新口動物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
新口動物(しんこうどうぶつ 学名:Deuterostomia)とは、原口が口にならず、肛門となり(あるいは、原口の付近に肛門が形成され)、口は別に形成される動物。後口動物ともいう。旧口動物に対立する。
語義からは毛顎動物門・棘皮動物門・半索動物門・脊索動物門などが含まれる。ただし毛顎動物門については異説があり、狭義の新口動物として、棘皮動物門・半索動物門・脊索動物門のみを意味する場合がある。これら3門の単系統性は支持されている。なお、これらの中に(クモヒトデの一部など)原口が口になる生物も含まれるが、その場合も系統を優先して新口動物とみなす。狭義の新口動物グループについては、「新口動物」の名称は口の形成過程と言うより、単なる分類群のラベルと考えるのが妥当であろう。
最近、珍渦虫の遺伝子解析の結果から、これが新口動物に属する独立門とわかり、珍渦虫動物門が含まれることになった。
触手冠動物(触手動物ともいう。外肛動物門・箒虫動物門・腕足動物門からなる)は、原口の発生からは旧口動物になるが、系統的に旧口動物と(狭義の)新口動物とのどちらに近いかについて、意見の対立がある。新口動物と触手冠動物をまとめてRadialia(放射卵割動物)を認める説もある。しかし最近の分子系統解析では、触手冠動物は旧口動物に含まれる説が有力になっている。
いわゆる2分岐説において、左右相称動物の進化の過程で、旧口動物と分岐したものであると考えられている。
ヘッケル派の説では、新口動物は、放射卵割を行ない、腸体腔をもつとされた。しかし、現在では脊索動物は裂体腔であろうといわれているなど、この体系は問題がある。
近年の分子系統学の研究により、左右相称動物を、冠輪動物・脱皮動物・新口動物に大きく3分類する説も出てきている。
[編集] 語義
Deuterostomiaの語は、トマス・ヘンリー・ハクスリーによって1875年に作られた。ラテン語でdeuter(o)(2番目の・後の)+口(stoma)からなり、口が2次的に作られるという意味。当時は、原口が口になるArchaeostomata(刺胞動物なども含まれる)と対立するものとして分類された。
専門書では「後口動物」の語が使われることが多いが、高校生物用の参考書では「新口動物」の語が使われている。
[編集] 参考文献
- 『岩波生物学辞典 第4版』
- 「遺伝」1993年12月号 「後口動物の系統論-脊椎動物の起源をたずねて」西川輝昭・和田洋(裳華房)