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フューリアス (空母) - Wikipedia

フューリアス (空母)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

大型軽巡洋艦期のフューリアス
大型軽巡洋艦期のフューリアス

フューリアス(Furious)は、イギリス海軍が大型軽巡洋艦を改装することにより保有した最初の航空母艦である。1915年6月8日起工。1916年8月15日進水。1917年6月26日竣工。

目次

[編集] 艦歴

第一次世界大戦時、第一海軍卿ジョン・アーバスノット・フィッシャーの発案で、ドイツのバルト海の海岸部攻撃用として、35口径18インチ(457mm)単装砲2門、軽微な装甲を持つ艦(ハッシュ・ハッシュ・クルーザー)として本艦は建造されることとなった。準姉妹艦に15インチ連装砲塔2基を搭載したカレイジャスグローリアスがある。しかし、フューリアスは戦局の転換に伴って建造中止となり、当時発達の著しかった航空機を洋上で運用可能な艦艇として改装されることが決定した。

[編集] 改装終了

竣工時
全長×全幅 239.66×26.8メートル
基準排水量 22,450トン
速力 32.5ノット
飛行甲板長(長×幅) 70×15メートル
武装 18インチ砲(後部)1門、14センチ砲10門、7.6センチ高角砲5門、53センチ魚雷発射管6門
搭載機 固定脚機5から6機、水上機3機

(1917年3月 - 6月)

前部18インチ砲を撤去し、長さ70メートル幅15メートルの甲板を装備した。ここだけ見れば空母といえるが、中央部に艦橋と煙突、後部に18インチ砲を搭載するという航空巡洋艦(航空戦艦)とも言うべき艦として就役した。

固定脚を装備した航空機を運用可能な艦となったフューリアスは運用実験を行うこととなったが、発艦は容易であったが(当然であるが)着艦は不可能な状態であった。本艦から飛び立った機体は、近くに着水(水上機)するか、陸上まで飛んで帰り艦が寄港後運び入れることとなった。このような運用上の不便さから、本艦搭載機乗員は自主的な「着艦」訓練を実施することとなる。

着艦と言っても現在のそれとは異なり、艦横を失速ぎりぎりで飛行し、艦橋を越えたときに機を横滑りさせ甲板上に持ってくるというアクロバット的な方法である。言うまでもなく高度な技術を必要とし、危険を伴う着艦法であり、着艦直後そのまま甲板から海に転落し、パイロットは死亡するという事故が起こった。この結果から着艦訓練は危険と判断され、全面的に禁止されることとなる。

[編集] 第一次改装

フューリアス(1918年時)
フューリアス(1918年時)

(1917年11月 - 1918年3月)

このような艦では作戦遂行にも支障をきたすため、後部18インチ砲を撤去してそこに85×20メートルの着艦用甲板を設置することとなった。しかし、艦橋とともに煙突もそのまま残されており、機関から出る排煙の問題を解決できていなかった。これを飛行場でたとえれば、滑走路の真ん中にコントロールタワーが立っているようなものであり、飛行機にとってじゃま以外の何者でもない代物である。後部に着艦した飛行機を前部へ運ぶために、艦橋構造物の脇を通る通路も設けられたほか、飛行機が艦橋構造物に激突することを防止するため、着艦用甲板前部にネットを張り煙突を防御する策を施された(1918年当時の写真にある、煙突後部から延びる斜めのバーがそれである)。

こうした対策を施されたが、着艦実験は失敗に終わっている。煙突の排煙と艦橋の影響で気流が乱れ、とても着艦できる状態ではなかったという。運良く乱れが少ない状態でも、今度は甲板上が無風に近い状態となっており、後部甲板では長さが足りずネットに頼った着艦になったという。結局、本艦は空母として着艦不可能と判断され、大戦終結まで後部は格納庫兼整備設備として使用され、フューリアスは発艦専用として運用されることとなる。

しかしこの失敗が、この後建造されるアーガス及びイーグルに活用されることとなった。

[編集] 第二次改装

第二次改装時
全長×全幅 239.66×26.8メートル
基準排水量 22,450トン
速力 30.5ノット
飛行甲板(長×幅) 175.6×24メートル
武装 14センチ砲10門、10センチ連装高角砲6門、8連装ポンポン砲6基、20ミリ機銃22門
搭載機 固定脚機33機
全通飛行甲板を持つに至ったフューリアス
全通飛行甲板を持つに至ったフューリアス

(1922年6月 - 1925年8月)

「航空機の離着艦には、甲板から構造物を無くすことが必要」との教訓から、以降建造(もしくは改装)される全て航空母艦の飛行甲板には、離発艦に適した全通甲板が採用されることになる。結果、アーガスは構造物を持たない平甲板型、イーグルは右舷に艦橋を持つ島型空母として竣工した。この2隻の運用実績からフューリアスは再度改装され、完全な平甲板型の空母になるのだが、ここでも新機軸が取り入れられている。

それは、飛行甲板を上下二段持ち、上段は着艦及び攻撃機用、下段は戦闘機用と発着艦もしくは複数機同時発艦が可能となるようにしたことである。下段の飛行甲板はかなり短いが、当時は複葉機が主力でありこれでも運用は可能と判断されていた。このアイデアは日本海軍に取り入れられ、赤城加賀は三段式の空母として改装されることとなる。しかし、この甲板は戦闘機用とはいえやはり短く、実際には対空火器を設置するなどして本来の運用はされなかった。煙突は、アーガス同様艦後部まで延びる誘導煙突となっているが、アーガス及び加賀のように艦脇から排煙するのではなく、飛行甲板最後部から一括排煙する形式となっている。

巡洋戦艦として運用されていたカレイジャスとグローリアスは、本艦より少し遅れて煙突と一体化した大型のアイランドと二段式飛行甲板を持つ空母に改装された。また、フューリアスも第二次世界大戦直前に小型の指揮所を上部飛行甲板の右舷前方へ設置している。

[編集] 戦歴

1918年3月15日に再就役したフューリアスは第一次世界大戦に参加。1918年7月にはトンデルン攻撃をおこなった。

第二次世界大戦の開戦時にはフューリアスは本国艦隊に所属していて、主に大西洋でのUボート狩りなどに従事していた。

1941年5月19日から22日、空母アーク・ロイヤルと共にマルタへ戦闘機を輸送(スプライス作戦)。6月5日から7日(ロケット作戦)と6月29日から7月1日(レイルウェイ作戦)にも空母アーク・ロイヤルと共に同様の任務に従事。7月30日、フューリアスを発進した攻撃隊がペツァモを攻撃。9月13日、アーク・ロイヤルと共にマルタへハリケーン戦闘機45機を送る。1942年8月、ペデスタル作戦の際にマルタへの戦闘機を運んだ(ベローズ作戦)。1942年8月16日から18日、マルタへスピットファイア戦闘機の輸送をおこなう(バリトン作戦)。10月28日から3日にもスピットファイアを輸送。その後は北アフリカ上陸作戦(トーチ作戦)、ノルウェー・アルタフィヨルドのドイツ戦艦ティルピッツ攻撃に参加した。

老骨に鞭打って第二次世界大戦を戦い続けたフューリアスであったが、彼女に代わる艦隊型空母が就役し、ヨーロッパ大陸への侵攻作戦が一段落した1944年9月に予備艦に指定されて第一線を退き、1948年に除籍・解体され、その波乱の生涯を終えた。

[編集] 関連項目


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