高橋健二 (ドイツ文学者)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
高橋 健二(たかはし けんじ、男性、1902年9月18日 - 1998年3月2日)は、日本のドイツ文学者。
東京生まれ。東京帝国大学ドイツ文学科卒業。たびたびドイツに留学し、数多くのドイツ文学を翻訳。
第二次大戦中はナチスの紹介書も翻訳し戦争に協力し、改組後の大政翼賛会二代目文化部長として、戦意高揚のための多くの戦争文化論を著した。(「戦争に負ける文化など何の価値もない」「戦ひに臨んでは、憎悪と憤怒こそ価値を生むものであり、文化の父である」『青年講座』国民よ怒れ 等、多数)
戦後1952年中央大学教授、57年ドイツ文学紹介の業績で読売文学賞、61年『ヘッセ研究』で東京大学文学博士。68年『グリム兄弟』で芸術選奨文部大臣賞受賞、69年日本芸術院賞受賞、73年日本芸術院会員、中央大を定年退職して名誉教授。77年から81年まで第8代日本ペンクラブ会長。85年文化功労者。ヘルマン・ヘッセ、エーリッヒ・ケストナーの紹介、翻訳につとめたほか、ゲーテ、グリム兄弟、カロッサなどドイツ文学に関する著書、翻訳多数。
あまりに翻訳が多いので「翻訳工場」などと言われ、近年は戦争協力の問題をも追及されている。
テレビ朝日のトーク番組『徹子の部屋』に出演して戦争中のことを聞かれた際には、「あの時代は、あんな風でしたから、何もできませんでしたよ。」と、曖昧に答えて大政翼賛会文化部長の経歴を隠した。
目次 |
[編集] 著書
- シルレル 世界文学大綱 東方出版, 1926
- 現代演劇論 杉本良吉共著 天人社, 1930
- ハイネ 三省堂, 1931
- 現代ドイツ文学論 河出書房, 1940
- ドイツ作家論 筑摩書房, 1941
- 文学と文化 評論と随筆 鮎書房, 1942
- 大独逸に関する優良日本図書短評付撰集 第1 ヘルマン・シエーファー共編 日独文化協会, 1943
- 戦争生活と文化 大政翼賛会宣伝部, 1943
- 美しい日本への道 反省と発足 大日本飛行協会, 1945
- ゲーテと女性 都文堂書店, 1948
- ゲーテ 新潮社, 1948 (生ける思想叢書)
- 基礎ドイツ語 大学書林, 1948
- ヘッセとゲーテ 青磁社, 1949
- ゲーテの文学 実業之日本社, 1951
- 世界文学教室 ポプラ社, 1953
- ドイツ文学散歩 新潮社, 1954
- 世界文学入門 ポプラ社, 1965
- 善意への郷愁 もっと光を 華書房, 1966 (ハナ・ブックス)
- グリム兄弟 新潮選書, 1968 のち文庫
- 文芸論 小峰書店, 1969
- 人生論断章 中央大学出版部, 1970
- 作家の生き方 シュトルム カロッサ ケストナーの場合 読売新聞社, 1972
- シュピーリの生涯 弥生書房, 1972
- 若いゲーテ 評伝 河出書房新社, 1973
- ヘルマン・ヘッセ 危機の詩人 新潮選書, 1974
- ヴァイマルのゲーテ 河出書房新社, 1975
- さまざまの出会い 木耳社, 1976
- ゲーテをめぐる女性たち 主婦の友社, 1977 (Tomo選書)
- ヘッセー思い出の詩人画家 主婦の友社, 1977 (Tomo選書)
- 万華鏡 師と友と作家との出合い 主婦の友社, 1978 (Tomo選書)
- ケストナーの生涯 ドレースデンの抵抗作家 駸々堂出版, 1981 のち福武文庫
- さまざまの出会い 続 木耳社, 1983
- ヨーロッパ詩とメルヒェンの旅 小学館, 1983
- Pen随想 ペンクラブ激動の半世紀 東京書籍, 1984
- グリム兄弟物語 偕成社, 1984
- グリム兄弟・童話と生涯 小学館, 1984
- グリム兄弟 童話をよみがえらせた 講談社火の鳥伝記文庫, 1984
- グリム兄弟とアンデルセン 東京書籍, 1987 (東書選書)
- 現代作家の回想 小学館, 1988
- ゲーテ相愛の詩人マリアンネ 岩波書店, 1990
- 人間の生き方 ゲーテヘッセケストナーと共に 郁文堂, 1990
[編集] 編纂
- 教養小説名作選 集英社文庫, 1979
- 話題が豊かになる本 知的なふれあい 光文書院, 1980
[編集] 翻訳
- カロッサ全集 第1 ドクトル・ビュルゲルの運命 建設社, 1935 のち新潮文庫
- カロッサ全集 第5 ルーマニア日記 建設社, 1936 のち岩波文庫
- ブッデンブローク一家 トーマス・マン 河出書房, 1938
- 美的教育論 シラー 安倍能成共訳 岩波書店, 1938
- デミアン ヘッセ 岩波文庫, 1939 のち新潮文庫
- 春の嵐 ヘッセ 新潮社, 1939 のち文庫
- 隊商 ハウフ 岩波文庫, 1940
- 放浪と懐郷 ヘッセ 新潮社, 1940
- ドスコチルの女中 エルンスト・ヴイーヒエルト 現代世界文学叢書 中央公論社,1940 のち角川文庫「愛すればこそ」
- 犠牲 ビンディング 国松孝二共訳 河出書房, 1941
- ヒトラー・ユーゲント ヤーコプ・ザール 新潮社, 1941
- ナチス運動史 ヤコープ・ザール アルス, 1941 (ナチス叢書)
- 世界文学をどう読むか ヘッセ 三笠書房, 1941 のち新潮文庫
- ヘルマンとドロテーア ゲーテ 改造社, 1942 (改造文庫)
- 子供部屋 ドイツ現代短篇傑作集 生活社, 1943
- 消えたズボン ドイツ少年團物語 ウイリ・ディッスマン 三學書房, 1943
- 瀕死の春 ラヨシユ・ヂラヒ 新潮社, 1946 のち文庫
- 若きヴェルテルの悩み ゲーテ 郁文堂, 1947
- ハイネ詩集 蒼樹社, 1948
- ゲーテ格言集 大泉書店, 1948 のち新潮文庫
- 帰郷 ハインリヒ・ハイネ 文体社, 1948
- ウルファウスト ゲーテ 郁文堂書店, 1948
- ゲーテ名作集 1-5 郁文堂書店, 1948-49
- ゲーテ詩集 新潮社, 1948 のち文庫
- こわれたかめ クライスト 青磁社, 1948
- ある女の二十四時間 ツヴァイク 蒼樹社, 1949 のち新潮文庫
- ゲーテ恋愛詩集 郁文堂書店, 1949
- 幽霊船 ヴィルヘルム・ハウフ 中央公論社, 1950
- エーミールと軽わざ師 ケストナー 新潮社, 1950
- ふたりのロッテ ケストナー 岩波少年文庫, 1950
- 青春は美し ヘッセ 人文書院, 1950 のち新潮文庫
- 乾草の月 ヘツセ 人文書院, 1950 のち新潮文庫
- 車輪の下 ヘッセ 新潮社, 1950 のち文庫
- ヘッセ詩集 新潮社, 1950 のち文庫
- 知と愛 ヘッセ 人文書院, 1951
- ファウスト ゲェテ 河出書房, 1951
- 帰らぬ子・トレヴィゾーの処女・最後の人馬 ハイゼ 郁文堂出版, 1951
- 空想男爵のぼうけん ミュンヒハウゼン 牧書店, 1951
- ゲーテ作品集 第1-7巻 創元社, 1951
- 告白・別離・沈黙 シュトルム 角川文庫, 1952
- 婚約 「小さい世界」より ヘッセ 人文書院, 1952
- 輪舞 シュニッツラー 新潮文庫, 1952
- 花束・ギリシァの踊子 シュニッツラー 相良守峯共訳 新潮文庫, 1952
- メルヒェン ヘッセ 人文書院, 1952 のち新潮文庫
- ハウフどうわ あかね書房, 1952
- バンビ 森の生活の物語 フェリックス・ザルテン 岩波少年文庫, 1952
- こうの鳥になった王さま ハウフ あかね書房, 1952
- 五月三十五日 ケストナー 中央公論社, 1953
- 放浪 ヘッセ 人文書院, 1953
- 哀愁のモンテカルロ ツヴァイク 新潮社, 1953
- 女の一生(テレーゼ) シュニッツラー 新潮文庫, 1953
- ドイツ戦歿学生の手紙 W.ベール,H.ベール共編 新潮社, 1953 のち岩波新書
- ゲーテ選集 全8巻 創元社, 1953
- 点子ちゃんとアントン ケストナー 岩波少年文庫, 1955
- 郷愁 ペーター・カーメンチント ヘッセ 河出新書, 1955 のち新潮文庫
- 素朴文学と情感文学について シラー 岩波文庫, 1955
- 旋風 ヘッセ 新潮文庫, 1955
- 愛は許しによつて ハウスマン 新潮社, 1955
- 聖者と甘いパン ヘッセ 人文書院, 1955
- 新しい鐘 ハラルト・ブラウン 河出新書, 1955
- 夢のあと ヘッセ 人文書院, 1955
- 若き人々へ ヘッセ 人文書院, 1956
- ヘルマン・ヘッセ全集 全14巻 新潮社, 1957-58
- みつばちマーヤのぼうけん ボンゼルス 宝文館, 1958
- わたしが子どもだったころ ケストナー みすず書房, 1958
- 内面への道 シッダールタ ヘッセ 新潮文庫, 1959
- 湖畔のアトリエ ヘッセ 新潮文庫, 1959
- 婚約 ヘッセ 新潮文庫, 1959
- 笛の夢 ヘルマン・ヘッセ童話集 みすず書房, 1959
- 空想男爵の冒険 ケストナー みすず書房, 昭和35
- 飛ぶ教室 ケストナー 東京創元社, 1960
- 天使の歌 スピリ あかね書房, 1960
- アルプスの少女 ヨハンナ・スピリ 小学館, 1961
- バリ島の冒険 ティスナ,ラスト あかね書房, 1961
- ケストナー少年文学全集 1-8 岩波書店, 1962(詳細作品はエーリヒ・ケストナーを参照のこと)
- 人間の声 第2次世界大戦戦歿者の手紙と手記 H.W.ベーア編 河出書房新社, 1962
- ベルリン最後の日 1945年を忘れるな ケストナー 新潮社, 1962
- 世界動物童話集 J.グラビアンスキー編 講談社, 1963
- ヤンと野生の馬 H.M.デンネボルク あかね書房, 1965 のち福武文庫
- 小さなロバのグリゼラ デンネボルク あかね書房, 1966 のち福武文庫
- 雄ねこカスパー H.デンネボルク あかね書房, 1967
- サーカスの小人とおじょうさん ケストナー 講談社, 1969
- 野生の馬バルタザル デンネボルク あかね書房, 1970
- たからは天から落ちてはこない デンネボルク あかね書房, 1970
- さすらいの少年 ギーナ・ルック=パウケート 講談社, 1971
- 幸福論 ヘッセ 新潮文庫, 1977
- 子どもと子どもの本のために ケストナー 岩波書店, 1977
- ヘッセからあなたへ メルヒェンと詩と水彩画 ヘッセ 主婦の友社, 1978
- わたしの少年のころ アンデルセン 実業之日本社, 1981
- ヘッセ全集 1-10 新潮社, 1982-83
- 家庭薬局 ケストナー博士の叙情詩 かど創房, 1983
- ケストナーの終戦日記 駸々堂出版, 1985 のち福武文庫
[編集] 記念論集
- ヘッセへの道 高橋健二古稀記念論文集 新潮社, 1973