ベリ
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[編集] 概要
彼は神フレイによって殺される人物として知られるようである。
スカルド詩や古エッダにおいて、フレイはしばしば「ベリの敵」や「ベリの殺し手」と表現される。一例として『巫女の予言』では、「輝くベリの殺し手(=フレイ)がスルトに立ち向かう」といった表現がある。
フレイがベリを殺した経緯は『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』37章で述べられている。フレイは彼の宝剣を、ゲルズに求婚するため差し向けた召使いのスキールニルに褒美として与えていた。そのため代わりの武器がなく、牡鹿の角を使ってベリを殺害した。
同章にはまた、「フレイは素手でもベリを倒すことができたが、しかしラグナロクが到来しムスペルの子らと戦う時には宝剣がないのを悔いるだろう」という趣旨の記述がある。
[編集] 異説
[編集] ゲルズの兄
ベリがゲルズの兄だという説もあるが、これは、『古エッダ』の『スキールニルの歌』第16節において、ゲルズが「外に兄を殺した人がいるのだったら怖ろしい」という趣旨の発言をしており、この兄の正体が不明であることからベリがその兄だと考えられたことによるであろう。
イギリスの著述家ドナルド・A・マッケンジーは、さまざまな伝承を取捨選択し物語仕立てにして北欧神話を紹介するその著書『北欧のロマン ゲルマン神話』(邦題)において、ゲルズに自身の兄の名がベリだと言わせている[1]。 この部分が著者の創作なのか、同書8頁に執筆にあたって参考にしたとある『Teutonic Mythology』(スウェーデンの民間伝承学者ヴィクトル・リュードベリ(en:Viktor Rydberg)の著書。題名日本語訳は『ゲルマン神話』)にそのような記述があったのか、はっきりしない。
[編集] 星になる
『世界神話伝説大系29 北欧の神話伝説(I)』(松村武雄編、名著普及会、1980年改訂版)の252-254頁でも、ベリの殺害の経緯が述べられている。フレイが宝剣を手放したと聞いたベリは仲間の巨人が制止するのもきかずアルフヘイムのフレイを襲うが、フレイは壁に掛けていた大鹿の角で彼を撲殺した。彼の闘志に感心したフレイは、ベリの体を天空に投げ上げて星にしたという。しかしこの物語の原典について編者は説明をしていない。