膣内射精
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膣内射精(ちつないしゃせい)とは、男性が性交においてコンドームを使わず、女性器の中(膣内)に射精すること。膣外射精に対しての対義語で、俗語の中出し(なかだし)のこと。
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[編集] 実生活における膣内射精
人間以外の哺乳類と同様、生物として自然な妊娠のために必須の行為である。 また、性器を直に結合する快感を中断することなくエクスタシーを迎えられることと、男性が射精による深い精神的満足感を得られ、女性も膣内で射精される精神的満足感や射精に伴うペニスの律動感などを官能できる行為である。
膣内射精は結婚した夫婦間の性行為として妊娠の可能性を了解した上で行うことが多いが、男女ともに妊娠は望まないが膣内への射精は望む場合、ピル(低容量ピル)やIUD、殺精子剤などの避妊を併用し、妊娠の可能性を回避しつつ行うのが一般的である。コンドームを嫌うカップルは少なくはなく、またコンドームに因らない避妊法の選択肢が増えたことにより、膣内射精は身近になったといえる。ただし、膣内射精に慣れると快感を損なうコンドームを避ける傾向が強まることや、習慣からつい避妊を怠って膣内射精を行いがちになり、結果的に妊娠の危険性が高まる可能性は否定できない。表立って指摘されることは少ないが、今日のいわゆるできちゃった結婚の激増は、婚外性交渉においても避妊をしない膣内射精があたりまえになっている風潮を示すものである。当事者の自己責任において、望まない妊娠・性行為感染症などの危険性や、とくに不倫関係時の倫理観には注意を払うべきである。 また、強姦などの一方的な行為は、女性が被害を被ること以前に自己性欲を満たす事が唯一の目的のため、膣内射精を行うことがほとんどである。特に性交経験のない未成年少女が強姦により妊娠させられることは、その女性の生涯に渡り著しく精神的な外傷を与えることになる。
[編集] アダルトビデオ作品との違い
精液は妊娠させるための物質で膣内に留まろうとする性質があるので、実際の性行為で中出ししても膣から精液が流れ出す光景をただちに見ることができるとはかぎらない。膣の奥のほうで射精した場合には、膣分泌液と精液が混じった液体が膣口に滲み出す程度のこともある。この点は、射精量や膣の状態(深さや締まり具合)により個人差がきわめて大きい。膣内の精液は一部が女性の体内に吸収されるが、それ以外は射精後数時間(そのまま就寝した場合は翌朝まで)かかって、徐々に膣から排出される。膣の入口近くで射精すればただちに精液が流れ出す可能性は増すが、一般的には射精時の男性側の快感を損なう。後述のアダルトビデオ作品のようにいかないので男性が落胆することも少なくないが、それがむしろ普通であって、アダルトビデオは疑似精液を用いた過剰演出であることが多い。
[編集] ポルノ業界における位置付け
[編集] ジャンル
1990年代前半、日本のアダルトビデオでは膣外射精(外出し)がほとんどを占めていた。これは精液が目に見える形で外に出されることにより、見せ場となる射精の瞬間を明瞭にできるという演出上の効果が高いと考えられていたからであると言われる。それまでにも見せ場が膣内射精になる演出の作品も一部存在したが主流ではなかった。しかし1990年代後半になると膣内射精を好む客層がいることが製作者サイドに認識され始め、”中出し”がジャンルとして登場した。近年のアダルトビデオや出版物においては自然な性交感を演出したり、鑑賞者の性的興奮をより高めるために膣内射精が用いられることがある。”中出し”のアダルトビデオは、膣から精液が糸を引いて流れ出すシーンが魅力であるが、このシーンの演出は大きく2つに分けられる。ひとつは、女優が膣内射精を許容する演出の作品であり、2000年代前半から半ばにかけてアダルトビデオ作品で広く見られるようになってきた。もうひとつは、膣内射精に際して激しく抵抗して半ば強姦され、妊娠の可能性に対する恐れや女としての自信の喪失のために泣き叫ぶ様子を演出する作品があり、一例として死夜悪レーベル作品(2006年現在)が挙げられる。近年では、膣内射精人気の高まりを受け、素人男優を公募しAV女優に中出しさせる作品をシリーズ化し、またアフターピルや避妊フィルムなど避妊対策が万全であることを強調して素人女性に出演を呼びかける制作会社(モブスターズ)も登場し、真正中出しにこだわり擬似中出しとの差別化を図るメーカーもある。
[編集] "中出し"の実際
日本のアダルトビデオでは妊娠の危険を避けるため、ほとんどの作品が実際には膣内射精は行われず、映される精液は疑似精液であるといわれる。これは、性病の検査をしていても性病の潜伏期間が存在する等の理由により、性病感染の恐れがあることにも起因する。しかし、より臨場感を求める作品では実際に膣内射精をしている場合がある。特に生理が終わった熟女の女優や妊婦した女優では、実際に膣内射精を行っていることが多い。
最近は性交後に服用する避妊薬モーニングアフターピルが海外から輸入されたり、1998年に低用量ピルが認可されるようになってから、本物の中出し撮影が増えたと言われている。
疑似精液を使った場合、色合いが本物の精液とは違う(白すぎる場合が多い)、量が多すぎる、粘度が低くサラサラですぐに膣から流出する、などで見分けやすい。 「中出し」か「擬似」であるかを簡単に判別する方法としては、シーンのカット割(映像の分割)があるかないかでも確認できる。擬似中出し作品の場合、膣から流れ出る擬似精液を撮影するため、膣から陰茎を完全に抜いたあと擬似精液を膣に注入しこれを撮影する。そのため、射精シーン直後に映像が分割されている場合「擬似」である場合が多い。
しかし、こうした手法はアダルトビデオの鑑賞者にはすでによく知られており、カット割をせず疑似精液を使用する手法もある。これも、射精シーン直前に不自然な抽送停止時間があったり、男優が射精直前に股間で不自然な手の動きをする場合、あるいはスポイドから擬似精液を注入する際に生じるブチュッという音が生じることなどで「擬似」であることをある程度見分けることができる。このような作品の中には、故意に出演女優を騙し本当の中出しと勘違いさせ女優を怒らせるシーンを撮影する場合がある。とまどう女優のリアクションが中出しシーンのリアリティを向上させている。
これら鑑賞者の厳しい目を受け、射精は意識的に停止させることが難しい点を利用し、射精中に膣から陰茎を抜き、中出しであることを強調する作品もある。
[編集] 欧米およびキリスト教文化圏における"中出し"事情
元来膣内射精を生殖行為と見るキリスト教的な考えが支配的だった欧米、とくにカトリック系では、婚外性交渉における膣内射精は長らくタブーとされていた。しかし昨今では、出演者の民族・宗教の多様化などが進んだこととピルの普及により、海外のポルノでも膣内射精の作品が多く見られるようになっている。なお、海外の多くの国では性器にモザイク処理を施す義務が法律で定められておらず、交接部が隠されることのない状態で性行為が撮影される。男優が実際に射精する様子を鑑賞者が視認することができるので、疑似精液を膣に注入するなどの小細工は利かない。因みに米国では膣内射精を「Internal Cum」と呼び、膣から精液が溢れ出す様子を俗語で Creampie と呼ぶ。
[編集] 演出
上述のように中出しを偽装している作品も多いので、真正な中出しであることを証明するために特別な演出、撮影を行うことがある。
- 半中半外
- 射精直前に膣から陰茎を引き抜き、膣外で射精を始めてから陰茎を膣へ挿入し直し、引き続き射精すること。男性の射精は、始まると本人の意思で止められないため、膣内で射精していることを証明できる。
- 金玉アングル
- 男女の性器結合部分を撮影する際、男性の精巣を画面中央に大写しに据える撮影アングルのこと。男性が射精すると精巣およびその周囲の筋肉が不随意運動で動くのが確認でき、膣内で射精していることを証明できる。
- チンピク
- 男女の性器結合部分を撮影する際、男性の陰茎を画面中央に大写しに据え、男性の射精に伴い陰茎が不随意運動で動くのが確認でき、膣内で射精していることを証明できる。
[編集] 性風俗業界における位置付け
性風俗業界(特にソープランド)では コンドームを使わないという意味で NS(ノースキン)と呼ばれる。 コンドーム無し・膣内射精の「生入れ中出し」を略してNNと呼ばれる。もしくはNDとも言われる。