女性騎手
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
女性騎手(じょせいきしゅ)とは、競馬における女性の騎手のことである。
目次 |
[編集] 来歴
日本初の女性騎手は、1936年に京都競馬倶楽部の騎手免許試験に合格した斉藤澄子である。しかし、競馬関係者が「女性騎手の存在は風紀を乱す」と反対運動を展開し、それを受けて農林省は女性騎手のレース出場を禁止する命令を出し、東京帝国競馬協会も騎手免許を発行しなかったため、一度も騎乗することなく引退した。吉永みち子の小説『繋(つな)がれた夢』の主人公は斉藤がモデルとなっている。
海外初の女性騎手は1968年11月にアメリカで騎手免許を取得したペニー・アン・アーリーである。しかし男性騎手がストライキを起こすなどして抵抗し、一度もレースに出場することなく引退した。
このように完全なる男社会であったかつての競馬界において異色の存在であった女性騎手は、その誕生から不遇に満ちたものだった。しかしその後、1960年代後半から起こったウーマンリブの世界的広がりなどの影響から、競馬界に於いても不当な男女差別が問題視されるようになり、以後実際にレースで騎乗し活躍を見せる女性騎手が登場し始める。
もっとも成功した女性騎手はアメリカのジュリー・クローンである。クローンは通算3704勝、重賞132勝、1993年のベルモントステークスに優勝するなど一流騎手と呼ぶに相応しい実績をあげ、2000年8月に女性騎手として初めて競馬の殿堂入りを果たした。2002年に現役に復帰した。
日本では勝利数の面において、中央競馬よりも地方競馬において女性騎手が活躍している。現在名古屋競馬場所属の宮下瞳が、日本における女性騎手の最多勝利記録を更新中である。なお、2002年に中央競馬の短期騎手免許を取得したニュージーランドのロシェル・ロケットが、中山大障害に優勝。これが中央競馬初の女性騎手による重賞優勝、かつGI(J・GI)優勝である。
名古屋競馬場や笠松競馬場など、女性騎手に対して無条件でレース時の斤量を減量する特典を付与する制度を実施している競馬主催者もある。ばんえい競走でも、同様の制度が実施されている。
対する日本中央競馬会(JRA)所属の日本人女性騎手については、今のところ目立った活躍は見られない。これは騎乗技術の優劣よりも「女の力では馬は御せない」という盲目的な古い因習が競馬関係者や馬主たちに未だ根強く残っていることが原因と思われる。その最たる例として、競馬学校で騎乗技術を含めて最も優秀な成績を修めた卒業生に贈られるアイルランド大使特別賞を受賞しJRA初の女性騎手としてデビューした牧原由貴子(現増沢由貴子)が、実際の騎乗依頼数、騎乗馬の質においても殆どチャンスを与えられず、他の同期生たちより冷遇されていることが上げられる。彼女たちのデビュー当初は、道が開けたことで先行する地方競馬のように中央競馬に挑戦する女性騎手が増えるのでは、という期待もファンの間でささやかれたが、最初のケースが失敗に終わったことで、現在の中央競馬では女性騎手が活躍できる余地は殆ど失われてしまっている。
日本全国の女性騎手を招待して開催されるシリーズとして、「レディースジョッキーズシリーズ」がある。これは荒尾競馬場で2004年および2005年に行われた「全日本レディース招待競走」を前身とし、1997年から2000年まで中津競馬場で行われていた「卑弥呼杯」、2001年に新潟競馬場で行われた「駒子賞」を起源とする。なお、それ以前の女性競馬騎手招待レースには「レディスカップ」(1981年~1984年、水沢競馬場、上山競馬場、新潟競馬場)、「国内女性騎手招待競走」(1982年~1984年、水沢競馬場)、「ANJレディースカップ」(1988年、札幌競馬場)、「インターナショナルクイーンジョッキーシリーズ」(1989年~1993年)などがある。
なお、NARグランプリでは「優秀女性騎手賞」の部門を設置し、その年に最も活躍した女性騎手を表彰している。
[編集] 主な女性騎手
[編集] 日本の女性騎手
- 父は元騎手押田年郎。
- 実際にレースで騎乗した日本初の女性騎手。繋駕競走のみ騎乗し、通算253戦33勝、2着39回(1966~1971年)。水沢・高橋武厩舎所属。夫は高橋武調教師、娘の高橋優子は日本初の平地女性騎手。
- 日本初の平地女性騎手。水沢・高橋武厩舎所属。1,776騎乗209勝(1969~1974年,通算5年6ヵ月)。1969年4月にデビューしたが1974年、急性心不全のため死去。父は高橋武調教師、母は高橋クニ。
- 佐々木亜紀(岩手)
- 石川夏子(岩手)
- 千田和江(岩手)
- 新田弥生(旧姓:吉田)(岩手)
- 皆川麻由美(岩手)
- 小田嶋志生子(上山)
- 和田美由紀(上山)
- 徳留五月(旧姓:遠藤)(上山~高知)
- 藤塚聡子(新潟~高崎)
- 山田真裕美(新潟)
- 山本泉(大井~新潟)
- 赤見千尋(高崎)
- 米田真由美(高崎)
- 平山真希(浦和)
- 牛房由美子(浦和)
- 父は浦和所属の元騎手、現調教師の牛房榮吉。
- 父は浦和所属の元調教師土屋登。
- 短期免許(2003年8月5日~11月4日)。オーストラリアの騎手。
- 松沼緑(大井)
- 沢江鮎美(大井)
- 埴谷美奈子(大井~益田)
- 戸川理彩(川崎)
- 安池成実(川崎)
- 宮岸由香(金沢)
- 山上由紀子(金沢)
- 岡河まき子(笠松)
- 中島広美(笠松)
- 神野治美(名古屋)
- 宮下瞳(名古屋)
- 日本における女性騎手最多勝記録保持者(現在も更新中)。
- 8年間で通算350勝。現代競馬において女性騎手の存在を広めた功労者。
- 父は高知所属の調教師別府真司。
- 篠田幸子(中津)
[編集] 海外の女性騎手
- ペニー・アン・アーリー(アメリカ)
- メアリー・ベーコン(アメリカ)
- 1978年大井競馬場の招待競走などで来日。
- ジュリー・クローン(アメリカ)
- エマ=ジェイン・ウィルソン(カナダ)
- リサ・クロップ(ニュージーランド)
- リサ・マンビー(ニュージーランド)
- ロシェル・ロケット(ニュージーランド)
- アンヌソフィ・マドレーヌ(フランス)
- 1999年インターナショナルジャンプジョッキーズで来日。
- アレックス・グリーヴス(イギリス)
- 1997年ナンソープステークス優勝、欧州の平地競走で史上初の女性G1ジョッキー。
- ヘイリー・ターナー(イギリス)