サイフォン
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サイフォンとは、隙間のない管を利用して、液体をある地点から目的地まで、途中出発地点より高い地点を通って導く装置であり、このメカニズムをサイフォンの原理と呼ぶ。 発明者は水時計などを作った紀元前3世紀半ばのアレクサンドリアの技術者、クテシビオスではないかと言われている。
[編集] 仕組み
ある液体があり、それを途中高い地点を越えて、目的地に運びたいとする。 この時、液体のある地点から目的地まで管を引き、何らかの作用によっていったん液体を管の中に満たせば、それ以上のエネルギーを与えることなく、液体は元あった地点から目的地まで移動し続ける。 サイフォンは、出発地点が目的地点より高い位置にあれば、液体の移動によって管の内部に真空を作りだし、それにより液体を吸い上げる。 途中、どれくらい高い地点を通ることができるかは、大気圧と液体の比重とによる。 最高地点においては、重力が液体を両方に引っ張ろうとし、それにより真空が発生しようとする。 出発地点にある液体表面にかかる大気圧は、液体中を伝わり、真空が作られるのを防ぐ。 管内部にある液体の重量と大気圧が等しくなると、真空が発生してしまい、サイフォンの効果は生じない。 1気圧下において、水ならば最高約10mの高さを通るサイフォンを作ることができる。 水銀の場合、おおよそ76cmのサイフォンが作成可能である。
サイフォンの仕組みを理解するためには、長く、摩擦のない列車が平原から丘を越えて平原より標高の低い谷へと伸びている姿を想像すればよい。 丘から見て、平原より低い部分に列車がさしかかっていれば、丘から谷へと滑り込んでいく部分が残りの部分を丘へと引っ張り上げ、谷へと導くことが感覚的に理解できるはずである。 列車と液体が異なるのは、管の中で何が液体を一つに結びつけているかである。 この例でいえば大気圧が列車の連結器に相当する。 連結器の双方にかかる重力が連結器の限界を超えると、連結器は壊れ、列車は分裂してしまう。 この列車のたとえは液体を鎖に模したモデル[1]で説明される。 これは、滑車を経由して鎖が一方からもう一方へと移動するものである。
サイフォンを作る管に特別な細工は必要ない。 液体に弾みを付けてサイフォンを始動するには、サイフォンのほかにポンプが必要になる(小型なら人間が口で吸い出して動かすこともあり得る)。 これは、漏れのない管を用いて、ガソリンを自動車のガソリンタンクから外部のタンクへと移し替えるときに用いられる。 管の中に最初から液体が充填しており、管を引く間にそれが抜けてしまわないよう注意するのであれば、始動にポンプは必要ない。 市販のサイフォンには、始動させるためのサイフォンポンプが付属している。
大規模なサイフォンは、局地的な水道設備や工業においても用いられる。 このような規模のものでは、取水口と排水口、最高地点とにおいてバルブによる制御が必要になる。 この場合、取水口と排水口のバルブを閉め、最高地点から液体を流し込むことでサイフォンを始動させる。 取水口と排水口とが水面下にある場合には、最高地点でポンプを動かして始動させることもある。 また、取水口と排水口との両方でポンプを動かして始動させる場合もある。
大規模なサイフォンにおいては、液体中に混入する気体が問題になる。 気体が混入していると、それらは最高地点に滞留し、やがては水の流れを分断して、サイフォンの動きを停止させてしまう。 サイフォンの構造そのものも、この問題を増幅させてしまう。 液体は最高地点に進むに連れて圧力が低下していくので、液体中に溶け込んでいる気体が気化してしまうからである。 温度が高くても同様の問題が起こるため、サイフォンを動作させるときには温度を低く保つことも重要である。 サイフォンの全長が長ければ長いほど、気化の可能性も高まるため、できるだけ短く設計するのも、この問題には効果がある。 局所的に高い部分があると、そこに気体が滞留してしまうため、最高地点以外はずっと上昇また下降するように設計するべきである。 液体の流れ自体に気体を移動させる効果があるので、取水口側では傾斜を緩やかにして気体が最高地点へと移動するようにし、排水口側では傾斜を急にして気体が液体の流れに逆らって動くようにする必要がある。 こうしておいて、最高地点では、気体を集め、排出するための空気室を設ける。