電気化学
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電気化学(でんきかがく、Electrochemistry)は、物質間の電子の授受と、それに付随する諸現象を扱う化学の分野である。物理化学、分析化学、化学工業などとの繋がりが深い。
電気化学で扱われる主な内容を以下に示す。
- 電気化学反応 - 物質間の電子の授受に伴う酸化還元反応と、それに付随する様々な現象。主として電極-溶液系の反応。例としては、水の電気分解など。
- エネルギー変換 - 化学エネルギーと電気エネルギー、光エネルギーなどの相互変換。電池や有機ELなど。
- 電気化学測定 - 導電性や電気容量などマクロな性質から、酸化還元電位や電子移動速度などミクロな性質まで、様々な物性の測定。導電性高分子など。
- 電気化学分析 - 電気化学的な反応や特性を利用して行う分析。電気泳動やpHセンサーなど。
- 電気化学工業 - 電極反応を利用した工業。アルミニウムや銅の精錬、めっきなど。
[編集] 歴史
電気化学の歴史は1781年にルイージ・ガルバーニが動物電気を発見したところから始まる。電気自体はそれ以前に存在が認識されていたが、電気が化学に関連している可能性を示唆したのは彼の発見である。しかしながら彼は電気がカエルの筋肉に蓄えられており、それが金属に接触して電気が流れたと考えていた。化学と電気の関連を発見したのは同じくイタリア人のアレッサンドロ・ボルタの功績である。1799年、彼はボルタ電池を発明し、電気がイオン化傾向(電気化学系列)の異なる二つの電極(必ずしも金属である必要はない。)と電解質からなる電池によって生まれることを示した。また、その翌々年にはウィリアム・ニコルソンとアンソニー・カーライルが水が電気によって分解(電解)されることを発見した。
電気化学反応が電極の酸化還元の傾向や電解質に関連していることはその後の研究で明らかとなり、数多くの電池が開発された。その中でマイケル・ファラデーにより、ファラデーの電気分解の法則が発見される。この発見で物質量は電気量と密接な関係を持つことが明らかとなり、化学反応の理解に大きな寄与を果たした。
19世紀末には、熱力学の発展が電気化学に大きな影響を及ぼした。ヴァルター・ネルンストによるネルンストの式の提唱である。これによって電気化学反応は一般の化学反応と同等に扱うことが出来るようになった。電位がギブズエネルギーを電気量で割ったものであることを示したこの式は、電位差が電気化学反応を推し進める原動力であり、電位差がなければ電気化学反応が起こらないという事実の理論的な裏づけとなったのである。