NBAサラリーキャップ
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NBAサラリーキャップとは、アメリカ男子プロバスケットボールリーグのNBAにおけるサラリーキャップ規定。NBAチームが所属する全ての選手の年俸の総額を、毎年一定の上限金額を設けて規定する制度である。いくつかの事項に限ってサラリーキャップの上限を超えることが認められているソフトキャップを採用している。
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[編集] 歴史
選手を育成しても年俸の上昇によって制限額を超過してしまい、手放さざるをえなくなるという悪循環から逃れる為、ソフトキャップを採用している。特にNBAではチームの支配下選手が15人しか認められておらず、選手放出の悪循環を招きやすいからだと考えられる。制限金額は総額でリーグ全体の収益の57%以上と定められており、毎年その総額を各チームに分配することが定められている。NBAにおけるサラリーキャップの歴史は古く、現在と方式は異なるもののNBA発足後の1946年には存在していた。現行の方式になったのは1984年である。
[編集] 契約
[編集] ルーキー契約
- ドラフト1巡目選手
NBAドラフトで1巡目(1位~30位)までに指名を受けた選手とは、順位により決められた金額の最大20%増で契約できる。通常4年の契約で、最後の2年はチーム・オプションと定められている。一定の期間内に、最大7年間の延長契約を結べるが、延長契約を結ばなかった選手には、クオリファイング・オファーを提示することになる。クオリファイング・オファーを受けた選手は、制限付きFAに、クオリファイング・オファーを受けなかった選手は、制限無しFAとなる。
- ドラフト2巡目選手
NBAドラフトで2巡目(31位~60位)までに指名を受けた選手とは、最長で2年の契約を結ぶことが出来る。ほとんどは最低保証での契約となる。
[編集] FA契約
FAには制限無しFA(RFA)と制限付きFA(UFA)の2種類がある。
制限無しFAの選手は、所属していたチームの制限を受けることなくどのチームとも自由に契約できるが、制限付きFAの選手は、所属していたチームの判断で新しい契約先が決まる。他のチームのオファーシートにサインをした後、サインから15日以内に所属していたチームが「マッチ」(オファーシートと同額を提示)すれば、所属していたチームと選手は契約することになる。15日以内に「マッチ」しなければ、サインしたチームへ移籍が決定する。
[編集] 例外条項
一定期間を同じチームでプレイした選手は再契約が結びやすいように制限の超過を認めるなどの条項が存在している。
- ラリー・バード例外条項
3年間同じチームでプレイした選手は、上限額に制限されずにMAX契約(最長6年)を結ぶことができる(ただし新人からの3年間は不可)。これは80年代に活躍したラリー・バードが最初に適用されたことに由来する。また当時所属していたボストン・セルティックスが、チームに残留させようとリーグに働きかけたという事実もある。
- アーリー・バード例外条項
ラリー・バード例外条項を一回り小さくした条項で、2年間同じチームでプレイした選手は、サラリーキャップを超えていても、その選手の前年度の年俸の175%、またはリーグの平均年俸のどちらかで再契約できる。最低2年の複数年契約を結ぶ必要がある。
- ノン・バード例外条項
ラリー・バード例外条項、アーリー・バード例外条項に該当しない、FA選手に対する条項で、昨シーズンのサラリーの120%か、ミニマム・サラリーの120%で契約することができる。制限付FAにはこの限りではない。
[編集] その他の例外条項
- ミッドレベル例外条項
- 1ミリオンドル・例外条項
- ミニマム・サラリー例外条項
- ルーキー例外条項
- トレード・プレイヤー例外条項
- ディスエイブルド・プレイヤー例外条項
[編集] ルーキー・スケール・サラリー
1巡目指名選手のサラリーは順位により金額は決められており、1位指名の選手は2位指名の選手より多い金額を受け取ることができる。通常4年の契約で、最後の2年はチーム・オプションと定められている。2005年の表を以下に示す。
全体指名(2005) | ベース・サラリー |
---|---|
1st (アンドリュー・ボーガット) | $3,617,100 |
2nd (マーヴィン・ウィリアムス) | $3,236,600 |
3rd (デロン・ウィリアムス) | $2,906,200 |
4th (クリス・ポール) | $2,606,200 |
5th (レイモンド・フェルトン) | $2,372,800 |
6th (マーテル・ウェブスター) | $2,155,100 |
7th (チャーリー・ヴィラヌエヴァ) | $1,967,400 |
8th (チャニング・フライ) | $1,802,400 |
9th (アイク・ディオグ) | $1,656,800 |
10th (アンドリュー・バイナム) | $1,573,900 |
11th (フラン・ヴァスケス) | $1,495,200 |
12th (ヤロスラフ・コロレフ) | $1,420,400 |
13th (ショーン・メイ) | $1,349,400 |
14th (ラシャード・マキャンツ) | $1,282,000 |
[編集] ラグジュアリー・タックス
チームのサラリー総額が一定の基準を超えると罰金が適用される。この罰金はラグジュアリー・タックス(贅沢税)と呼ばれ、徴収された金は、罰金を支払ってないチームに平等に配分される。バスケットボール関連収入総合計(BRI)をチーム数で割った61.1%が基準額となる。基準額は年々増加しており、2006-07シーズンには、6542万ドルまで達した。
[編集] トレード
サラリーキャップを超えているチーム同士でトレードする場合、基本的には交換する選手の金額が釣り合っていないと成立しない