グラフィックコントローラ
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グラフィックコントローラ(Graphics Controller)とは、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータシステムにおける、画像表示を担当する集積回路の総称。
実現する機能によってCRTC(CRT Controller)やVDP、グラフィックアクセラレータ、GPUなど複数の種類が存在する。
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[編集] 概要
もともとは、文字表示のみを行えるコントローラ(キャラクタディスプレイコントローラ)の機能を拡張し、1ドット単位で表示を行えるようにしたものを指す。 表示する内容をVRAM内に保持し、CPUからのVRAMアクセスと調停を行いながらVRAMを定期的に読み込み、映像信号を生成する。 出力する映像信号は、アナログRGB[1]やコンポジット映像信号(NTSC)など、用途に応じた形式をとる。
[編集] 歴史
[編集] 1970年代〜1980年代
当時のチップは非常に限定的なスプライトのBitBLTや、形状(多角形、矩形など)の描画を支援するにすぎなかった。なかには、いくつかの命令をディスプレイリストとしてまとめて実行したり、DMA転送を用いることでメインCPUの負荷を減らしたりするものもあった。
有名なものに、MSXに搭載されたVDP:Video Display Processorがある。 低価格汎用設計であり、低解像度での表示に特化したものであるが、スプライトやハードウェアスクロール等のハードウェアアクセラレーション機能を有していた。 MSXが同一規格、低価格での普及を目指していたことから、相当数(1990年代に400万台出荷、出荷を記念してMSX関連雑誌で特集が組まれた)が売られた。
汎用的なグラフィックス・コプロセッサが開発されたが、非常に高価でなかなか普及には至らなかった。MacintoshはQuickDrawを用いハードウェアでの描画支援機能なしで画像表示を行っていた。
1980年代から1990年代前半にかけてはBit Block Transfer(BitBlt)をサポートするチップと、描画を高速化するチップは別々のチップとして実装されていたが、チップ処理技術が進化するとともに安価になり、VGAカードをはじめとするグラフィックカード上に実装され、普及していった。
AmigaはビデオハードウエアにBlitterを搭載した最初のコンシューマ向けコンピュータで、1987年のVGA発表とともにリリースされたIBMの8514グラフィックスシステムは2Dの基本的な描画機能をサポートした最初のPC用グラフィックアクセラレータとなった。
1980年代後半から1990年代前半の日本国内で広く普及していたPCとしてPC-9801シリーズがあるが、同シリーズのグラフィックコントローラとしてGDC,GRCG,EGCが、後継の上位機PC-9821シリーズのグラフィックコントローラとしてPEGCが搭載されていた。これらは、グラフィックVRAMに直線・円弧・四角塗りつぶしなどの図形描画を行ったり、複数プレーンへの同時描画を行う機能を持っていた。
当時ゲーム用途にはスプライト機能が有利とされていたが、PC-9801シリーズのグラフィック・コントローラはスプライト機能を持っておらず、同時期のホビーユースパソコンの一部(X68000,MSX,FM TOWNS)はスプライト機能を持っていたため、グラフィック性能ではPC-98x1シリーズは劣るものだった。
[編集] 1990年代
1990年代の初めごろ、Microsoft Windowsの普及とともに、グラフィックアクセラレータへのニーズが高まり、WindowsのグラフィックスAPIであるGDIに対応したグラフィックアクセラレータが開発された。
1991年にS3 Graphics社が開発した"S3 86C911"は、最初のワンチップ2Dグラフィックアクセラレータであった。"86C911"という名は設計者がその速さの指標としてポルシェ911にちなんで名付けたほどである。86C911を皮切りとして数々のグラフィックアクセラレータが発売された。
1995年までには、あらゆる主要なPCグラフィックチップメーカーが2Dアクセラレータを開発し、とうとう汎用グラフィックス・コプロセッサは市場からなくなった。
VDP等の汎用グラフィック・プロセッサについては、カーナビ等の表示用に使用され新たな市場を形成している。 90年代後半からは、携帯電話に多色表示が用いられるようになり、その分野においても有用な市場を形成している。
1995年にMicrosoftがWindows95とともに開発したゲーム作成及びマルチメディア再生用のAPI群DirectXではさらにグラフィック・アクセラレータの性能が強化された。DirectXのコンポートネントのひとつDirect3Dは当初から3Dグラフィック処理のハードウエア化を想定したレンダリング・パイプラインを持っていた。
1997年当時のグラフィック・アクセラレータはレンダリングのみしかサポートしていなかったが、この頃からZバッファ、アルファブレンディング、フォグ、ステンシルバッファ、テクスチャマッピング、テクスチャフィルタリングなどの機能を次々搭載し、3Dグラフィック表示機能を競うようになった。DVD-Video再生支援機能を備えるチップも現れた。
[編集] 2000年代
2000年代以降では、上記2D描画機能に加え、より高度な3D描画に特化したジオメトリエンジンをハードウェアとして搭載した製品が登場した。これらの製品はGPUと呼ばれる。
詳細はGraphics Processing Unitを参照