一液式ロケット
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一液式ロケットまたはモノプロペラントロケット(英: Monopropellant rocket)とは、単一の化学物質を燃料に使用するロケットである。通常、燃料は触媒としてスポンジ状の銀や白金を内蔵した反応槽に入れられる。よく使われる燃料としてはヒドラジン(N2H4)がある。最も一般的な触媒としては、粒状のアルミナをイリジウムでコーティングしたもの(例えば、Shell-405)がある。ヒドラジンには点火薬は不要である。Shell-405 は自発的触媒であり、ヒドラジンは接触しただけで分解し始める。反応は高熱を発し、1000℃のガス(窒素と水素とアンモニアの混合物)を発生する。他の燃料としては純度を90%以上にした過酸化水素があり、高温または触媒によって自然に分解する。
一液式ロケットの多くは、エチレンプロピレンゴムで内張りされたチタンまたはアルミニウム製の球状の燃料タンクが付属する。燃料タンクはヘリウムで加圧されており、燃料は反応槽に押し出される。反応槽と燃料タンクの間にはポペット弁がある。一般に人工衛星には複数の一液式ロケットがあり、それぞれにポペット弁がある。
人工衛星や宇宙探査機の姿勢制御ロケットは非常に小さく(直径3センチ以下)、4方向を向いた噴射口をまとめたクラスターとして実装されることが多い。
コンピュータが電磁石に電流を流すことで、ポペット弁が開き、ロケット噴射が行われる。一般に噴射は短い(数ミリ秒)。
一液式ロケットは他の推進技術に比較して、効率的とは言えないが、単純で信頼性が高いという利点がある。高い推力が必要な場合や、高い比推力が必要な場合は、他の推進技術を使う。