ワースブレイド
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ワースブレイドは1988年にホビージャパンから発売されたロボットファンタジーもののテーブルトークRPGのタイトル、およびそのシリーズである。
ゲーム製作は玩具企画やアニメ製作なども手がけている伸童舎によって手がけられ、ゲームデザイン(プロデューサー)は千葉暁、システムデザインは松本富之、ワールドデザインは日下部匡俊によって行われている。
1994年の「ワースブレイド スターティングブック」を最後にシリーズは長らく休眠状態になっていたが、2008年にd20システムを使用したワースブレイドの新作が発売されることがGAME JAPAN2008年3月号で発表された。
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[編集] 概要
「操兵」と呼ばれる巨大人型兵器が存在する中世ヨーロッパ風ファンタジー世界「アハーン」を舞台とし、PCは遺跡荒らしや用心棒稼業で日銭を稼ぐ"冒険者"となって世界を駆け巡る。 アハーンの世界観は聖戦士ダンバインや機甲界ガリアンといった、1980年代のファンタジーロボットアニメの影響を強く受けており、前近代の途上な世界にオーバーテクノロジーとして巨大ロボットが存在している。そのため、アハーンは操兵が存在する以外はごくスタンダードな「剣と魔法のファンタジー世界」になっている。操兵と全く関係ない事柄についても緻密かつ重厚な世界設定がされているのも特徴で、操兵のギミックに頼らずとも、十分にスタンダードなファンタジーRPGとして楽しめるようになっている。
[編集] システム
行為判定は10面ダイス1個による上方判定。LUC(幸運度)という能力を消費することで一時的に判定に使えるダイスの数を増やして達成値を上昇することができる。これによりロボットアニメ的なヒロイックな活躍を表現している。
キャラクターは クラス制でなくスキル制で表現される。キャラクターメイキング時に職業パックというものを選択することで、初期習得スキルが決定し、それから成長時にスキルのレベルを成長させたり、新しいスキルを習得していく。ただし、ワースブレイドでは、セッション中に行為判定に完全成功(判定に使った全てのダイスの出目が10だったとき)か絶対失敗(判定に使った全てのダイスの出目が1だったとき)したスキルしか成長の機会を得られないため、全く新しいスキルを習得することはきわめて困難となっている、よって、職業パックで初期習得されるスキルによって、ある程度のキャラクターの成長スタイルが決定される。 職業パックは複数種類あるが、基本的に以下の5種類に分けられる。この5種類がこのゲームのクラスのようなものと言える。
- 操手系 - 操兵の操縦者
- 練法師系 - 聖刻に関係する秘術「練法」の使い手
- 気功使い系 - 気功術の使い手。戦士であるだけでなく、聖職者も気功を使えるものがいる。
- 聖職者系 - 神に仕える神官。ごく普通のファンタジーRPG的な魔法を使える。
[編集] 操兵
操兵はワースブレイドというゲームの華にあたる部分である。操兵は本来は古代文明の遺品であり、現代で操兵を作れる技術を有している組織はたった二つしか存在していない。彼らは表向きは鍛冶師ギルドや宗教結社を名乗っているのだが、その実態は完全な秘密結社であり操兵製造技術が組織の外に漏れないように隠匿されている。彼らは操兵を各国に売ることで世界の軍事バランスを裏から操っている巨大な陰謀組織でもある。(これは、フィクションなどに良く出てくる「錬金術結社としての石工連合(フリーメーソン)」のオマージュでもある)
操兵が非常に高価であるこの世界では、操兵のほとんどは個人ではなく国が所有するものである。多くの国では騎士に与えられる馬や武具のような扱いになっている。操兵は国の武力の象徴のようなものであり、操兵を載ることは位の高い騎士の証明である。北方のダカイト・ラズマ帝国だけはそのような伝統を捨て去り、近代的な「軍隊」を操兵によって作ることで、操兵を「兵器」として運用し、地位と関係なく兵卒に操兵を操縦させることで圧倒的な戦果を挙げている。
この設定は一介の冒険者であるPCが操兵を手に入れることが困難であることも示している。実は、ワースブレイドというゲームには操兵をPCが手に入れるためのルールが存在していない。操兵は市場に出回るようなものではないので価格というものもなく、職業パックで操手を選んでも、操縦技術だけ与えられて操兵は与えられない。軍属でもない限りは操兵を触ることもできず、多くの冒険者たちは遺跡探索の結果運良く古代の操兵を見つけるか、敵の操兵を知略を駆使して奪うかのどちらかによって操兵を得る。 まず操兵を入手するためにいくらかの冒険が必要という「貧乏くさい」部分は、ロボットものの爽快感を手軽に得たいと考えている人には不評ではあるが、世界観を強く表現しているとして、ファンからは支持されている部分でもある。
ゲームシステムの部分では操兵は1個のキャラクターデータとしてあらわされ、いわば第二のPCである。 操兵は通常の人間とは異なる能力値と異なるルールで運用される。ワースブレイドは「人間サイズのキャラクターのためのルール」と「操兵サイズのキャラクターのためのルール」が別に存在していると考えるとわかりやすい。
操兵は異常なほど強く、操兵に載っていない者が操兵に勝つことはよほどのことがないとありえない。この圧倒的な力は操兵戦の醍醐味である。
PC全員が操兵載りということはゲーム的にまずありえないため、操兵戦の最中は操兵に載っていないPCが手も足も出ないということが頻発する。 そのため、ワースブレイドでは、一つの戦場に操兵に載っている者と載っていない者が混在して、互いのサイズの敵と戦うというバトルが推奨されている。
[編集] 練法
操兵に並ぶワースブレイドのガジェットが「練法(れんぽう)」である。練法はいわゆる魔法のようなものなのだが、忍術を強くイメージしている。 ワースブレイドにはほかにも、気功術、召霊衝法(しょうれいこうほう)という魔法体系が存在するのだが、練法はこれらとは比較にならないほど強力な力を出せる。
しかし、それだけ強力である代わりに、PCとして扱うには激しい制限が存在する。それは、練法はこの世界では悪魔の技として使うだけで魔女狩りのような目にあうということである。つまりは敵キャラクター向けなのだ。
練法がワースブレイドの中で魅力的なのは、これが数少ない、「生身で操兵を倒せる」技だからである。 不気味な仮面と黒いローブをかぶった邪術師の不可思議な術が、巨大な操兵が持つ剣という名の無骨な鉄の塊と渡り合う- このような光景はワースブレイドが醸し出す最大のロマンである。
[編集] 東方エクスパンション
アハーンの東方世界は、「巨大な蟲と樹海が人類の支配領域を侵食している、日本/中国風の文化を基底としたファンタジー世界」という、西方とは全く違う世界観になっている。(風の谷のナウシカともののけ姫を足し合わせた感じ、と言えばイメージしやすいだろうか)
ワースブレイドは、この東方世界で遊ぶための「東方エクスパンション」というシリーズがある。東方エクスパンションはサプリメントという扱いなのだが、実際には数多くの追加ルールがあり、別のゲームといって差し支えないものになっている。
「東方エクスパンション」の最大の特徴は「武操(ぶくり)」という武術であり、これを用いることで、巨大な怪物を武術で倒す武侠ファンタジーが手軽に再現できるようになっている。
[編集] 製品リスト
- ワースブレイド スタートセット
- 基本ルールブック。ボックス版。操兵に関するルール、練法・招霊衡法・気功術の1~3レベル術法についてなどを収録している。
- 東面の魔術師
- シナリオ集。A4書籍。スタートセット付属のシナリオ「魔の眠る山」の続編となっており、四操兵キャンペーンシナリオの二話目となる。
- 魔王の復活
- シナリオ集。A4書籍。「東面の魔術師」の続編であり、四操兵キャンペーンシナリオの最終話となる。
- マスタースクリーン
- ワースブレイド用のマスタースクリーン。4面という珍しい構成になっている。
- エクスパンションセット1
- サプリメント。ボックス版。追加拡張ルールと、練法・招霊衡法・気功術の4~6レベル術法、世界設定などを収録。
- エクスパンションセット2
- サプリメント。ボックス版。更なる追加拡張ルールと、練法・招霊衡法・気功術の7~9レベル術法、追加世界設定などを収録。
- エクスパンションセット3 術法エクスパンション
- サプリメント。ボックス版。術法使いのための追加拡張ルールと追加術法データなどを収録。
- エクスパンションセット4 操兵エクスパンション
- サプリメント。ボックス版。操兵に関する追加拡張ルールと、数多くの操兵データなどを収録。
- 聖者の仮面
- リプレイを中心にしたシナリオソースブック。A4ソフトカバー。
- 遥かなるカイ・ダイン
- リプレイを中心にしたシナリオソースブック。A4ソフトカバー。
- 操兵の書 西方操兵
- 西方での操兵の設定を、豊富なカラーイラスト付きで収録した副読本。A5単行本。操兵のメカニスムや図解も載っていて、ロボットアニメのファンブックに近い編集方針。
- ワースブレイドがよくわかる本
- ワースブレイドのガイドブック。富士見書房より富士見ドラゴンブックで発売。
- 東方エクスパンション1 梗醍果の王
- サプリメント。ボックス版。アハーン大陸東方を舞台にゲームをするための追加拡張ルールや世界設定などを収録。
- 東方エクスパンション2 吾伽式の練者
- サプリメント。ボックス版。東方でのプレイに必要な更なる拡張ルールや追加世界設定などを収録。
- ワースブレイドスーパースクリーン
- ホビージャパンのバインダー型マスタースクリーン「スーパースクリーン」のワースブレイド用サブセット。東方エクスパンション2までのほとんどのデータ、ルールのリファレンスが収録されている。
- ワースブレイド スターティングブック
- 西方に関する製品のルール、データ、世界設定などを再編集して改訂し、一冊にしたもの。A4ソフトカバー。
また、上級ルールブックが発売される予定もあった(RPGマガジンで開発の経緯が毎号紹介されていた)。これはサプリメントというより第二版ルールともいうべきもので、全くルール体系が異なるものになる予定であった。
[編集] ワースプロジェクト
ワースブレイドは単にテーブルトークRPGとしてだけでなく、伸童舎のメディアミックス企画「ワースプロジェクト」の一環として販売された。 ワースプロジェクトはアハーンを舞台にした作品を様々なメディアで送り出すというものであり、ワースブレイドが休止している現在でもほかのメディアでは継続している。
- 聖刻(ワース)1092シリーズ
- ワースプロジェクトの中核を成す代表作。ソノラマ文庫から小説を中心に展開されている。著者は千葉暁。メインイラストレイターには幡池裕行と神宮寺一を起用。2006年以降は設定の矛盾などを修正した「完全版」をソノラマノベルスより刊行中。
- ワースブレイドよりも数百年後のアハーン大陸の中原と東方を舞台に、快男児フェンと彼の操兵ヴァシュマールの英雄的活躍を描く。(ちなみに操兵の数が増えている以外は大して文明レベルは変わっておらず、いわゆる前近代のノリなのは変わっていない)
- なお、聖刻1092の時代を舞台にしたテーブルトークRPG「聖刻1092RPG」というものがワースブレイドとは別個に存在している。ほかにもカセットブックやカードゲーム、また、プレイステーションのRPGにもなっている。一時期はアニメ化の噂もあった。
- 聖刻群狼伝/聖刻群龍伝シリーズ
- 中央公論新社C★NOVELSにて小説で展開中。著者は千葉暁。メインイラストレイターには藤井英俊
- 聖刻1092よりも数十年前のアハーン大陸の西方が舞台。戦国時代に突入した西方での、若き公子ディアによる国盗りの物語である。
- 人馬操兵、龍操兵などのユニークな操兵が出てくるのが特徴のシリーズ。コミック化もされている。
- 剣の聖刻年代記シリーズ
- ソノラマ文庫から小説として展開中。著者は日下部匡俊。メインイラストレイターには撫荒武吉を起用。
- ワースブレイドの世界設定を舞台にした小説版である。年代記というだけあって、様々な時代と地域の様々な主人公の複数のシリーズがあり、それらをまとめて剣の聖刻年代記と呼ぶ。
- 真・聖刻(ラ・ワース)シリーズ
- スーパーファミコン用RPGソフト「真・聖刻」を中心としてメディアミックス展開したシリーズ。メインイラストレイターには只野和子を起用。
- 聖刻1092とほぼ同時代のアハーン大陸中原を舞台にした、聖刻1092の外伝的なシリーズ。聖刻1092と共通するキャラクターも登場する。
- アスペクトのログアウト冒険文庫で小説版が2シリーズ出た他、CDドラマも発売された。
- なお、ゲーム版は伝説級のクソゲーとして現在でも語り継がれるほど微妙な出来であった。
- 聖刻覇伝 ラシュオーンの嵐
- ラジオドラマ展開されたシリーズ。聖刻1092よりもはるか古代(ワースブレイドと同時代?)の中原を舞台にした物語。メインイラストレイターにはいのまたむつみを起用。
- 文化放送系でオンエアされた。前半15分は三重野瞳と石田彰をパーソナリティとしたトークでラジオドラマ本編に言及することは殆ど無かった。後半15分でサウンドドラマを展開していた。サウンドドラマ部分はビクターエンタテインメントから全四巻でCD化もされている。音楽は大島ミチルが担当しており、サウンドトラックも出ている。このラジオドラマの主人公・アーディ役は声優の岩永哲哉が担当した。
- 神聖刻記ブリーダーズ・ワース
- アスペクトのログアウト冒険文庫 で展開された小説。著者は七星亘。
- アハーン大陸の超古代文明時代を舞台にした物語。全二巻の小説があるがそれ以上の展開はされなかった
- なお小説版の展開以前に日本コンピュータシステムが同タイトルゲームの発売を予定していた。ジャンルはRPGで、ハードはPCエンジンCD-ROM²システム。きむらひでふみの手によるキャラデザイン等を掲載したチラシなども配布されていたが発売中止となっている。このゲーム版と小説版の関係は不明。
- 聖刻真拳プラグリュード
- ワースプロジェクトでは、ワースブレイドとは別個にテーブルトークRPGを発売する計画があった。それがこの「聖刻真拳プラグリュード」である。
- 当時人気を博していた『機動武闘伝Gガンダム』に大きな影響を受けた作品で、操兵同士の格闘戦をテーマにしたゲームになる予定であった。システムはカードを使い、パンチやキックなどの技のカードを場に出すことで、対戦格闘ゲーム的な「コンボ」をスピーディーに再現可能にするつもりだったらしい。
- RPGマガジンの57号から63号までにかけて紹介されたが、いつのまにか企画倒れになってしまった。
[編集] 外部リンク
- 伸童舎スタッフブログ(ゲーム開発元)
- わしの部屋 (世界設定と小説版を担当している日下部匡俊のサイト)