黒い秘密兵器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキポータル |
漫画作品 |
日本の漫画作品 |
漫画家 |
日本の漫画家 |
漫画原作者 |
漫画雑誌 |
カテゴリ |
漫画作品 |
漫画 - 漫画家 |
プロジェクト |
漫画作品 - 漫画家 |
『黒い秘密兵器』(くろいひみつへいき)は、一峰大二の野球漫画。原作は福本和也。少年漫画誌「週刊少年マガジン」に1963年(昭和38年)から1965年(昭和40年)にかけて連載された。
目次 |
[編集] あらすじ
昭和38年のある日、苦戦を続ける巨人軍に突如現れた少年投手・椿林太郎は、剛速球や魔球「黒い秘球」を武器に、次々にあらわれる多くのライバル達との対決を通し、様々な秘球を編み出しながら巨人の勝利に貢献していく。1年目はリーグ優勝に貢献し、日本シリーズでも西鉄を破って巨人は日本一に。しかし、2年目は終盤に肩を壊し、巨人も優勝を逃す。その年のストーブリーグではトレード話が持ち上がる。しかし九州で謎の男、小野寺の下で特訓を重ね、ついに椿は「魔の秘球」を編み出すことに成功する。ライバルのゴン助の妨害や他チームの反対があり、一時は禁止になりかけたが、最後はコミッショナー裁定でルールに認められる。
捲土重来を期した3年目、魔の秘球で次々にライバルらを打ち取ったが、中日の那智にホームランされ失踪。しかし、新しい「かすみの秘球」を編み出してペナントレース終盤に復帰、優勝に貢献する。しかし、その「かすみの秘球」により過度の負担がかかったことで手首に異常をきたし、レントゲン検査で手首に悪性腫瘍があることが判明する。しかし、医師の診断を押し切って引退覚悟で登板を続け、チームを優勝へと導く。そのとき対戦した那智に手首の異常を見抜かれるが「やめるなら途中でやめず南海を破って日本一になってくれ」との激励を胸に南海との日本シリーズに挑む。スタンドから声援を送る柳生、那智らライバル達の見守る中、全試合に登板。最終戦を終えた直後、最優秀投手に選ばれたことも知らずに忽然と球場から消える。
[編集] 登場人物
- 椿林太郎
- 主人公。巨人軍に突如現れた投手。両親はおらず、肉親は祖父のみ。背番号は当初は11だったが、後に監督の川上哲治から16を受け継ぐ。森昌彦ですら捕球できないほどの剛速球の為に捕手の起用に問題が生じたが、専門の捕手として鍛えられた大船の入団で投手として活躍が続けられる事となる。柳生(後述)の告発で伊賀忍者の末裔である事が判明し、忍術を野球に持ち込む事を非難する柳生によって球界から追放されそうになるが、蟻川(後述)によって潔白である事が証言され、その後も球界に留まり、「黒い秘球」を初め様々な秘球を編み出して活躍を続ける。しかし「かすみの秘球」で強いられた不自然な投法によって手首に悪性腫瘍が出来てしまったため、日本シリーズの対南海ホークス戦で全試合を投げて日本一に貢献した直後の表彰式で、忽然と姿を消し、そのまま球界を去る。
- 大船頑太(頑六といわれたことも)
- 椿の専用捕手。素手で石をキャッチするという特訓を重ねて捕球能力を鍛え、椿の剛速球を捕球できる能力を獲得して入団。攻守に活躍する。静岡の漁師の長男で、たくさんの弟と美人の姉がいる。明るい性格と太目の体型でムードメーカーとしての資質を有しており、椿と共に中華料理店の2階に下宿し、野球面だけではなく私生活や精神面での支えにもなる。ただしやや慎重さに欠ける性格でもあり、敵方のスパイの策謀にのせられて接待を装った軟禁に遭い「魔の飛球」の秘密を敵方に渡す原因を作ってしまった事もある。
- 柳生宗範
- 大洋ホエールズの内野手兼外野手(両方で登場する)。挨拶に来た椿が差し出した握手の手をはらう様な性格で、椿を忍者呼ばわりして追放しようと試みたり、ゼロの秘球を危険球として禁止に追い込んだり、魔の秘球を暴くべく、謎の人物を組んで大船を軟禁する、といった言動を表している。試合では椿が勝負を避けたことに激昂して暴行、両軍入り乱れての乱闘となる。魔の秘球の投げ損ねボールを頭部に受け昏倒、そのまま入院するが、入院先では那智の打撃の危険性を擁護した椿を賞賛するという一面も見せた。
- 那智
- 中日ドラゴンズの外野手。優れた動体視力の持ち主で、151系特急「こだま」の各車両に記された車体番号を見て視力を鍛え、全てを言い当てて監督たちを驚愕させた。物語終盤では、柳生を負傷させた魔の秘球を捨てようとしていた椿を、サインを盗んで巨人を追い込むという方法で試合に引きずり出し、短いバットをボールにぶつけるやり方で魔の秘球をホームランする(ただしその次の打席で初披露となったかすみの秘球に惨敗する)。その後、鋭い眼力で椿の手首の故障と共に引退の決意を見破り、引退は日本一になってからしろと進言する。
- 蟻川
- サンケイスワローズの外野手。柳生が黒い秘球を打ってファウルにした時、その場所に飛んでくると周囲に予言してその通りになったという野球センスの持ち主。その試合の直後、策謀で椿をプロ野球界から追放しようとした柳生に反証して椿を救ったという経緯があり、試合以外では椿と親しい。椿がトレードに出されるという噂を聞きつけると、すぐさま飯田徳治監督と共に入団勧誘に乗り出すという行動派でもある。肩の故障を見抜いたときは「投げるな!」と駆け寄ってその球を素手で捕球し、守備妨害でアウトになるという行動に出る。
- エアロン
- 阪神タイガースに捕手として入団。座ったまま腕だけで二塁に軽く投げて走者を刺殺する送球能力と、相手打者の目配りや動きから狙っている球種やコースを見抜く能力を有している。打撃能力も高く、光る秘球をホームランしたが、その際に右足がボックスから出ていた為に無効になる。それをやじるファンからかばってくれた椿に感謝しつつ帰国する。一度、椿を大リーグに誘おうとした事もある。
- 文福竜之進
- 大洋ホエールズの内野手。子供たちと遊んでいてデビューの試合に遅刻するというなかなかの選手。九州、中国、中部各地方の方言が合わさったような不思議な言葉を使う。椿の魔の秘球を打つためにはボールへの恐怖心をなくすることだと、稲川誠に依頼してわざとボールをぶつけてもらうという特訓をする。
- 山城
- 阪神タイガースの捕手。1年後輩だが、椿や大船を先輩扱いしない。光る秘球がナイターでないと投げられないという事実を暴く。大洋とのオープン戦をスタンドから観戦しながら魔の秘球を8ミリフィルムで写し取り、「誰が風を見たでしょう」というクリスティナ・ロゼッティ(西条八十訳)の詩を口ずさんで秘密を説いたことをほのめかし、揺さぶりをかける。しかし、試合では魔の秘球の前に屈する。
- 宇津見清
- 阪神タイガースの投手。辻や戸梶などの捕手が手を負傷するほどの剛速球を持つ。病気の妹の治療費を賭けて椿と投げ合うが、その椿に本塁打されて敗戦投手。藤本定義監督に直訴してその翌日に内野手に転向し、椿の新しい秘球に挑むも打ち取られる。ただ、そのファイトを藤本から評価され、妹の治療費と次シーズンの選手契約を勝ち取る。父親がマッサージ師で、マッサージをした椿の手首の異常を発見した。何故か山城とはバッテリーを組むことが無かったが、その理由は練習中に宇津見の剛速球を受けて手を傷めたこと。
- 亀田
- 巨人の投手。コントロールに優れたスローカーブで注目され、椿のライバルとなるが、様々なあくどいやり方で椿を追い込む。しかし、シーズン前に編み出した妖球バタフライボールが、実はボールの外皮を刃物で羽状に切るというルール違反の投球である事を川上哲治に見抜かれ、2軍に落とされる。その後、改心して肩がだめになるほど「まぼろしの秘球」の練習をし、その結果肩を壊して球界を去る。
- ホラ貝ゴン助
- 巨人の投手。椿のライバル。椿の編み出した「魔の秘球」が危険球であるから禁止すべきとコミッショナーに手紙を出して妨害する。しかし、椿を救った小野寺により、ゴン助が根来忍者であり、彼が出した妨害の手紙であることが明かされた。
- 小野寺
- 元国鉄スワローズの捕手で、金田正一とバッテリーを組んでいた。肩を傷めた椿に対して、過酷なトレーニングで肩を治した他、パラシュートで突き落としたりするなどして「魔の秘球」開発のヒントを与えた。魔の秘球の是非を論じるコミッショナー会議に単身乗り込んで力説。その後、ゴン助が根来忍者であることをコミッショナーに暴露し、ピンチを救う。
- 井関
- 謎の紳士。椿に新しい秘球を編み出すヒントを与えたかと思えば、那智にその秘密をばらすなど、奇怪な行動をとる。最後は椿と和解してその下を去るが、その際にも極めて不可解な言葉を残す。しかし、椿は深く感謝したのであった。
[編集] 秘球
- 黒い秘球
- まぼろしの秘球
- ゼロの秘球
- 光る秘球
- 魔の秘球
- かすみの秘球