超心理学
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超心理学(ちょうしんりがく)は、テレパシー、予知、透視、念力などのいわゆる超能力や超常現象の仕組みを、主に行動科学の手法を用いて研究する「科学」である。しかしその評価には幅があり、科学と認められるという者、科学的なものとしては認めるが心理学ではないとする者、疑似科学に過ぎないとする者など、様々である。
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[編集] 概要
研究対象は超自然的なものであるが、方法論は完全に実験心理学の規範に準拠する。被験者の割付けやデータの統計学検定といった研究計画については通常の実験心理学よりもかなり厳密に行われており、追試も可能であるとされる。ただし実際には、研究対象となるべき現象(超感覚的知覚能力など)が実際に存在するかどうかという最も基本的な部分で多くの人を納得させる科学的データは出ていない。
肯定的な実験結果が出たとされる事例でも、あとで追試を行うとそのようなデータは出現しない。このため、被験者の主観的な心的状態によって実験結果は左右される実験者効果の排除が必要となる。なお超能力を検証する実験に立ち会う試験者が超能力を信じている場合わずかに確率があがり、信じていない場合はわずかに確率がさがる山羊・羊仮説が存在するが、これに従った場合には原理的に実証が困難であり、この仮説は反証可能性の点で危ういもので疑似科学となっている恐れがある。このような検証不可能な仮説を持ち出すより、単に大数の法則により統計的に有効なデータが現れなくなったと解釈する方がより一般的な解釈である。
[編集] 歴史
歴史的にはジェームズ、フロイト、ユング、アイゼンクといった、心理学を語る上で欠かせない多くの心理学者も何らかの形で超心理学に関わることもあったが、現在ではこれを心理学と認めない心理学者も多い。一般に、超心理学という用語が広く使われるようになったのは1927年にアメリカで研究を開始したJ・B・ラインの影響である。
すでに100年以上研究が続けられているが、途中に何度か肯定的な実験結果を出すことはあっても、後に行われる追試では元の実験の不備が判明するなど、いまだに超能力の実証には至っていない。またジェームス・ランディのプロジェクト・アルファ(後述)による影響も大きく、超能力実験に対する信頼性は低下している。
日本では、広い意味の超心理学が「サイ科学」と呼ばれることがあるが、サイ科学はオカルト的な要素を多分に含んでおり、超心理学とは分けて考えるべきとする見解もある。
[編集] 懐疑派の活動
ダグラス社の取締役会会長のジェームス・マクドネル(en:James McDonnell)により50万ドルの出資によって1979年に設立されたマクドネル超能力研究所(McDonnell Laboratory for Psychical Research)という、おそらく世界で一番資金のある超能力研究所があった。この研究所の所長であるピーター・フィリップス(en:Peter Phillips)博士に、超能力実験においていかにイカサマ師のトリックを見抜くか、マジシャンのジェームス・ランディが11ヶ条の助言を送り、また要請があれば無償で実験に立ち会うことも申し出た。ところが、ランディの申し出は断られ、助言も無視された。封も開けられず手紙は送り返されていたという。
これに怒ったジェームス・ランディはこの研究所に2人の若いマジシャンを送り込んだ。彼らは自分達に超能力があると、研究所スタッフに思い込ませることに成功した。彼らがマジシャンであることが暴露されるまで、研究は3年間続き、その間彼らは、金属を曲げたり念写やテレパシーなどの実験をやってみせたが、研究スタッフは誰一人それが手品であることを見抜けなかった。
これがプロジェクト・アルファである。彼らがマジシャンであることが暴露された2年後の1985年に研究所は閉鎖された。
また現在、上記のジェームス・ランディは超能力を目の前で実証することが出来たなら100万ドルを進呈すると宣言している。 ランディは「超能力の全てには、トリックがある」と発言している。彼によると、これまで300人もの自称「超能力者」と名乗るものたちが、100万ドルを求めてランディに挑戦してきたが、ことごとくそのトリックを暴かれいまだ誰ひとりとして自慢の超能力を実証したものはいない。
この宣言は日本のテレビ放送でも何度か放送されているが、超能力実験の実証に成功した者はいない。
ジェームス・ランディ以前には、本物の霊媒者を捜していたが、インチキが多すぎるために、アンチ心霊主義の急先鋒として活躍したマジシャンのハリー・フーディニの例がある。彼は自らを「心霊主義を叩きのめす鉄槌」を自任し、数々のイカサマを暴いた。有名なサイエンティフィック・アメリカンでの懸賞金を懸けた超能力者探しのエピソードは、人気ドラマ「TRICK」のモチーフにもなっている。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- イヴォール・グラッタン=ギネス 『心霊研究―その歴史・原理・実践』 和田芳久訳 (題名は心霊研究だが、中身は超心理学) ISBN 4906255256
- イヴォンヌ・カステラン 『超心理学』 田中義廣訳 (文庫クセジュ) ISBN 456005780X
- ジョン・ベロフ 『超心理学史―ルネッサンスの魔術から転生研究までの400年』 笠原敏雄訳 ISBN 4531081102
[編集] 外部リンク
- Parapsychological Association, Inc.(PA) (国際超心理学会。入会資格が厳しいことで知られる。英文)
- Rhine Research Center (Institute for Parapsychology) (デューク大学超心理研究所の後身。英文)
- エディンバラ大学心理学科 ケストラー超心理学ユニット
- Homepage of the ASC Consortium(ギーセン大学 心理学・行動医学センター)
- 日本超心理学会 (この分野で国際的に最も良く知られている日本の学会)
- 超心理学講座 (明治大学の石川幹人教授によるもの)
- 超常現象と出版社
- オープン・ディレクトリ: 科学: オルタナティブ科学: 超心理学 (関連リンク集)