スターリング・ヘイドン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スターリング・ヘイドン(Sterling Hayden、1916年3月26日 - 1986年5月23日)は、アメリカ合衆国ニュージャージー州出身の男優。
[編集] 略歴
生まれた時の名前はスターリング・レルイエア・ウォルター(Sterling Relyea Walter)だったが、父と死別し、母が再婚したことから、以後継父の姓であるヘイドンを名乗ることになる。銀行のメッセンジャーボーイ、船員、消防士などの職を転々とし、友人の紹介でパラマウント・ピクチャーズと俳優として契約を結ぶ。デビュー時のキャッチコピーは「映画史上最も美しい男優」だったが、彼自身は映画界に長くとどまるつもりはなかった。
第二次世界大戦が始まると、COI(後のOSS)に志願して映画界から離れることになる。COIでは偽名を名乗り、ユーゴスラビアでパルチザンのゲリラ活動を支援する任務につく。
戦後、マッカーシズムが台頭して非米活動委員会が結成され、ハリウッドにおける共産主義者のリストアップを開始すると、大戦中にユーゴスラビアのチトーなど共産主義者たちと交流を持っていたヘイドンにも追及の手が伸びる。ヨットを購入した借金の返済をするために映画界への復帰を願っていたヘイドンは、追及をのがれるために協力的密告者として証言台に立ち、そのことが後の彼の人生に暗い影を落すことになる。
ターザン役をオファーされるが断り、ジョン・ヒューストン監督の『アスファルト・ジャングル』に主演。以後、1950年代アメリカ映画を象徴するフィルム・ノワールと西部劇のスターとして活躍するようになり、スタンリー・キューブリックやニコラス・レイといったこの時代を代表する監督たちの作品にも主演した。
1960年代に入ると『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』に独断で核戦争を始める精神異常のリッパー将軍役で出演して、従来のスターイメージからの脱却を目指すが、フィルム・ノワールや西部劇もこの頃から衰退しはじめ、ヘイドンもまた活躍の場を徐々に失っていくことになる。
1970年代にはフランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』で、アル・パチーノ扮するマイケルが初めて殺人を犯す場面において殺される悪徳警官や、ベルナルド・ベルトルッチ監督『1900年』の第一部で誇り高い小作人頭を演じるなど、渋い名演技を残している。また『ジョーズ』の主役にも抜擢されたが、この役は結局最終的にロバート・ショウに取って代わられた。
船員時代に船長の資格も取っており、船に対する執着は激しいものがあった。生涯に3回離婚し、うち1回の離婚で元妻と揉めた時は、妻子の移転先であるタヒチへヨットで押しかけたというエピソードも残している。波乱に富んだ生涯を自伝にして、1963年に出版した。
晩年も脇役として映画出演を続けたが、1986年に癌で死去。享年70才だった。
[編集] 作品
- ヴァージニア-Virginia(1941)
- ハリウッド・アルバム-Variety Girl(1947)
- 狙われた女-Manhandled(1949)
- 熱風の町-El Paso(1949)
- アスファルト・ジャングル -While the City Sleeps(1950)
- アリゾナの襲撃-Flaming Feather(1950)
- 虐殺の砂漠-Hellgate(1952)
- 第七機動部隊-Flat Top(1952)
- 戦闘機攻撃-Fighter Attack(1953)
- カンサス大平原-Kansas Pacific(1953)
- 大砂塵-Johnny Guitar(1954)
- 赤い谷-Arrow in the Dust(1954)
- 三人の狙撃者-Suddenly!(1954)
- アラモの砦-The Last Command(1955)
- レイテ沖海空戦 永遠の海原-The Eternal Sea(1955)
- 現金に体を張れ -The Killing(1955)
- 西部の裏切者-Gun Battle at Monterey(1957)
- 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか -Dr. Strangelove: or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb(1963)
- 殺人美学-Hard Contract(1969)
- ゴッドファーザー -The Godfather(1972)
- ロング・グッドバイ -The Long Goodbye(1973)
- 1900年-Novecenco(1976)
- キング・オブ・ジプシー-King of the Gypsies(1978)
- 9時から5時まで -9 to 5(1980)
- 恐るべき訪問者-Venom(1981)