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ハンス・バルドゥング - Wikipedia

ハンス・バルドゥング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ハンス・バルドゥング自画像
ハンス・バルドゥング自画像

ハンス・バルドゥング・グリーンHans Baldung Grien/Grün, 1480年頃 - 1545年)は、ルネサンス期のドイツ画家版画家木版画)。アルブレヒト・デューラーの最も優れた弟子と考えられている。

目次

[編集] 生涯

バルドゥングはドイツシュヴァーベンのシュヴェービッシュ・グミュントに、法律家の子として生まれた。1492年シュトラースブルクに移る。一家の男の中で彼だけが大学に行かなかった。これは、当時の画家としては珍しいことである。彼は人生のほとんどをシュトラースブルクとフライブルクで過ごした。1503年、彼はニュルンベルクにあるデューラーの工房に入った。おそらくシュトラースブルクで若干の絵の修行をした後だと思われる。デューラーの工房には1507年までいたが、デューラーがイタリアに2度目の旅行をしている間は、工房を任されていたようである。彼が「グリーン(緑)」というあだ名がついたのもこのニュルンベルクにいた時だと思われる。この工房には3つの組合があったらしく、それで後にモノグラムにもう1文字付け足すためにその名前を加えたというのである。また一方で、「グリーン」は「grienhals」(ドイツ語で「魔女」)に由来するという説もある。1521年オランダに旅行した時のデューラーの日記を見ると、彼はバルドゥングの人と作品に魅了されていると書いている。デューラーが死んだ時、バルドゥングも親密な友情の証に一房の髪の毛を送った。

ハンス・バルドゥング『死と乙女 Der Tod und die Frau』(1517年)スイス、バーゼル市立美術館
ハンス・バルドゥング『死と乙女 Der Tod und die Frau』(1517年)スイスバーゼル市立美術館

1509年、バルドゥングはシュトラースブルクの市民権を得て(今はフランスだが、当時はドイツだった)その地で暮らした。1513年、フライブルグに行ったのは、大聖堂の大きなアルターピース(祭壇飾り)を描くためで、1516年に完成。1517年にシュトラースブルクに戻ると、1545年に町の評議会員として死ぬまで、そこに居続けた。妻のマルガレーテ・ヘルリンもその土地の著名な一族の出で、多くの地所を所有していた。

[編集] 作品

何人かの研究家たちが彼の最初の仕事だと主張しているのは、バーデン・バーデン近郊のリヒテンタール修道院礼拝堂にある、「H.B.」というモノグラムが織り交ぜられた数点のアルターピースである。そこには1946年の日付がある。また、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の肖像画も初期の作品の一つである。こちらは、現在カールスルーエの印刷博物館にあるスケッチブックの記述から、1501年に描かれたものとわかっている。1507年の『Der Sebastiansaltar(聖セバスティアン三連祭壇画)』は彼の苦心の成果であり、ザクセンのハレのマルクト教会のために描かれた。

バルドゥングの西洋古典版画は、デューラーっぽくはあるが、様式が(そして時にはテーマも)独特のものがある。そこにはほとんどイタリアの影響は見られない。木版画に較べれば彼の絵画はさして重要なものではないと言っていいくらい、彼は木版画の仕事をメインにこなしてきた。エングレービングで作られた作品は6点しかないが、とても優れたものである。キアロスクーロ木版画が流行すると、彼もそれを作った。1枚の木版画に1510の階調を付けたという[1]。数百に及ぶ彼の木版画のほとんどは本のための依頼で、当時はそれが普通だった。彼の「零葉」木版画(つまり本の挿絵ではないということ)は100に満たないと言われるが、その正確な数に関しては、2冊のカタログで異なっている。

バルドゥングは魔女に強い関心を持っていて、ガッシュで仕上げられた美しいスケッチの他、さまざまな媒体にたくさんの絵を描いた。その技術処理は、他の彼のどの作品よりも官能的である。

ハンス・バルドゥング『魔女とドラゴン Stehende Hexe mit Ungeheuer 』
ハンス・バルドゥング『魔女とドラゴン Stehende Hexe mit Ungeheuer

製図工としての完全な正確さはなく、彼の人体構造のとらえ方は、時に不快なものがある。また、過度におびただしく飾り立てた装飾品も彼の悪趣味をあらわにしている。彼の絵で、パグ(ブルドッグに似た小型の愛玩犬)に似た人の顔以上に特徴的なものもないだろう。雰囲気や光と影を意識しているような痕跡もそこにはない。よく彼のことを「北のコレッジョ」と呼ぶが、彼の作品は、たとえば黒が、さえない黄色、汚い灰色、不純な赤とコントラストをなすなど、けばけばしい雑多な色の奇怪な寄せ集めである。また人体の描き方も、線でざっと描いたものに上塗りしたに過ぎない。とはいえ、彼の作品は概ね興味深い。なぜならその絵の中には、野性的で幻想的な力強さがみなぎっているからである。

バルドゥングは肖像画家としても有名である。先にあげたマクシミリアン1世の他にも、神聖ローマ皇帝カール5世の肖像画を描いている。バーデンのフィリップ1世の胸像は、1514年より前に、彼がバーデンを統治していたツェーリング家と関係があったことを物語っている。またその後にも、バーデン辺境伯クリストフ1世、その妻オッティリエと子供たちを描いている。デューラーやクラナッハ同様に、バルドゥングも熱心な宗教改革の支持者であった。1518年にはアウグスブルクの帝国議会の場に居合わせたし、マルティン・ルターの木版画も1点作っている。その木版画の中でルターは上空に鳩のような形で浮いている精霊に護られている。

[編集] 参考文献

ウィキメディア・コモンズ

Bartrum,Giulia; German Renaissance Prints, 1490-1550; British Museum Press, 1995, ISBN 0-7141-2604-7

[編集] 外部リンク


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