トレイン・オン・トレイン
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トレイン・オン・トレイン(Train on Train; 異軌間軌道列車移動システムおよび列車搭載型貨物列車)とは、狭軌(在来線)の貨物列車を標準軌(新幹線)の専用車両にそのまま搭載して輸送するシステム、およびその専用車両のこと。言うなれば新幹線による車両航送のようなものである。
北海道新幹線(新青森駅~新函館駅間は2015年度開業予定)が青函トンネルを貨物列車と共用することから生じる問題への対策として、北海道旅客鉄道(JR北海道)によって研究が進められており、2007年度には実験車両が製作され、苗穂工場で検証試験が行われている。
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[編集] 概要
北海道新幹線は、青函トンネルとその前後の区間(新中小国信号場~木古内駅間)において海峡線を三線軌条化して貨物列車と同じ線路を走る事になっている。もともと軌間以外は新幹線と同じ規格で作られているので走るだけなら問題はないが、現在の貨物列車の最高速度は110km/h以下であり、待避設備が青函トンネルの前後にしか作れないため、ダイヤ作成上のボトルネックになる可能性がある。
新幹線開業後も現状と同じく1日30往復近い貨物列車が通るとすれば、1時間あたり2往復[1]に対して新幹線も2往復程度しか通すことができないと予想されている。これは新函館駅~札幌駅間開業後の東京~札幌速達列車の想定需要からするとギリギリの数字であり、臨時列車や東北北部~北海道の区間列車、将来的な需要増大などに対処する余裕がない。この状況の解決策として考えられたのがトレイン・オン・トレインである。
JR北海道は2004年に「貨物列車及び列車搬入搬出方法」として関連技術の特許を出願している[2]。「トレイン・オン・トレイン(以下ToTと略記)」という名称が初めて公になったのは2006年4月に坂本眞一会長が帯広市で行った講演会[3]でのことであり、2007年2月には北海道新聞[4]でも紹介された[5]。
[編集] 構造
日本貨物鉄道(JR貨物)のコキ100系コンテナ車は全幅2.64m、コンテナを搭載すると全高3.59m、重量59トン強である。一方、専用車両の仕様はまだ不明だが、従来の新幹線車両で最も大きいE4系は全幅3.38m、全高4.485m。専用車両の車輪をなるべく小さくし、床もなるべく低くまた薄くして、レールの代わりに同じ間隔で溝をつければ理論的には搭載することができる。
専用車両は両端に機関車がつくプッシュプル方式で、20両編成の貨物列車を搭載して200km/hで走ることが出来る。積み降ろしは機関車を切り離した端の車両から行う。積み降ろし施設の在来線側には専用車両の床と同じ高さにレールがある台座を用意し、台座と専用車両の機関車をトラバーサーで水平移動させることによって短時間で積み降ろしが出来るようにする[6]。
[編集] 他の方法
青函トンネルにおける貨物列車と新幹線の競合対策としては、これ以外にも幾つかの方法が提案されている。
- 貨物列車のスピードアップ
- 高性能機関車の開発によって、現行以上の速度で走らせる方式。大幅な高速度化をする場合、機関車だけでなく貨車の方も改装または新造が必要となる可能性が高く、海峡線を通る貨車すべてを置き換えるのはJR貨物に大きな負担がかかることになる。貨物電車やフリーゲージ貨車を投入する方式にも同じ問題が生じる。
- 新幹線貨物列車
- 標準軌車両にコンテナだけを直接搭載する方式。技術的な障壁は低いが、在来線貨物列車との積み替えにトレイン・オン・トレイン方式以上の時間がかかると見積もられている。
- 第二青函トンネル
- 津軽海峡にもう一本の海底トンネルを掘り、それぞれ新幹線と在来線専用にする。相当な金銭的、時間的コストが必要になる。
[編集] 脚注
- ^ 新幹線軌道の保守作業のため、深夜・早朝は列車が運行できない。
- ^ 特許・実用新案公報DBより「特開2005-262914」で検索可能。
- ^ 十勝毎日新聞 2006年4月26日
- ^ 北海道新聞 2007年2月24日
- ^ 一部のインターネット掲示板では同様のシステムが数年前から時々話題になることがあり、「コキごと(コンテナ車=コキ をまるごと 積み込む列車)」と呼ばれていた。
- ^ 特許請求の範囲には、専用車両の機関車が前方に退避したあと、カーブした線路のある台座を水平移動させて、斜め前方に敷かれている在来線の線路と専用車両内の軌道を繋ぎ、貨物列車を積み降ろしする方式や、機関車のすぐ後ろの車両の床の軌道をカーブさせて側面に搬入搬出口を設け、在来線の線路を直接そこに繋げて貨物列車を積み降ろしする方式も含まれている。