コリドラス
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コリドラス・アエネウス |
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コリドラスは、南米に広く分布するナマズ目カリクティス科コリドラス亜科コリドラス属に分類される熱帯魚の総称。
目次 |
[編集] 概要
体長は最大で10cm程度で、多くの種は6cm程度の小型のナマズである。河川の浅瀬に生息し、水槽でも底面を主な活動の場としている。水底を漁って微生物や有機物を採食するため、かつては水槽の掃除屋として残った餌を処理するために飼育されていたが、1980年代以降に色彩や体型に特徴のある新種が多数発見されたこともあり、近年では本種をメインとして飼育する愛好家も増えている。
コリドラスという属名には、ギリシャ語で「ヘルメットのような皮膚」といった意味がある。体は硬く大きな鎧状の二列の鱗板で覆われており、頭部はヘルメットのような頭骨で形成されている。
非常に種類が多く未記載種も含めると200種にものぼるといわれており、全ての魚種で最多の種を含む属である。一般的に知られている種類でも学名が付いていない場合もあるため、アクアリウムにおいては学名と併用してCナンバーというアラビア数字による分類がなされている。
[編集] 生態
一般的に、コリドラスは大規模な河川から分岐した比較的幅の狭い支流、沼地や池に生息し、流れが遅く透明度の高い浅瀬を好む。ほとんどの種は砂や小石、有機物が堆積した水底に住んで餌を探す底棲魚である。硬度5-10程度の軟水で弱酸性から中性の水質に適応する。塩分を含んだ水は好まず、潮の満ち引きの影響のある水域には生息しない。ほとんどの種は群れを作り、種によっては数百匹~数千匹以上の大群を作ることもある。多くのナマズは夜行性であるが、コリドラスは昼間に活動する。なお、夜間は不活発でほとんど動かないが、わずかな光のある夕暮れには昼間よりも活発になる。主に底に堆積した泥の中の有機物や微生物を餌としている。魚食性のコリドラスは存在しないが、魚の死骸を食べることもある。顔に生えたヒゲで底面を探り、短い管状の口から吸い込む。しばしば砂に顔を埋めるほど深く潜ることもあるため、飼育下では細かい砂が適する。コリドラスは普段は水底で活動するが、腸管呼吸のために時々水面に顔を出すこともある。
コリドラスは硬い外皮を持ち、ヒレの棘に毒を持つ種類も存在するため、魚食魚や鳥の捕食対象になりづらい。そのため、コリドラスのいくつかの種は他の魚の擬態(ベイツ型擬態)の対象となっている。オトシンクルスの一部の種類がコリドラス・パレアトゥスやその近縁種に模様を似せて擬態している他、Pimelodella科のBrachyrhamdia属の仲間がコリドラスに擬態している。Brachyrhamdia属の場合は、imitator種がコリドラス・メラニスティウスに、ranbarrani種がアドルフォイやデビッドサンズィに、meesi種がナッテレリーに似せた体色や模様を持ち、それらのコリドラスの群れに混じって生活している。またそれらとは逆に、コリドラス・ハスタートゥスはカラシンの一部に似せた模様と高い遊泳性を持ち、カラシンの群れに混じって生活している。
コリドラスはユニークな繁殖行動でも知られる。交尾の際、雄が雌に対して腹を向けて泳ぐ。雌は雄の生殖口から精子を吸い取り、腸管を経由して腹びれの間に抱えられた卵に放出することで受精が完了する。その後、雌は卵を石や水草などの表面にその卵を産み付ける。この時、雌が雄の腹に口を付ける姿勢がアルファベットのTに似ていることから、この状態はTポジションと呼ばれている。水槽内でも繁殖は容易で、石や水槽のガラスなどの壁面に卵を産む。
[編集] 飼育
温和な性格で一部を除くと同種間での喧嘩もめったに無く、他の熱帯魚との混泳に向く。ウィンクと呼ばれる目をきょろきょろと動かす様子など、愛らしい印象を与える見た目やしぐさからアクアリウムにおいて人気が高い。日本では、アマゾン水系・オリノコ水系・ラプラタ水系等南米各地で採取されたものと、東南アジアで養殖されたものが流通する。どちらも状態よく飼育すれば10年以上と長生きする。多くの種類は飼育しやすいが、砂が汚れていると感染症の原因になるために定期的に掃除が必要となる。
[編集] 体型の特徴
コリドラスは体型によってショートノーズタイプ、ロングノーズタイプ、セミロングノーズタイプのグループに分類される。ショートノーズタイプは体が比較的ずんぐりしており、吻端が突出していない。ロングノーズタイプは反対に体がスマートで大型化する種類が多く、吻端が長く突出する傾向がある。また、眼球がその他のタイプよりも上方に位置しており、顔の長さと合わせて馬面のような印象を受ける。セミロングノーズタイプはそれぞれの中間的な体型である。また、エレガンスのような体が菱形をした頭部の小さいタイプをエレガンスタイプ、ロレトエンシスのような体高が低く頭部が強い丸みを帯びるタイプをラウンドノーズタイプとして分ける場合もある。なお、通常コリドラスは他の個体に対して温和であるが、ロングノーズタイプの一部の種類は例外的にテリトリー意識が強く、争う性質がある。
異なる体型でありながら同じ模様をした種類が存在するのもコリドラスの特徴の一つである。例として、ショートノーズのアドルフォイにはセミロングノーズタイプにイミテーター、ロングノーズタイプにセラートゥス、エレガンスタイプにナイスニィと対応して同じ模様の種類が存在する。このような例は多くの種類で確認されており、コリドラスが現在も種分化を続けていることの証左であるとされている。
[編集] 主な種類
- コリドラス・アエネウス
- 学名 Corydoras aeneus
- 体長約5-7cm。通称、赤コリドラス。赤銅色の体にメタリックグリーンの発色を持ったコリドラスで、もっともポピュラーに流通している。非常に丈夫で、飼育や繁殖も容易。アルビノ個体は白コリドラスと呼ばれる。白コリドラスに色素を注射して色付けしたものも存在する。
- コリドラス・パレアトゥス
- 学名 Corydoras paleatus
- 体長約5-6cm。青コリドラスと呼ばれる種で、灰色の体に黒い斑模様が入る。白コリドラス、赤コリドラスと並んでポピュラーな種類。青コリや花コリなどとよばれることもある。東南アジアで養殖されたものが大量に輸入されている。
- コリドラス・ジュリー
- 学名 Corydoras julii
- 体長約5cm。白い体に、規則的に黒いスポット模様が入るコリドラス。日本で「ジュリー」として売られているのは、実際にはほとんどがトリリネアトゥスC. trilineatusという別種である。
- コリドラス・ステルバイ
- 学名 Corydoras sterbai
- 体長約5-6cm。茶褐色の地肌に乳白色のスポットが無数に入り、胸びれがオレンジ色に染まる美しいコリドラス。アルビノ個体も流通している。
- コリドラス・シュワルツィ
- 学名 Corydoras schwartzi
- 体長約6cm。2-4本ほどのラインが体の後半に入り、背びれの棘が白くなるのが特徴。特に雄の個体は背びれが長く伸びるために人気がある。ヒレの棘から分泌される毒がコリドラスの中でも強く、刺されると非常に痛むため注意が必要。
- コリドラス・アークアトゥス
- 学名 Corydoras arcuatus
- 体長約7cm。吻先から尾びれ手前までの背に沿うようにある黒色のアーチ模様が特徴。飼育は容易だが、繁殖は難しい。近縁種に大型になるスーパーアークアトゥス、ロングノーズ体型のロングノーズアークアトゥスなどが存在する。
- コリドラス・アドルフォイ
- 学名 Corydoras adolfoi
- 体長約5cm。抜けるように白い地肌に、目を通る黒いバンド模様(アイバンド)と背中に黒い模様が入り、肩口にはオレンジ色の発色がある。飼育は容易だが、水が合わないと肌荒れを起こしやすいので注意が必要。従来のコリドラスのイメージを払拭した美種。日本には1982年初入荷。
- コリドラス・イミテーター
- 学名 Corydoras imitator
- 体長約6cm。アドルフォイに似たカラーパターンを持つが、「偽者」という意味の学名の通りアドルフォイとは異なるセミロングノーズ体型をした別種である。この種を始めとして、コリドラスには似た模様で異なる体型をしたものが多く存在する。
- コリドラス・エレガンス
- 学名 Corydoras elegans
- 体長約4cm。頭部が小さく、紡錘状の独特の体型をしたコリドラス。他にウンデュラートゥス、ナイスニィ、ナポエンシスなどがこの体型をしたグループに入る。雌雄で模様が明確に異なり、雄はライン模様の目立つ比較的派手な色をしている。このグループは他の種類に比べ、水槽の中層をふわふわと漂っていることが多い。
- コリドラス・エヴェリナエ
- 学名 Corydoras evelynae
- 体長約5cm。非常に個体数が少なく、珍しいコリドラス。希少性と独特の模様から人気があり、高価である。アークアトゥスのようなアーチ模様が途切れたような模様を持つ。近縁、もしくは同種とされるエベリナエII、IIIと呼ばれる模様の異なるタイプが存在する。これらの模様の特徴から、別々のコリドラスとの間での交雑種という見方もある。
- コリドラス・コンコロール
- 学名 Corydoras concolor
- 体長約6cm。オレンジとグレーの2色に染め分けられた人気の高いコリドラス。背びれがよく伸長する。
- コリドラス・パンダ
- 学名 Corydoras panda
- 体長約5cm。白い地肌に、目を通る黒いバンド模様と尾柄部の黒い斑紋がパンダを連想させる。かつては高価だったが、養殖個体が主に流通するようになってポピュラーなコリドラスになった。
- コリドラス・ピグマエウス
- 学名 Corydoras pygmaeus
- 体長約3cm。非常に小型のコリドラスで、現地では大きな群れで生活している。
- コリドラス・ヘテロモルフス
- 学名 Corydoras heteromorphus
- 体長約6cm。全身に入る細かいスポット模様が特徴のロングノーズコリドラス。日本では最近になってドイツから養殖個体が輸入された。
- コリドラス・ワイツマニー
- 学名Corydoras weizmani
- 地肌の色は茶褐色で、背と尾の部分に黒い模様が入る。2004年11月に日本に初輸入された。洋書や学術論文でも生体写真を見ることのできなかった幻のコリドラスだったが、現在では流通する個体数も増え、人気種となった。
- コリドラス“アッシャー”
- 学名Corydoras tukano
- 体長約5cm。体側に入る大きなスポットが特徴的なコリドラス。日本には最近になって輸入され、一躍人気種になっている。輸入直後はデリケートなところがある。類似した模様のコリドラスとして、ロングノーズアッシャーや体側中央のスポットが薄いレイノルジィ、オルテガイが存在する。
[編集] 近縁の属
コリドラスに近縁な属として、同じカリクティス科のコリドラス亜科にアスピドラス(Aspidoras)、ブロキス(Brochis)、スクレロミスタックス(Scleromystax)が存在する。
- アスピドラス属
- コリドラスの体高を低く、眼を小さくしたような魚。学術的には頭骨の穴の差異によって分類される。3cm-5cm程度の小型の種類。
- ブロキス属
- コリドラスに似た姿を持つが、10cm-15cmと大型になる。また、背びれの鰭条の数が多く幅が広くなることで見分けられる。ブロキス・スプレンデンスはエメラルドグリーンコリドラスの名で販売されることもある。
- スクレロミスタックス属
- 最近までコリドラス属に分類されていたコリドラス・バルバートゥス(barbatus)およびバルバートゥスに酷似したクロネイ(kronei)、マクロプテルス(macropterus)、ラッセルダイ(lacerdai)、プリオノートゥス(prionotos)といった種類で構成されている。スクレロミスタックス属に移行された現在も、これらの種類は現在もアクアリウムにおいてはコリドラスとして扱われることが多い。渓流に生息する種類が多く、高温や水質の悪化に弱い傾向がある。
また、カリクティス科のカリクティス亜科にはカリクティス属、ホプロステルヌム属、ディアネマ属、カタフラクトプス属の4つの属が存在し、いずれもコリドラスに比べると大型であるが、行動やヒゲなどコリドラスと類似した特長を持っている。