分隊支援火器
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分隊支援火器(英:Squad Automatic Weapon, SAW)は、機関銃のうち7.62mm~5.56mm口径の汎用機関銃または軽機関銃で、二脚を装備しているものを指す。分隊支援火器は、一個歩兵分隊または一個歩兵小隊に、援護射撃を行うために1~2丁配備される。
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[編集] 概要
分隊支援火器の基本的な使われ方は、味方とともに行軍し、野戦において敵歩兵に対して制圧射撃を行い、敵に頭を上げさせず、味方への射撃をさせないための援護射撃を行うというものである。これは、敵に対する攻撃の成功率を格段に上げる。また、分隊支援火器は、敵の集中攻撃に対して防御を行うための射撃に使うこともできる。
分隊支援火器は、基本的に一人で携行できるよう、従来の軽機関銃よりさらに軽量である必要性がある。汎用機関銃、または重機関銃は、三脚を用いて陣地を構成する一部とすることができるが、分隊支援火器は基本的に三脚には載せない。このため、陣地防御のような用途には向いていないし、そのような使い方は設計・運用思想とも合わない。
いくつかの分隊支援火器、たとえばロシア(旧ソ連)のRPK-74やイギリスのL86は、アサルトライフルを連続射撃に耐えるよう堅牢にして大型化したものである。また、アサルトライフルと構造が似ているため操作技術の習得を早める効果があるとされる。おおむね、分隊支援火器は、次の三通りの基本パターンに分類できる。
- アサルトライフルからの発展型:アサルトライフルを長銃身化するなどした、派生型の一種。RPK(AKM)、RPK-74(AK-74)、L86(L85)など。
- 専用設計型:最初から個人携行用の分隊支援火器(軽機関銃)として設計されているもの。ミニミ軽機関銃、ブローニング自動小銃BAR、RPD軽機関銃など。
- ストーナー・ウエポン・システム型:部品の組み合わせにより、アサルトライフルにも軽機関銃にもなるタイプ。XM8など。
どのタイプにおいても、前線における融通性を考慮して、弾薬はアサルトライフルと共通のものが使用され、アサルトライフルの弾倉をそのまま装備できるものも多い。
[編集] 運用思想
分隊支援火器を理解するには、アサルトライフルの運用思想を理解する必要がある。
アサルトライフルは、通常フルオート(連続)射撃が可能であるが、特に新兵など興奮しすぎた兵士は、戦闘においてあっという間に弾薬を使い果たしてしまう。従って、多くの軍隊では一般兵士に対して、大規模な突撃または待ち伏せ攻撃以外の時には、フルオートを使用しないように教育している。特にアメリカ軍の一般兵士用のアサルトライフルM16は、A2型からフルオート機能を敢えて廃止して、セミオート(単射)機能と3点バースト射撃(引き金を引くと3発ずつの間欠連射ができる)機能だけに限定したほどである。
この運用思想は、弾薬梱包を小さく軽くできる、空中投下補給しやすくなる、燃料の節約につながるなどの、輸送・補給面についても大きく改善することとなった。さらに、訓練に必要な時間と費用も節約する。また、弾薬の節約による軽量化は、兵士の疲労を軽減することにもつながり、たとえばパトロール時間を長くすることなども可能とした。
しかし、同時にこの運用思想は、突撃時に火力支援が弱い(または、ない)という問題点を持つこととなった。分隊支援火器は、この問題を解決するために、機関銃を突撃時にも携行できるようにする、という発想から生まれた。この武器の登場と、それを扱う専門の援護兵の教育により、個々の兵士は弾薬を節約することができ、訓練時間を短くすることができ、かつ分隊が持つべき弾薬の重量を軽減することができた。
民兵や非正規軍においても、この運用思想は利点をもつ。私費で購入する弾薬代を節約できる上に、訓練の時間も短くすることができ、正規軍と同じような行動を、非軍事用の銃で行うことができる。戦時には、軽装備の民兵でも、一個分隊に一丁の分隊支援火器を支給することにより、容易に火力を増強することができる。
[編集] その他の利点
- 訓練に要求される資源を減らすことができる。機関銃の訓練には、大量の高価な弾薬を用いて実弾射撃を行い、弾薬を無駄にしないように、かつ標的に確実に当てることを要求される。しかし、分隊支援火器の運用思想を導入して、数人の限定されたスペシャリストを養成することで、訓練にかかるコストを容易に減らすことができる。また、火器と予備弾薬の携行量を減らすことができる。
- 実効制圧力が増す。小型で持ち運びが容易な軽機関銃は、敵にとって狙うのが難しく、敵が標的の解析と順位付けを行うのが難しくなる。このことは、(一部の二脚付きのアサルトライフルを除いて)分隊支援火器の火力をさらに効果的なものにする。
- 分隊支援火器には二脚がついているので、射手は地面など二脚を設置する場所があれば、武器の重量を気にせずに、かつ精度の高い射撃を行うことができる。これにより、さらに分隊支援火器の実効火力が上がる。
- 装備品の信頼性が上がる。運用に投入するアサルトライフルは軽量である必要があるが、このことにより堅牢性はなくなり、特にフルオート射撃をした場合にはオーバーヒートや動作不具合を起こしがちになる。分隊支援火器は予備弾薬とともにスペシャリストが携行するため、分隊に過度な負担をかけることなく、堅牢なバレル(銃身)とその予備を持ち歩くことができる。
[編集] 日本における運用
陸上自衛隊では、長らく62式7.62mm機関銃を使用してきたが、これは扱いが難しい上にその重さが故に一人での運用は難しかった。そこで、ベルギー製のミニミ軽機関銃を住友重機械工業がライセンス生産し、5.56mm機関銃MINIMIとして配備され、62式7.62mm機関銃との代替が進みつつある。MINIMIは、アメリカ軍ではほぼ同じものがM249として採用されており、もちろん弾薬も共通である。