うま味
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うま味(旨み、旨味、うまみ、うまあじ)は、主にアミノ酸であるグルタミン酸や、核酸構成物質のヌクレオチドであるイノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸など、その他の有機酸であるコハク酸やその塩類などによって生じる味の名前。5基本味などと言われる、5種類の基本的な味のうちの1つ。
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[編集] 概要
うま味は、特に日本料理、中華料理といった東アジアの料理やベトナム料理、タイ料理といった東南アジアの料理においてきわめて重要で基礎的な味である。中華料理では、うま味の事を「鮮味」(シエンウェイ)と呼称している。
料理で出汁を取るのは、食材からうま味物質を取り出し、それを料理に用いてうま味を効果的に増強するためである。フランス料理における一種のだし汁であるフォンにみられるように、西洋料理においても明らかにこの味覚を抽出し、料理のうま味を増強する技法が使われている。
しかし、古くからうま味の凝縮した調味料である魚醤や穀醤が意識して使われてきた東アジア圏や東南アジア圏の料理と異なり、西洋料理においてうまみは塩味や甘みなど複数の味の混合した味として認識され、独立した味とは意識されず、あまり重要視されてこなかった。このため、日本人学者が主張するうま味の実在は、長らく医学や生物学の分野でも欧米の学者によって強く疑われてきた。しかし、舌の味蕾にある感覚細胞にグルタミン酸受容体が発見され、うま味の実在が国際的にも認知されるに至った。こうした経緯により、うま味は国際的にも日本語起源の "umami" で呼ばれることが多い。
これらのうま味物質は蛋白質や核酸に富んだ細胞の原形質成分に多く含まれ、主として蛋白質の豊富な食物を探知することに適応して発達した味覚であると考えられる。
代表的なうま味成分のうち、アミノ酸の一種であるグルタミン酸は植物に、核酸の一種であるイノシン酸は動物に多く含まれることが多い。イノシン酸など、うま味を感じさせるヌクレオチドは呈味性ヌクレオチドという。
また、アミノ酸系のうま味成分と核酸系のうま味成分が食品中に混在すると、うま味が増すことが知られている。これを「うま味の相乗効果」と呼ぶ。実際に日本料理では昆布出汁と鰹出汁を合わせるといった調理が行われ、中華料理でもシイタケと鶏がらスープを合わせるといった調理が行われている。
現在、これらの天然から取れるうま味成分は、主として発酵工業の手法で人工的に製造され、うま味調味料として使われている。うまみ調味料の製造においても、主成分のl-グルタミン酸ナトリウムの他に、グアニル酸とイノシン酸を添加して、うま味の相乗効果を出している例が多い。
[編集] 発見
東京帝国大学(現在の東京大学)教授だった池田菊苗によって、1908年にだし昆布の中から発見された。最初に発見されたうま味物質はグルタミン酸であった。
1913年、小玉新太郎が、鰹節から抽出したイノシン酸もうま味成分であることを確認した。さらにこののち、シイタケ中からグアニル酸が新たなうま味成分であることが発見された。
その他にも、食用のハエトリシメジに含まれるトリコロミン酸、毒キノコのテングタケに含まれるイボテン酸、貝類に含まれるコハク酸やコハク酸ナトリウムにも強いうま味がある。
また、レモンに含まれるクエン酸やリンゴに含まれるリンゴ酸などの果実酸類には、食品のうま味を高める作用がある。
[編集] 名称
うま味の命名は、池田菊苗によるものとされる。
「み」は、形容詞に付けてそういう状態であることを示す接尾語であり、これによれば旨みと表記することになる。ただし、栄養学などの分野では通常、うま味または旨味という表記が広く使われている。