ノーデンス
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ノーデンス(Nodens) は、クトゥルフ神話作品、特にオーガスト・ダーレスの作品に登場する神格。「旧神」(Elder Gods)の一柱とされることもあり、人間に対して比較的好意的な存在として描かれ、「旧支配者」(ダーレスの神話体系における邪悪な神々)などから人間を助けることもある。
オリジナルの名称はアーサー・マッケンの著作にあらわれ、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが自分の著作の中で、その性格をはっきりと打ち出した。また、そもそもの原典はケルト神話におけるヌアザと同一視される、イングランド西部のセヴァン河の神だとも推測される。
ラヴクラフトの『霧の中の不思議の館』においては、白髪と灰色の髭をもつ老人の姿で現れ、貝殻の形をしたチャリオットを操る、海の神のような性格を持つ。
また、同時期に執筆されたとされる『未知なるカダスに夢を求めて(幻夢境カダスを求めて)』においては、幻夢境(ドリームランド)の地下に広がる暗黒世界「偉大なる深淵」を治めており、「偉大なる深淵の主」(Lord of the Great Abyss)とも、「大帝」とも呼ばれる。また、夢にとり憑く黒く痩せこけた顔のない魔物、夜鬼(ナイトゴーント)を召喚して使役する。
「ラヴクラフト作品には見られない」と評される旧神のイメージは、『未知なるカダスに夢を求めて』のラストに登場するノーデンスから作られたのではないかとの見方もできる。ラヴクラフトの楽しみとして書かれたとされるこの作品では、他の作品とは異なり、明らかに「救世主」的な役回りでノーデンスが登場している。