイナドレス姿の妖子のコスチュームデザインが注目を集めた。また変身時における前口上と、キューティーハニーを髣髴とさせる変身途中のヌードシーンがシリーズの定番となっている。
当時としてはまだ比較的珍しい部類であった、アニメ・ゲーム等の多ジャンル展開を企画当初より想定したメディアミックス展開黎明期の実験的作品でもあるが、各メディアごとにおけるストーリーや世界観などには、妖子のデザインや一部登場キャラクターを除き、ほとんど共通点が見られない(妖子の性格設定まで異なる)のも大きな特徴である。
メディア展開はOVAを主軸に、平行してゲーム、CDドラマ、小説等が製作され、OVA展開終了の後に原作者の一人である宮尾岳の手による漫画版をもってシリーズ展開は終了となった。宮尾は漫画版妖子をシリーズを終結するピリオドとして描いたと述懐しており、以降の展開は行われていない(商品自体は後にDVD-BOX、ガレージキット等が販売されているが、いずれも宮尾描き下ろしのイラストがパッケージに用いられており、最後まで妖子に関わる姿勢が窺える)。
[編集] 主な登場人物
- 真野妖子(まの ようこ)
- 声:久川綾
- 6月1日生。T:158cm、W:45kg。B:83cm、W:56cm、H:85cm(但しPCエンジン魔界からの転校生ではW:54cm)。血液型:A型。
- 主人公で第108代目魔物ハンター。紅華学園に通う高校生。
- 小川千賀子(おがわ ちかこ)
- 声:本多知恵子
- 8月8日生。T:160cm、W:53kg。B:88cm、W:62cm、H:88cm。血液型:A型。
- 妖子の同級生で親友。自称魔物ハンターのマネージャー。よくダイエットを試みるが、食い意地が張りなかなかうまくいっていない。
- 神崎あづさ(かんざき あづさ)
- 声:吉田古奈美
- 3月10日生。T:149cm、W:38kg。血液型:O型。
- 魔物ハンター見習い。OVAの妖子2から登場。アニメ作品では少しずぼらな妖子とは対照的に、家事全般が得意。
- 真野マドカ(まの まどか)
- 声:三ツ矢雄二/こおろぎさとみ※若返り時
- 11月11日生。T:145cm、W:53kg(若返り時)。
- 妖子の祖母、第107代目魔物ハンター。OVA版の5では、一時若返ったことがあった。
- 真野小夜子(まの さよこ)
- 声:鶴ひろみ
- 妖子の母。本来なら彼女が第108代目魔物ハンターとなるはずであったが、妖子を16歳の時に出産した事により、魔物ハンターになる資格を失ってしまう。そのため、娘の妖子が第108代目魔物ハンターになることとなる。
- 真野ハルカ(まの はるか)
- 声:日高のり子
- 2月24日生。T:158cm、W:43kg
- 初代魔物ハンターにして、真野家のご先祖様。
- ショウマ
- 声:難波圭一
- 魔界からの転校生の主人公。
- シェルミナ
- 声:皆口裕子
- 水棲界のお姫様。魔物に声を奪われてしまう。
- セツナ
- 声:安達忍
- 風棲界で看護婦をしている。
- アイミイ
- 声:本多知恵子
- 火棲界の酒場で働く女の子。
- フェリアム
[編集] OVA
いずれもアニメーション制作はマッドハウス。初発売は東宝ビデオ。
- 「魔物ハンター妖子」1990年
- アニメ展開の記念すべき第一作。妖子の魔物ハンターとしての覚醒と、学園に潜む魔界の女王の陰謀との戦いを描く。OVA作品ではあるが、テアトル池袋にて劇場公開も行われた。同時上映は「超音戦士ボーグマン LOVERS RAIN」。一般作でありながら、ベッドシーン等過激な描写があった事でも一部話題を呼んだ。
- 「魔物ハンター妖子2」1992年
- ファンの要望に応える形で製作された第二作。新キャラクターあづさが登場し、封印を解かれ復活した魔王・温羅に妖子と共に立ち向かう。あづさには魔物ハンターの見習いである以外にも、真野家の家政婦としての設定等も考えられていたが、30分という時間上の制約から最低限の描写に留められた。
- 「魔物ハンター妖子3」1993年
- 2と同時に企画・製作された作品で、当初はこれをもってシリーズ終結とする予定でもあり、当時の広告等で「妖子最後の戦い」といったコピーが用いられる事もあった。異世界に召還された妖子が恋の成就の為に魔物達と死闘を繰り広げる。当時大ブームであった『ストリートファイターII』の影響から、妖子が同じチャイナドレスのキャラクター・春麗の必殺技を繰り出すお遊びも用意されている。
- 「魔物ハンター妖子スーパーミュージッククリップ」1993年
- これまで発表されたアニメ、ゲームの主題歌、挿入歌を用いたミュージッククリップ集。再び製作されることになった新作は、縁起を担いで4を避け5を冠する格好となり、実質4に当たる作品として用意されたものでもある。過去のアニメやSD妖子・あずさのコメディ調新作アニメ、宮尾岳のイラスト集が映像として用いられている他、久川綾、吉田古奈美のPVも収録されている。
- 「魔物ハンター妖子5 光陰覇王の乱」1994年
- シリーズの最終作として製作された完結編。歴代魔物ハンターの宿敵・刻魔との戦いを描く。「光陰覇王の乱」は雑誌による公募で付けられたタイトルで、内容との具体的な関連性は無い。初代魔物ハンター・ハルカと、刻魔の力により若返ったマドカが妖子・あづさに協力する展開が行われたが、企画当初はさらに2人の歴代魔物ハンターが加わる予定もあった。こちらは没となったが、代わりにクライマックスではそれ以上のサプライズが用意されている。
- 「魔物ハンター妖子2」(ようこのじじょう)1995年
- 三度ファンの要望により復活し製作された作品。監督は新房昭之。一子相伝である魔物ハンターの影の血筋を継承するライバル・妖子(あやこ)との戦いを描く。アニメスタッフによる独自企画作であるのか、これまでのシリーズにあったような六月、宮尾の参加を示す資料は少ない。「プリンセス・ミネルバ」、「銀河お嬢様伝説ユナ」と合わせて東宝美少女OVA作品として展開された。新たなシリーズを予感させる復活劇ではあったが、これをもってアニメシリーズは実質終結となった。
[編集] ゲーム
[編集] メガドライブ
- 「魔物ハンター妖子 第7の警鐘」1991年/メサイヤ/横スクロールアクション
- ゲーム展開の第一作。魔界を舞台に、魔物ハンターとなった妖子が妖魔達と戦いを繰り広げる。全5面構成で、「第7の警鐘」とはゲーム開始時、1~4面の各ボス戦クリア時、そしてラスボス戦開始時とクリア時の計7回鳴らされる鐘の音を指す。攻撃は剣によるものだが、ボタンを押し続ける事で全身を包むバリアを展開、さらにこれを武器として放射できるのが特徴。各ステージクリア後は妖子のCGが表示される。ドラマティックアクションゲームと称し、物語性を組み込んだ作品を意識していたようだが、実際のゲームには(EDでそれらしい映像が使われる以外に)物語性を感じさせる要素は無かった。パワーアップが無い、体力ゲージの消費が激しい、コンティニュー数に制限がある等の理由により難易度は高い。企画上ではダメージを受けると妖子のチャイナドレスの裾が短くなり、最後にはレオタード調になるという演出が考えられていたが、ビジュアルサイズ上表現が難しい為没になった。このアイデアは小説版で一部採用されている。
[編集] PCエンジン
- 「魔物ハンター妖子~魔界からの転校生~」1992年/メサイヤ/ADV
- メガドライブのアクションゲームに続いて製作された、デジタルコミックアドベンチャー作品。プレイヤーは記憶喪失の少年・ショウマとなり、妖子と(成り行き上同行する事になった)千賀子を異世界・幻夢界へと誘う。当初はこの1作だけをもって完結する予定であったが、CD-ROM²の容量上、前半のみの収録となった。元はRPGを想定しており、選択肢や村人の会話等にその面影が見て取れる。登場する敵キャラは(次回作「遠き呼び声」まで含めて)メガドライブ版の各面のボスと同じ妖魔が登場している。
- なお、このゲームの説明書後半部分に妖子のミニ画集が収録されている。
- 「魔物ハンター妖子~遠き呼び声~」1993年/メサイヤ/ADV
- 「魔界からの転校生」に続く後半の物語を描いた作品。媒体をスーパーCD-ROM²に移行し、ボリューム、グラフィック等が大幅に強化された。今作ではプレイヤーが操作する主人公がショウマから妖子自身に変更。これは物語上ショウマを妖子と離れさせる必要が生じた為でもあるが、ファンから出された「妖子自身を動かしたい」「妖子の心情描写も増やして欲しい」という要望に沿うスタッフの判断でもあった。現在の美少女ゲームが男性主人公の視点で描かれる作風が圧倒的な主流であることからすれば、当時の美少女作品に対するファンのスタンスが窺える貴重な事例とも言える。前作よりドラマティックな展開が多く用意されたほか、製作途中で予算不足となる事態がありつつも、スタッフの熱意により無償製作で膨大なグラフィックを含んだエンディングが作られた。
[編集] 小説
文・六月十三、挿絵・宮尾岳の原作者コンビにて月刊アニメVにて連載された。全6話。魔物ハンターとしての覚醒から活躍、歴代魔物ハンター達の宿敵・ギルドとの死闘、あづさの弟子入りまでを描く。こちらも他メディアとは異なる解釈による設定が見られるが、純粋に原作者2名による製作の為、宮尾の数多くのイメージイラストにも繋がる「本来想定されていた妖子の世界観」を描いたのが本作といえる。学研発行のムック本に1~5話、ムック本【完結編】に最終話が収録されている。
[編集] 漫画
- YKコミックス「魔物ハンター妖子」(漫画:宮尾岳)1996年/少年画報社/ISBN 4785915463
- シリーズ展開の最終作。魔物となった狼・ライゴを巡る短編となっている。妖子のデザインを務めた宮尾岳の独自の解釈による作品であり、他のシリーズの特徴でもあったサービスシーンが完全に削られているほか、妖子の両親が事故死している等のハードな世界観となっている。アニメに登場したハルカ、ゲームに登場したショウマが新たな設定で登場した一方、マドカやあづさは登場しない。様々な解釈、世界観で描かれたシリーズを締め括る最終作として、生みの親の一人である宮尾の妖子に対するスタンスが色濃く反映された作品となっている。
[編集] CD
[編集] シングル
- 「ところがどっこい!セクシー娘/壊れかけた鏡」(歌:本間かおり=現・普天間かおり)1992年/キングレコード「魔物ハンター妖子2」主題歌
- 「頑張る私が好き/Stay by me」(歌:久川綾)1994年/キングレコード「魔物ハンター妖子5 光陰覇王の乱」主題歌
[編集] アルバム
- 「魔物ハンター妖子」1991年/キングレコード
- 「魔物ハンター妖子 So Bad Boy」1993年/キングレコード
- 「魔物ハンター妖子 Doing My Best!」1994年/キングレコード
[編集] 画集
- 学研ムック「魔物ハンター妖子」(1993年、学研)
- 学研ムック「魔物ハンター妖子 完結編」 (1994年、学研)