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LGBT - Wikipedia

LGBT

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

LGBT(エル・ジー・ビー・ティー)または GLBT(ジー・エル・ビー・ティー)とは、女性同性愛者(レスビアンLesbian:EN)、男性同性愛者(ゲイ、Gay:EN)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexual:EN)、そしてトランスジェンダーTransgender:EN)の人々をまとめて呼称する頭字語である。この言葉は、頭字語である「LGB」にトランスジェンダーの頭文字である「T」を付加して作られている。性的少数者と同一視されることも多いが、LGBTの方が、より限定的な概念である。

LGBTの言葉・概念に対しては異論もあり、現在でもなお議論が続いているが、北アメリカにおいては「クィア」(Queer)や「レスバイゲイ」(Lesbigay)などという言葉もあり、これらとの比較においては、より一般に受け入れられている言葉である。また、英語の言葉としては、「ホモセクシュアル」や単なる「ゲイ」よりも分かりやすい言葉だとされている。「GLBT」という頭字語も、アメリカ合衆国では広く用いられており、オーストラリアでも通じる。しかし、それ以外の地域では一般的と言い難い。

目次

[編集] 構成用語の意味

「LGBT」は四つの用語の頭文字から作られた言葉であり、それぞれの用語は、特定の集団のメンバーや、「サブカルチャー共同体」に所属している人々を指すのに使用される。このような「サブカルチャー的共同体」としては、性に関する人権を唱導する者たちや、芸術家文学者の集団・共同体などが挙げられる。

[編集] レスビアン

レインボー・フラッグ(虹の六色旗)ゲイ=同性愛者の象徴
レインボー・フラッグ(虹の六色旗)
ゲイ=同性愛者の象徴

「LGBT」の頭字語において使用されるレスビアン(L)とは、性的指向が専ら同性である女性へと向かっている女性を表す。つまり、女性同性愛者である。

[編集] ゲイ

この頭字語において使用されるゲイ(G)とは、性的指向が専ら同性である男性へと向かっている男性を表す。つまり、男性同性愛者である。

[編集] バイセクシュアル

バイセクシュアル(B)とは、一つ以上のジェンダーに引き寄せられ、魅惑される人々を表す。つまり、両性愛者である。

伝統的にバイセクシュアリティとは「男性・女性双方に魅惑を感じる性的指向」として定義されているが、通常は「汎性愛」(パンセクシュアリティ、英:Pansexuality)を包含する形で使用されている。汎性愛とは、相手のジェンダーが何であるかが殆ど或いは全く関係しない魅惑・性的指向である。つまり、男性、女性、またはトランスジェンダーなど、多様なジェンダー・アイデンティティ(性自認)の人に魅惑を感じることを云う。バイセクシュアリティは、無性愛、同性愛、異性愛などの性的指向の間にあって、いずれをも包含するような指向である。

[編集] トランスジェンダー

トランスジェンダー・プライド・フラッグトランスジェンダーの尊厳の象徴
トランスジェンダー・プライド・フラッグ
トランスジェンダーの尊厳の象徴

この頭字語において使用されるトランスジェンダー(T)とは、様々な個人・その振る舞いについて、とりあえず何でも示す「包括用語」として一般に使用されている。性役割(ジェンダー・ロール)の全面的または部分的な反転に特徴がある集団の人々を指しており、また、ホルモン療法や様々な度合いの外科的手術による変更を含む、身体的な性再割り当て治療(physical sexual reassignment therapies)が必要な人々も当然に入る。

一般的な定義は、「通常、誕生時において割り当てられたジェンダーに対し、それは間違いであるとか、自分たち自身の本来のありようとは別だとして違和感を感じる人々」である。この定義には、性転換症(トランスセクシュアル、Transsexual)、服飾倒錯者(トランスヴェスタイト / 異性装 / クロス・ドレシング)、そして時にジェンダークィアGenderqueer)な人々など、良く知られた概念が多数含まれる。

[編集] LGBTの歴史

詳細は、LGBTの歴史を参照。

1960年代の「性の革命」(Sexual revolution)に至るまで、「異性愛=正常(ストレート)とされる人々」のコミュニティで使われていた軽蔑的な意味を持つ複数の用語以外に、上述したような人々やその集団を表現する為の中立的で一般に知られた用語は存在しなかった。第二次世界大戦以前には、「第三の性(Third gender)」という言葉が使われていたが、大戦後、この用語は使われなくなった。これらの人々が、性における権利を主張する運動を組織して行く過程で、自分たちは「いかなる存在であるか」を、肯定的な形で表現するための用語が必要となった。(異性規範性=ヘテロノーマティヴィティ、Heteronormativity と比較)。

ストーンウォール・イン
ストーンウォール・イン

最初に使われた用語である同性愛(Homosexuality)は、否定的で余分な意味をあまりに強く帯びていたので、「ゲイ」という用語に置き換えられた。レスビアンたちが自分たちのアイデンティティを錬成させて行くにつれ、「ゲイ」と「レスビアン」という用語は更に一般なものとなった。このことは間もなく、メジャーな一般社会のなかで、法的に正当な集団範疇としての承認を求めていたバイセクシュアルとトランスジェンダーの人々によって踏襲された。しかし、ストーンウォールの反乱Stonewall Rebellion)の開始による初期の多幸感が薄れていった後、1970年代後期と1980年代初期には、感覚的な受け取りにおける変化が始まり、ゲイの男性とレスビアンの女性の中のある人たちは、バイセクシュアルやトランスジェンダーの人々の受け入れを拒否し、彼らに対する蔑視を表明した。

彼らは、トランスセクシュアルの人々を、ステレオタイプを演じているとして糾弾した。また、単に「カムアウト」することが恐ろしいだけで、実際のところはゲイの男性またはレスビアンの女性であるところのバイセクシュアルの人々をも、この故に糾弾した。

1990年代に至るまで、性の多様性の運動のなかで、人々が「ゲイ、レスビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々」を、それぞれに同等な尊厳を持っている者として語るのは、いまだ通常のことになっていなかった。

1990年代半ば以降、そして2005年現在、「 LGBT 」はますます一般的な用語となり概念となった。この言葉は北米、そして欧州においては、メインストリームとなり、大多数の「ゲイ、レスビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーのコミュニティ・センター」、及び殆どの英語を使用する国の「LGBTプレス」が、この用語を採択している。とはいえ、今日においても、この用語を使用する人々あるいはグループが、名目主義的な形で、この言葉を使っているのではないかという疑問がしばしば生じる。実際のところは、この用語のもと、レスビアンとゲイの問題について関わっている場合があり、あるいは、ゲイの男性の問題をこの用語で示していることもありえる。

名目主義的とは、LGBT を標榜しつつも、実質的には、トランスジェンダーの人々は無視して、上に述べているように、同性愛者のコミュニティやその権利主張だけが問題とされているに過ぎないケースがあるからである。

「レインボー・フラッグ」は LGBT の象徴とされるが、これは元来「ゲイの尊厳(Gay pride)」を象徴する旗として、1970年代より使用されてきたものである。これに対し、「トランスジェンダーの尊厳」の旗もデザインされており、2000年に使用された。「バイセクシュアルの尊厳」の旗も別にデザインされている。

[編集] ヴァリエーション

LGBT」は頭字語であるが、これ以外に英語において、様々な、類似した性的多様性の集団を表現する頭字語がある。以下は、概略である。

  • LGB - レスビアン、ゲイ、バイセクシュアルのイニシャル語で、三つの性的指向集団。
  • Tトランスジェンダー(TG)のことで、これと、LGB が組み合わさって、LGBT となる。
  • LGBTQ - LGBT に Q が加わったもので、この Q は、「クィア(Queer)」を意味している場合と、「クエスチョニング」(Questioning、セクシュアリティのアイデンティティについて未確定の人)を意味している場合がある。
  • LGBTT - LGBT に今一つの T が加わる。この T はトランスセクシュアル(TS)の場合が一般。
  • LGBTTT - 上の LGBTT に更に T が加わる。この T は、「二つの精神を持った者(Two-spirit)」の頭文字である。
  • LGBTI - LGBT に I が加わる。これは「インターセックス(Intersex)」の頭文字である。
  • LGBTA - LGBT に A が加わる。これは「無性愛(Asexual)」のイニシャルである。別のイニシャルの場合もある。

これらの頭文字の組み合わせで、複雑なコミュニティを表す頭字語ができるが、LGBTTTIQQA がもっとも多彩な集団になるが、このようなコミュニティは稀で存在しないとも言える。

以上の他に、別のパターンの頭字語も存在する。

  • SGL - 同性愛コミュニティを意味する。アフリカ系アメリカ人のあいだで、LGBT を白人優位コミュニティの言葉として捉えて使用される。(Same gender loving のイニシャル)。
  • LUGGUGBUG - 主として若い女性が使用する滑稽語である。レスビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)の頭文字に、Until Graduation(卒業まで)の頭字語(UG)を加えて作られている。大学時代に機会的同性愛・両性愛を経験した者を指す(参照:lesbian until graduation)。

[編集] 問題と議論

LGBT」という用語については議論が存在する。例えば、トランスジェンダーやトランスセクシュアルの或る人たちは、この用語を好まない。自分たちがトランスであることの根拠あるいは原因は、LGB の人々のケースとは異なると信じるからである。彼らはまた、ある団体が存在し、団体の行う活動内容が実際のところ、トランスである人々を念頭したものとは考えられない場合、団体の名称のイニシャル語あるいは頭字語として、「T」を加えることに対し異議を唱える(当然であるとも言える)。反対のことも言えるのであり、LGB の人々は、類似した、または同じ理由から「T」を好まない。

レスビアン統合
レスビアン統合

多数の人々がまた、性的指向とジェンダー・アイデンティティ(英:Gender identity性自認とほぼ似た概念)のあいだに明瞭な線引きが必要だと信じている。「GLB」(ゲイ、レスビアン、バイセクシュアル)は性的指向に関係するのに対し、「TTI」(トランスジェンダートランスセクシュアルインターセックス)はジェンダー・アイデンティティに関係するからである。

同様に、インターセックスの或る人たちは、LGBT グループに含まれることを望み、「LGBTI」という頭字語を好む。しかしインターセックスの人々でも、他の人たちは、自分たちは LGBT コミュニティの一部ではなく、この用語にむしろ含めるべきでないと主張する。

上述の逆の状況が、「レスビアンとゲイにおける分離主義」の信念に明瞭に見て取れる(似た言葉に、「レスビアン分離主義(Lesbian Separatism)」があるが、これは男性とは無関係に、女性だけのコミュニティを形成しようとするフェミニズムの形態である)。この立場では、レスビアン及びゲイである者は、通常は「LGBTQ」の共同体圏に含まれている他のグループとは区別し、また分離して、彼らのコミュニティを形成する(あるいは、形成せねばならない)という考えを持つ(LGBTQ の「Q」は、クィア Queer の頭文字である)。この種類のグループは、一方で、運動と呼べるほどの十分な人数や組織には必ずしも見えないが、LGBT コミュニティのほとんどの場面において、非常に目立ち、しばしば声高にその意見を主張し、積極的な要素集団としてのあり方に固執する。この方向性は、とりわけ、英国の政治的かつ宣伝的団体に顕著である。この見解に立つ人々はまた、非「モノセクシュアル=単性愛(Monosexual)」的な性的指向及びトランスセクシュアルの存在またはその平等性権利を、通常否定する。この立場は、社会一般の「バイフォビア(Biphobia)及び「トランスフォビアTransphobia)」へと繋がって行く可能性を持つ。

(モノセクシュアルとは、異性愛または同性愛のことで、性的指向の対象が単一であることで、それに対し、両性愛トランスジェンダーなどは「非モノセクシュアル」となる。また、バイフォビアとは、両性愛者(バイセクシュアル)に対する嫌悪感などで、トランスフォビアは、トランスセクシュアルやトランスジェンダーの人々に対する様々な形態での嫌悪感や拒絶である。)

バイセクシュアル・フラッグ
バイセクシュアル・フラッグ

多くの人々が、現在流布している、LGBT 等のイニシャル語や頭字語、あるいは略語に代わる、一般的で包括的な用語を探してきた。「クィア」や「レインボー(虹)」などの言葉が、包括的用語として提案されたが、一般的に広く採択されなかった。「クィア」は、この言葉が嘲りや侮辱の意味で使われた記憶を有する年長の人々にとっては、多くの否定的な暗示的含意を持っており、また現在でもこの用語は、そういう意味を持って使用されている。多数の若い人々もまた、「クィア」が「LGBT」に較べ、政治的により感情的な論争を誘発する言葉であることを理解している。「レインボー」は、ヒッピーニューエイジ運動、あるいは政治運動(ジェシー・ジャクソン Jesse Jackson の「虹の連合(Rainbow Coalition)」など)を想起させる含意を持っている。

その他のゲイの人々もまた、文字表現としての「用語」が、過剰に政治的正義の意味合いを帯びて一般に受け取られることを望んでいない。また、多様な性的傾向を持つ人々のグループを、一つのグレイ・ゾーン状態の言葉でカテゴライズする試みに対し肯定的ではない。

更に、「LGBTコミュニティ」あるいは「LGBコミュニティ」自体に反対の立場を持つ、レスビアン、ゲイ、バイセクシュアルの人々も存在する。彼らはまた、通常 LGBT コミュニティとセットになっており、ゲイの尊厳(Gay prideパレードやイヴェントを含む、「政治的及び社会的連帯、そして可視性と人権のためのキャンペーン」(LGBTの権利、LGBT rightsを参照)にも反対である。これらの人々のなかのある者は、非異性愛性的指向の人々をグループとして一括して纏めることに反対の意見を持つ。何故なら、このように纏めることで、ゲイ/レスビアン/バイセクシュアルであることが、他の人々とは何かの欠陥において異質であるという神話を永続させ温存させる効果を持つと信じるからである。ゲイ/レスビアン/バイセクシュアルの人々のなかにおける、このような分派的な人々の存在は、他の LGBT の人々と比較して、しばしばまったく目立たず、気づかれない。このような見解の人々は、同性の人への性的関心は別として、一般の人々のなかに溶け込み、彼らの性的指向について、ほとんど、または何の外見的・社会的な指標性も表さないためである。

このような分派的な人々の存在は、多数派である異性愛の人々から識別することが困難である。そのため、一般的には、ゲイ/レスビアン/バイセクシュアルの人々は、すべて、LGBT 解放運動や、社会における LGBT の人々の可視性(カミングアウトの公然性)などを、多数派とは異なる形で自己の人生を生きる権利も含めて、支持しているのだと(臆断的に)考えられている。しかし、これは正確な事実ではない。

  • 可視性(visibility)とは、19世紀より20世紀にあって、欧米において、同性愛や両性愛、トランスジェンダーの人々などは、精神障害であり、病であって正常な存在ではないとされ、社会の表からは存在が隠蔽されて来たことによる。隠蔽から脱して、その存在が公然となり、誰の目にも存在が見えるようになることが「可視性」である。
  • また、欧米のソドミー法などの規範を旧植民地の支配者たちは、20世紀半ばの雪崩れ的な独立後、逆に利用して、自国内の反体制勢力や、「性的多様性」を持つ人々を弾圧し投獄・処刑する根拠ともしている。このように、南の世界・発展途上国にあっては、性の多様性の周縁化や隠蔽が事実上、現在も進行している。これに対しても、「可視性」という形で、国際アムネスティなどは、迫害弾圧の実態の把握に努めている。

[編集] LGBTと性的マイノリティ

LGBT あるいは LGBTQ に類似した日本語の言葉に「性的マイノリティ」あるいは「性的少数者」がある。この用語は、説明において、LGBT の同義語であるとされる場合があり、また、LGBT よりは定義範囲の広い用語であるともされる。英語の Sexual minority という言葉は、1970年代後期から1980年代初期にかけて、民族的マイノリティ(Ethinc minority)との類縁から造語されたとされ、これを日本語に訳して「性的少数者」などの用語が作られた言える。

「LGBT」と「性的マイノリティ」は明らかに意味が異なっており、そのもっとも大きな違いは、LGBT は、LGBT のコミュニティに属する者が、自分たちの集団を呼称する名称として、この頭字語を選んだということがある。従って、LGBT は、例外はあるが、LGBT の人々が自分たち自身で自称している呼び名である。それに対し、性的マイノリティ/性的少数者は、少なくとも第三者的な立場から、性的な人格特徴において「社会でのマイノリティ」となる者という意味で定義された言葉で、LGBT の人々自身は、この呼び方や用語をむしろ好まないということもある。

一つに、「マイノリティ」であるということ自体が社会の成員としての尊厳と矛盾するのであり、少数者と呼ぶ限りにおいて、差別偏見を認めてしまっているということにもなるのである。いま一つに、LGBT コミュニティ内部でも、議論があるが、誰を含めるか含めないかで多様な見解がある。性的マイノリティには、フェティシストBDSMの愛好者なども含まれるとする定義もあり、しかし、どれだけ譲っても、LGBT のコミュニティの概念に、このような性的嗜好の人々を加えるのは明らかにおかしいということがある。また、LGBT の人々は、このような混同を当然ながら認めない(参照:Sexual minority)。

[編集] LGBTの政治家

[編集] 関連項目

[編集] 英語版関連項目

[編集] 参考書籍

[編集] 外部リンク


translation : en:LGBT 14:17, 4 June 2007 より翻訳
contributors : Davodd, Sonjaaa, Harmil, 24.207.97.6, Myfanwy et al.


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