ユナイテッド航空93便テロ事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ユナイテッド航空93便テロ事件 (United Airlines Flight 93)とは、2001年9月11日に、アメリカ合衆国のユナイテッド航空93便(ボーイング757-222、N591UA)がアメリカ同時多発テロに巻き込まれ、ペンシルヴァニア州、ピッツバーグ郊外シャンクスヴィルに墜落、破壊した航空事件である。この事故で、乗客、乗員が、合計44人(テロリスト4人を含む)全員が死亡、生存者皆無という事態となった。アメリカ同時多発テロでハイジャックされた他機(アメリカン航空11便、ユナイテッド航空175便、アメリカン航空77便)とはハイジャッカーの人数が異なり、他機はすべて5人であったものの、93便のみ4人だった。
アメリカ同時多発テロで唯一、ハイジャックされた旅客機で失敗したものとなった。テロリストたちの計画通りにいけば、ワシントンDCのアメリカ合衆国議会議事堂、もしくは、アメリカ合衆国大統領官邸ホワイトハウスに衝突していた。
目次 |
[編集] ハイジャッカー
ハイジャッカーは全部で4人。
- ジアード・ジャーラー(レバノン人)-パイロット役
- アフメド・アルハズナウィ(サウジアラビア人)
- アフメド・アルナミ(サウジアラビア人)
- サイード・アルガムディ(サウジアラビア)
[編集] 事件の概要
ユナイテッド航空93便は、ニュージャージー州のニューアーク国際空港を出発し、カリフォルニア州のサンフランシスコ国際空港に到着する予定だった。旅客機は、最大182人乗りだったのだが、当日は、乗客37人(テロリストを含む)、乗員7人、合計44人だけしか搭乗していなかった。93便は、午前8時00分離陸の予定であったが、8時42分と、42分も遅れた離陸となった。
9時00分に先にハイジャックされたユナイテッド航空175便の事態を不審に思ったUA社は全機のコックピットメインモニターに”侵入者に警戒せよ”と言う通告を出した。9時24分、93便は管制塔から”他機、2機がニューヨークのWTCに突っ込んだので、ハイジャッカーには十分、注意してください”と、警告を受ける。9時26分に、パイロットは管制からの警告を確認する。
[編集] ハイジャック
それから1分後、9時27分に、4人のハイジャッカーがコックピットに押し入る。ハイジャッカーらがコックピットに押し入った際、パイロットとハイジャッカーは一戦を交えたため、旅客機の高度が低くなったことを航空管制官らは確認している。9時28分に航空管制官らは、93便のコックピットで悲鳴を聞いた。それから40秒後、ふたたび航空管制官らは、93便のコックピットで複数の悲鳴を聞いている。航空管制官らは93便へ応答を頼むが、回答はなかった。この時点で、高度は700ft(200m)にまで落ちていた。
9時32分、ハイジャッカーらは乗客らにたいして、アラビア語なまりの英語で、"みなさん、キャプテンは無事です。我々は爆弾を持っています。無事でいたければ、その場に静かに座っていてください。"とインターホンで話すが、これはハイジャッカーらの誤りで、管制塔に伝えられていた。管制塔は、"もう一度ゆっくり言ってもらえますか"と返答すると同じ言葉が返ってきた。ハイジャッカーらがこの誤りに気づいていたのかどうかは、わかっていない。その後、93便は進路を東に変えながら高度を下げていく。
[編集] 乗客·乗員との連絡
ハイジャックがあってから乗客10人と乗員3人は、管制塔や家族へ携帯電話や機内電話で連絡をする。乗客や乗員らの連絡で明らかになったのだが、1番はじめにコックピットに入っていったのは、1B(最前列)に座っていた人とのことなので、1番はじめにコックピットに入っていったのは、パイロット役のジアード・ジャーラーだとされる。その後、残りの3人のハイジャッカーがコックピットに入っていったという。2人目はナイフで武装していて、3人目は爆弾らしきものを持っていたという。また、このときパイロット2人と乗客の男性1人がナイフで刺された。
93便からの最初の通報はファーストクラスの乗客、トム·バーネットが妻に、"ハイジャックされた、通報してくれ"と電話したのが最初とされる。乗客はその後の電話で飛行機2機がWTCに激突した事を知る。その後は乗客も乗員も、ハイジャックされた他機について質問するようになる。トム·バーネットは妻に対して電話で、"心配しないでくれ、我々は何か対策をとるつもりだ。"と伝えている。彼以外にも複数の乗客が、"今から飛行機を取り戻す。"などの言葉を残していた。このことからこの時点で乗客らは、ハイジャッカーに対して攻撃的になっていたと推定される。
[編集] 墜落
9時53分、ハイジャッカーらは乗客の行動を察知してか"連中が来たら非常用の斧を使え"との会話が記録されている。9時57分頃、乗客トッド・ビーマーの"Are you guys ready? Let's roll.(用意はいいか?やってやろうぜ)"との掛け声で乗客たちはハイジャッカーに襲い掛かって行ったと思われる。9時58分、ボイスレコーダーに乗客の怒鳴り声が記録されている。9時59分には乗客がコックピットのドアを叩き壊そうとする音が聞こえ始める。その音に混じってハイジャッカーが"ドアを押さえろ、絶対中に入れるな"と指示している。10時00分、機体が急降下、急上昇を繰り返す。10時01分、ハイジャッカーが"墜落させてやる、酸素を止めろ"と指示する。
10時03分、933kmものスピードを出したまま、ペンシルバニア州ピッツバーグ郊外シャンクスヴィルに墜落する。墜落理由には、ハイジャッカーたちの操縦ミス、乗客や乗員たちの抵抗などがあげられる。
有力な説は、男性の乗客達がコックピットに突入を試み、飛行機の操縦をしていた犯人が「もう逃げられない!ここで落とすぞ!」と言い残し、墜落したと言われている。また、墜落直前に男性乗客達がコックピットに進入をしたと思われる。(これは、遺族のみに公開された、ボイスレコーダにドアが開く音が残されていたため。)
その後、墜落現場には慰霊施設が建てられている。
[編集] 事件に関する映画
- ユナイテッド93-アメリカ映画