母集団
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
母集団(ぼしゅうだん)とは、統計学的推定で基本として仮定する、ある要素の集合であって、これからランダムな標本を抽出して観察し、その結果から逆に母集団を推定するという形で用いる。
例えば、カラスを対象としてその性質を調べたい時、具体的な必要性に応じて「全てのカラス」、「ある地域に生息するカラス」、「カラス成鳥」といった集合が母集団になる。このように野生動物全てを調べるのは不可能だから、その一部を標本として調べ、母集団に外挿する事が必要である。
人間を対象にする場合には、ある集団に属する人を母集団としてその全員について調査する(全員を標本とする)事も理論上可能だが、例えば、日本の選挙権を持つ国民全員を対象にして世論調査をする事など事実上不可能(選挙と同じ事になる)だから、この場合も標本から母集団を推定するという方法が必要になるという訳である。又、「ある薬品で治療を受けた患者」を母集団とした場合なども将来の全ての患者を含む必要になるため、やはり同じ方法が不可欠である。
以上のような具体的な母集団は有限であるが、数学的な便宜上、無限大の要素からなる母集団を仮定する方法をとる事がほとんどである。ある分布を仮定した母集団から有限のn個からなる標本(大きさまたはサイズnの標本という)を取り出すものとし、これから逆に確率論的に母集団を推定する訳である。
母集団という言葉は、「測定する要素」でなく「測定値」の集合という意味にも用いられる。例えば、カラス成鳥の体重を対象とする場合には、各カラスの体重の集合を「体重の母集団」と呼ぶ。
母集団の分布を表現する数値を母数といい、よく知られているものには平均、標準偏差などがある(それぞれ母平均、母標準偏差などという)。これらにそれぞれ対応して、標本から計算される数値(標本平均、標本標準偏差など)を統計量といい、これは標本を表現する数値であるとともに、母数を推定するのにも用いられる。