ルドラ
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ルドラ (रुढ्र [rudra]) は、インド神話に登場する暴風雨神である。その名は「泣く、吠える」を意味する語根√rudに由来し、「咆哮を上げる者」を意味する。
『リグ・ヴェーダ』では3篇の独立讃歌、一部がソーマに割かれている讃歌1篇、またソーマと共有する讃歌1篇がある。
その姿は赤褐色の肉体に黄金の装身具を着け、弓矢(あるいはヴァジュラ)を持つという。
風水害をもたらす荒ぶる神である反面、慈雨をもたらし豊穣と人々の健康・安寧を保障する存在でもある。また、医薬を司るという。 牝牛プリシュニーとの間にマルト神群と呼ばれる息子達がいて、彼らも暴風雨の神である。
『リグ・ヴェーダ』の中では彼はアスラとも呼ばれ、アスラ神族が悪魔とされる時代以前の名残をとどめている。
後のヒンドゥー教では完全にシヴァと同一視され神格を吸収されたが、ヴェーダでは実は「シヴァ」という名の方がルドラの別名の一つであり、ルドラがシヴァの前身と言うべきである。 後期ヴェーダ文献には、ルドラが悪魔の城塞三つを一矢のみで破壊したとされ、この説話も後にシヴァのものとされている。