バートン・L・マック
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バートン・L・マック (Burton L. Mack, 1931年 - ) は、アメリカの新約聖書学者。
[編集] 概説
1931年、アメリカのロサンゼルスに生まれる。長老派牧師の家庭に生まれ、ドイツのゲッチンゲン大学で博士号を取得。1980年以降、カリフォルニア州のクレアモント神学校の大学院で宗教学を教えている。
1993年の『失われた福音書 - Q資料と新しいイエス像』では、新約学者の間で定説となっている福音書記者たちが参照したイエス語録「Q」の復元と分類を行い、それが書かれた時代背景、それを持ち続けたイエス追随者達の共同体がどのような物だったかを考察している。彼らはイエスの言葉をライフスタイルの指針として用いたイエス運動のグループであり、後のキリスト教徒とは違っていたとする。マックはこの著作でQ資料を最古の犬儒派的テキストからなるQ1、時代との衝突において、グループの正当性を主張するQ2、ユダヤ戦争の混乱後に付け足されたQ3の三つに分類している。(Qの三分類はクロッペンボルグの研究に拠る)
1996年の『誰が新約聖書を書いたのか』は前掲『失われた福音書』の続編とも言うべき書物で、Qの会衆やエルサレムの柱たち、キリスト・カルトの発生、パウロの手紙、福音書や使徒文書の成立過程を順を追って解説したものである。
マックの著作において、イエスは犬儒派的な教師として想像されるが、その具体的な行動や生涯はあきらかにされてはいない。イエスに関する奇跡物語、十字架による殉教物語と復活、12弟子の概念は各種サークルの中での神話創造過程として解説され、実際の歴史とは別に創作されたフィクションである事を示唆している。
[編集] 主要著作(日本語)
- 『失われた福音書 新装版』青土社
- 『誰が新約聖書を書いたのか』青土社
- 『キリスト教という神話』 青土者