ピグマリオンコンプレックス
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ピグマリオンコンプレックスとは人形偏愛症を意味する用語。より広義では女性を人形のように扱う性癖も意味する。英語ではピグマリオニズム(英語:Pygmalionism)と言われる性癖である。また、パラフィリア(性嗜好異常)の用語としては、こうした嗜好はアガルマトフィリア(英語:Agalmatophilia)またはスタチューフィリア(英語:Statuephilia)と呼ぶ。ただし、社会的に犯罪とされるレベルに達しているか、精神的苦痛を訴えている場合でなければパラフィリアとはみなせないとされる。
[編集] 概論
ギリシャ神話には、キュプロスの王であるピュグマリオンが自ら彫り上げた象牙の人形を溺愛し、彼は人形の命をアフロディテからもらうという逸話があり、これが語源である。しかし、人形を溺愛した別のとある王は「私がどんなに望もうと何も与えてはくれないからこそ、私は彼女を愛しているのだよ」と語り、自分はピグマリオンとは異なる事を示唆した[要出典]。現在、人形が人間になるという童話を信じている層は少ないと推測されるため、後者に属する類型が一般的とされる。神話以外の物語作品でも、時代を問わずしばしば題材にされる(近年著名となった『ローゼンメイデン』という漫画作品も、その一例)。
一方で、女性を人形のように扱う性癖もありこれもピグマリオンコンプレックスと言われる。日本では『源氏物語』で光源氏が紫の上を自分好みの女性に育てる場面がある。他にも日本では谷崎潤一郎の『痴人の愛』、石田衣良の『東京DOLL』などこれをモチーフにしたものが散見される。日本以外では、戯曲『人形の家』において社会全体に蔓延していた「女性を人間扱いしない傾向」が批判され、映画では『マイ・フェア・レディ(原題:ピグマリオン)』において、理想の女性となった主人公の自立が描かれており、概して悲劇的な結末となることが多い。
[編集] 偏見
2006年現在において、日本のみならず海外でも少女を10年弱監禁する事件が相次いで発覚している事も影響し、こうした嗜好・性癖はかなり異常な印象を持たれている。映画『コレクター』に見られるような偏愛が高じて相手を監禁するという行動は、この性癖を遠因とするのではないかという短絡的な発想からフィギュア収集を趣味とする人々に対する偏見が存在している。ただ、フィギュア収集を趣味とする人々のすべてがピグマリオンコンプレックスであると断じることは暴論であり、監禁事件の犯人が総じてピグマリオンコンプレックスであると結論付けることも適切ではない。