内藤朝雄
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内藤 朝雄(ないとう あさお、男性、1962年 - )は日本の社会学者。明治大学文学部准教授。専門は、社会学、臨床社会学、心理社会学。いじめ問題ならびに管理教育問題に関する研究で知られる。
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[編集] 来歴・人物
1962年、東京都生まれ。愛知県立東郷高等学校を中退。同高校在籍時代は、愛知県各地で実施されていた苛烈な管理教育の洗礼を受ける。この体験は、後の内藤のスタンスへ大きな影響を与えることになった。
その後、山形大学人文学部に進み、同大学を卒業後、東京大学大学院総合文化研究科に進学(国際社会科学専攻)。同博士課程単位取得退学後、明治大学専任講師を経て現職。また、東京大学及び立教大学の非常勤講師を兼任。学術修士。
[編集] 研究歴
本田由紀・後藤和智との共著『「ニート」って言うな!』では「ニート」が大衆の憎悪の標的とされていることを挙げ、メディアによる憎悪のメカニズムの再生産の危険性について指摘し大きな反響を呼んだ。
いじめ問題ならびに管理教育問題に関する研究も多く、2001年に著書『いじめの社会理論』を発表して以来、この分野の研究をライフワークとしている。2007年10月には、東郷高校における自伝的内容も網羅した、自身のいじめ理論入門書『〈いじめ学〉の時代』を上梓した。
[編集] いじめ学
内藤のいじめ研究の第一の特徴は、いじめという現象を心理-社会の接合面と捉えつつ、その発生から蔓延に至るメカニズムを精緻に分析したことにある。著書『いじめの社会理論』などで内藤が示したこの理論は、「いじめの発生メカニズムモデルを示した唯一の例」として高く評価された。
このモデルを踏まえ内藤は、現実のいじめに対する抜本的な対策として、「短期的対策」と「中長期的対策」を提言。すぐにでも実行可能で、いじめに対する確実な抑止力を持つものとしての前者に加え、より恒久的にリベラルな教育を実現する施策として後者をと、水準を2段階に分けてのアプローチを唱えている。
短期対策の具体的な柱としては「学校への警察介入」と「学級制度の廃止」の2つ。さらに中長期的対策としては、「教育チケット」導入等を柱としつつ、現行学校制度の発展的解体を志向している。
[編集] 社会的発言
社会学者の宮台真司との共著もあるようにリベラルな視座からの発言も多数なされている。思想的には「右でも左でもないリベラリスト」を標榜し、この勢力拡大が急務としている。また将来的には日本国憲法第9条を改正し、軍隊を正式に保有するべきであるとの見解を述べているが、それに先立って、まず日本国内からのタカ派一掃が必要とも主張している。
[編集] 主な発言
- ばかなタカ派の国家主義的全体主義的な右翼を潰すために、ばかな共産主義的全体主義的左翼をクビにして、右翼でも左翼でもないリベラルが力をつけることが必要
- わたしは憲法9条改正をすべきであると思う(9条以外はそのままでいい)。きちんとした軍備を保持したうえで、外務省を有能な外交能力集団にたたき上げる必要がある。右翼と左翼はもうやめよう。両方とも消えてなくなれ
- 憲法9条改正は必要だが、それを右翼勢力にやらせてはならない。憲法改正は、日本から右翼勢力を消滅させて、しかる後に右でも左でもないリベラリストの勢力によって実行されなければならない
[編集] 著書
[編集] 単著
- 『いじめの社会理論―その生態学的秩序の生成と解体』 (柏書房、2001年)ISBN 978-4760120888
- 『いじめと現代社会―「暴力と憎悪」から「自由ときずな」へ』 (双風舎、2007年)ISBN 978-4902465105
- 『〈いじめ学〉の時代』 (柏書房、2007年)ISBN 978-4760132195
[編集] 共著
- (宮台真司・藤井誠二)『学校が自由になる日』 (雲母書房、2002年)ISBN 978-4876721047
- (本田由紀・後藤和智)『「ニート」って言うな!』(光文社[光文社新書],2006年,ISBN 978-4334033378)