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山口恵照 - Wikipedia

山口恵照

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

山口恵照(やまぐち えしょう、1918年-)は、 日本の愛知県出身の哲学研究者である。インド哲学専攻で、大阪大学名誉教授、文学博士でもある。サーンキヤ哲学(数論)を、ガウダパーダ・バーシャ註釈を止揚することにより批判的に総合し、体系的に把捉することによりその全体像を浮き彫りにし、また分かりやすく解説する。世界の淵源をば数論から照射し解明した。その現代的意義は大きいと言える。

目次

[編集] 年譜

[編集] 主著

  • 『サーンキヤ哲学体系序説 サーンキヤへみちびくもの』 あぽろん社
  • 『サーンキヤ哲学体系の展開 究極的な転迷開悟の道』あぽろん社
  • 『宗教の哲学的理解』昭和堂
  • 『ヨーガの知恵』東方出版
  • 『宗教的生涯教育』あぽろん社
  • 『宗教と救済』共著 ナカニシヤ出版
  • 『宗教と実践』共著 ナカニシヤ出版

[編集] 恵照学によるサーンキヤ

サーンキヤは、独自の原理(タットヴァ・真諦)をもって存在現象(諸法)の全体を数えつくし、これによって、当時のインド哲学の共通的課題たる業・輪廻・解脱を明かし、一切の有情をして平等に解脱を実現させようとする哲学であります。すなわち、われらの生存というのは、いったい、何であるか?われらの生存は何に由来し何をめざすのか?という問題をかかげて、われらの有情の生存の実相を示すとともに、われらは総じて何を、どのようにめざすべきか?に答える。つまり、われらの有情の生存の究極目標とこれにいたる道とを示し、もって、われら有情に等しく絶対自由の安楽境を得させようとする哲学なのである。

引用出典:『サーンキヤ哲学体系序説 サーンキヤへみちびくもの』あぽろん社・はしがき

有情(うじょう)とは、情(こころ)の働きを持つモノの意で、生きている万物を指す。

[編集] 恵照学による転迷開悟

サーンキヤ哲学体系の展開は、プラクリティ(根本自性)の転変の秩序を総括的に提示するところからまさしく始まります。が、これには、哲学体系展開の基本構想が先行します。この基本構想は、二種原理の結合の事態と、結合の目的および結果とを内容としますが、実にサーンキヤ哲学体系の展開を支えるものであります。その展開は、プラクリティの転変(展開)をもって具体的になり立ちますが、タットヴァの生成、サルガ(創造)の成立という、基本的な秩序がある。プラクリティの転変によってもたらされるのは、プルシャの受苦ということであります。これは、現実世界における一切生類の業・輪廻の苦を説くためのものです。プラクリティの転変はしかし、プラクリティが他のいかなるものよりも柔軟であり、純粋に為他であるということによって、プルシャの解脱を実現するのであります。というのは、プルシャは本来、無縛無脱であり、有縛有脱なるプラクリティがプルシャのために自縛自脱するからであります。このことを数習するならば、その数習の究まりにおいて、プルシャの解脱の正因であるケーヴァラ・ジニャーナ(独存智)が生ずる。そしてケーヴァラ・ジニャーナによって、一切生類はプルシャ独存ー解脱に到るのであります。

引用出典:『サーンキヤ哲学体系の展開 究極的な転迷開悟の道』あぽろん社 ・はしがき

転迷開悟を、恵照は「さとりのちえ」と読み下している。

[編集] その語録

プルシャがブラフマンと一体であるとき、人間のこころはすなわち宇宙の身体である。 「未来をひらくヨーガ」『道友』1977年8号p20

ここにこころを問題にしてスートラでは「こころの流転を」という。これは勿論、われわれの問題をかようにいっているのであります。われわれの問題のすべてをここに含めて言っているといってもよろしい。ただし、それはかくかくであると、外に置いて、あるいは現象的にながめて、「何々である」と判断するに止まっていない点に留意すべきであります。それゆえに、「こころの流転を寂静ならしめる」と、ヨーガ・スートラははじめにまずヨーガを明確に定義して言っているのであります。すなわち、「チッタ・ヴリッティ・ニローダ」という声で伝えているのものです。「未来をひらくヨーガ」『道友』1977年8号p21

ヨーガは総じて人間をしてその現実態から理想態に到らしめる。ヨーガは人間の現実と理想とを解いて、これをわたしどもに知らせるのみではない、理想を追及し、理想を完成させるのであります。「人間完成のヨーガ」『道友』1979年11号p15

人間の心のすべてを尽くすということは、ヨーガにおいては、結局、人間の全体を解き明かすことになる。ヨーガは人間の全体を解き明かすために、そのもとづく因縁の全体を解き明かしている。因縁の全体とは、人間の全体をば、主体の根源からと、また対象の根源からという、両面から解き明かすものであります。「人間完成のヨーガ」『道友』1979年11号p17

わたしどもの心は、その現実態としては、煩悩性と非煩悩性とに分けて見ることができる。煩悩性というのは、わたしども人間がこれまで限りなく生と死をくり返してきた、また生と死をくり返すであろうということ、すなわち、輪廻に導く行動(業)の潜勢力をつみ重ねる場であり、輪廻の由来する因である業の潜勢力を蓄積するものであります。また非煩悩性とは、心とプルシャ(真我)とを完全に区別する智をいうのであります。これは、さとりの資料となる。「人間完成のヨーガ」『道友』1979年11号p17-18

「プルシャとは何か」と見ているものもプルシャ。

[編集] その人物

卒寿の現在も、東方学院など人々の集まりでサーンキヤ哲学の講義を、理路整然と矍鑠たる様でされている。一たび質問をすれば、サンスクリット文献を始めとする古今東西のあらゆる古典から、典拠を縷々と自在に暗誦引用し、質問者が納得するまで何時間でも解説する様は見事である。東洋文化圏の学者の一典型と言えるその温厚篤実、謙虚な人格は、聞く者を魅了し続けている。また、佐保田鶴治博士の愛弟子にあたる山口恵照は、ヨーガの体操の教師ではないが、「肩で立つ体位」「すきの体位」「上体を後ろに伸ばす体操」などを、講義の合間などに楽々とこなし、身体エネルギーの循環を高めている。その粘り強い長時間に渡る集中力は、これら身体のしなやかさから齎されるものであり、年齢から考慮すれば、医学上の驚異でもあろう。


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