長回し
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長回し(ながまわし)は、カットせずに長い間カメラを回し続ける映画の技法。
どのくらい(の時間)回し続けていれば長回しと呼ぶのか、というような明確な定義は無いが、一般的には分単位で連続していれば長回しと言い得るであろう。カットせずにカメラを回し続けることにより、役者の緊張感や映像の臨場感を維持し続けることができるという効果がある。
一つの映画の中でここぞという時に使うことが多いのだが、中にはその緊張感や持続性に惹かれ、長回しを多用する作家もいる。アンドレイ・タルコフスキー、テオ・アンゲロプロス、溝口健二、相米慎二がその代表だが、アンゲロプロスに至っては長回し以外のカット(ショット)がほとんど無い程徹底されており、氏の作品を特徴づけるものとなっている。
また、アルフレッド・ヒッチコックは自身の作品『ロープ』で、作品全編を一つのカットで撮影するという究極の長回し撮影を敢行している。ただし、当時使用されていた35ミリのフィルムのワン・リールは10分しかなかったため、繋ぎ目でそれとわからないような巧妙な編集を行っている。しかし、デジタルシネマではフィルム長の制限が無いため約10分という制約も無くなり、事実、アレクサンドル・ソクーロフの『エルミタージュ幻想』は96分全編がワンカットで撮影されている。
ロバート・アルトマン監督の『ザ・プレイヤー』(1992年)では、冒頭から映画製作者が「『黒い罠』(1958年)の長回しが凄い」とか「『ビギナーズ』(1986年)の長回しが凄い」など、長回しの議論をしながら、この映画本編でも8分6秒間の長回しを行うという面白い試みがなされている。他に長回しが話題となったものに『スネーク・アイズ』(1998年)などがある。